しょご先生に聞いたオーストラリアの性教育事情
東京ウォーカー(全国版)
オーストラリア在住で、YouTubeで性教育について発信を続けているしょご先生。2月から
ニコニコチャンネル「しょご先生 日本一わかりやすいリアル性教育」
を開設している。日本とオーストラリアの性教育事情を知るしょご先生に、オーストラリアの性教育について聞いた。
日本の性教育が不十分であることは、これまでのしょご先生の話からもわかった。そもそも、しょご先生に話を伺う以前から、そのことについては大半の日本人が何となく実感していることではないだろうか。その理由として、性教育という“授業”で学んだことの中に、実際に役に立ったと思ったことがほとんどないことが挙げられる。性教育というと、すぐに連想するのは性行為や避妊に関する知識だが、性にまつわる教育という意味では、自分の体のこと、自分の性のこと、LGBTQ(L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダー、Q=クエスチョニング)に対する理解も含まれる。

オーストラリアでは幼稚園ぐらいから性教育がスタートすることが多いという。「専門の時間を設けることもありますが、普段の授業の中に組み込むことも多いです。幼いころは家庭で話をすることが多いですね。自分の体と異性の体の特徴をわかるように説明したり、メディアから得た性に対する情報で疑問を持ったときに親がきちんと答えていくというのが基本です。また、子供の5人に1人は親の性行為を偶然見てしまうというデータがあり、そこで話をしたり、弟や妹ができたタイミングで話すこともあります」としょご先生。
オーストラリアと日本で大きく違うのが、普段の夫婦のスキンシップだ。映画や海外ドラマなどでも見るように、オーストラリアでは日常的にキスやハグなどのスキンシップが多いが、もちろん、子供の前でもそれはかわらない。だから、愛情の表れであるキスやハグの先に性行為があっても受け入れやすい。ところが、日本では子供が両親のそんな姿をなかなか見ることがない。そして日常的に親が性の話をすることがない。それが急に性行為や避妊について話そうとしても違和感が出てしまうのだ。
日本の性教育は多くの場合、学校にゆだねられている。ただ、それがオーストラリアに比べると必ずしも十分ではないとしょご先生は話す。「まず大きく違うのは、日本の教育は学習指導要領というのがあって、いつ、何を、どこまで教えなければならないという、“教え方”が決まっています。例えば、日常よく見る漢字でも習うべき時期でなければ先生は使ってはいけなかったり、算数や数学でも公式を使える学年になるまで使えなかったり、先生たちも教えたくても自由に教えられないという状況があります」。つまり、生徒たちが興味を持っていても、“その時期”がこないと教えられないというジレンマがあるのだ。

「性的同意年齢」という言葉をご存知だろうか。文字通り、性行為に合意できる年齢のことで、日本では13歳と定められている。この年齢設定が適当かどうかは議論の的になっているが、現状、13歳であることに間違いなく、そうであれば、この年齢には性行為がどういうものなのか、どういうリスク(性感染症など)があり、性行為の先に妊娠があり、妊娠した場合の生活がどう変わるか、体への負担はどうなのか、低年齢の出産のリスク、学業や就職への支援はどうなっているのか、さまざまなことを知っておく必要がある。客観的に、俯瞰的に考えるとそうなのだが、実際、13歳でそこまで理解しているとはあまり思えないのが現状だ。それもそのはず、妊娠や性感染症について学校で教えてくれるのは高校生になってから。よほど自分で関心を持って調べるなどしない限り、正しい知識を得る機会はないに等しい。
「インターネットなどで調べようとしても、調べ方もわかっていない。目についた情報に飛びついて、間違った知識を信じてしまったり、自分に都合のいい情報を集めてしまったりしがちです」。正しい知識を必要な時に教えることこそ大切としょご先生は話す。「オーストラリアでは学校で教える内容は各学校に権限があり、地域や学校の特性に合わせたカリキュラムを作ることができます」。だから、生徒が興味を持つ年齢で、その時に必要な内容を教えることができるという。
「例えば、オーストラリアでは、学生のうちに妊娠した場合、どんなサポートが受けられるか、子供が生まれることで学業と両立ができるのか、両立するためにはどんな方法があるのかなど、学校で教えています。もしもの時のこともきちんと知っておくことで、いざという時にパニックになったり、必要以上に不安になったりしないですみます」(しょご先生)。もちろん、妊娠を推奨しているわけではない。ただ、妊娠してもサポートを求めることができ、それによって自分の未来をどう生きたらいいかを考えることができる。

避妊についての性教育もオーストラリアと日本では大きく異なる。日本ではコンドームが避妊具として知られているが、それ以外の避妊具については学校ではあまり教わることがない。そして、実はコンドームの避妊率は約85%といわれ、コンドームを使ったら絶対妊娠しないというわけではない。しかし、そこまで生徒に伝わっていないことも多い。「僕のYouTubeでコンドームの避妊率について話したところ、驚いた、知らなかったというコメントがたくさんありました。中には100%じゃないなら使わなくても一緒という意見も」(しょご先生)。これは学校での性教育がきちんと意味をなしていないと言わざるを得ない。
「オーストラリアでは、例えば性教育の時間に実際にコンドームを触ってみる。目隠しをして裏表をきちんと判断できるか、伸ばしてみてどのぐらいの強度か、水を入れて膨らましてみるなど、とにかく遊んでみるんです。目隠しをするのは、暗い所で使うことが多いので、実際に使うときに裏表を間違えずに使えるかの練習。生徒たちが興味を持ち、コンドームがどういうものかを自分で理解していきます」としょご先生。なかなか日本ではこれをすぐに導入するのは難しいかもしれないが、実践的な授業として参考になるだろう。
「英語だと絵本やYouTubeの教材など、小さな子供から思春期の子供たちまで使えるものが豊富にあります。ただ、日本語ではなかなか難しい。性の話を面白おかしく、いやらしいものとして発信するものは多く見られるが、必要なことを正しく教えてくれるものが少ないと思います。だからこそ、ちゃんと理解してほしいとYouTubeなどを使って僕は発信を続けています」(しょご先生)。
大人になったら何となく知っていることが、実は間違っていたり、思い込みだったりすることも少なくない。今からでも必要な情報は積極的に手に入れたい。それは決して恥ずかしいことではないのだから。
ニコニコチャンネル「しょご先生 日本一わかりやすいリアル性教育」
では月額550円で、月2回の生配信を行っている。チャンネル会員になると、会員限定パートを含む生放送全編を見ることができる。
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文=岡部礼子
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