事故で亡くなった同級生が毎晩血まみれで枕元に現れる…彼女は何を訴えたいのか。意外な理由とは!?【作者に聞いた】
東京ウォーカー(全国版)
夏といえば怖い話。夏休み期間中に読みたい怖い漫画を紹介する。東洋トタン(
@To_Yo_Tutan
)さんがX(元Twitter)にアップした「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」は、その結末の意外性が話題となった。同級生の霊は何を訴えたかったのか。
毎晩のように枕元に現れる、隣のクラスの女子の霊。彼女が伝えたかったのは、どんな「想い」なのか
高校生の「レイナ」は寝不足に悩まされていた。交通事故で亡くなった同級生の女の子、「加賀ミナミ」が、毎晩夢枕に立つからだ。額から血を流し、無言のまま自室にたたずむミナミ。
だが、レイナとミナミの関係は、1年生の時に同じクラスになったというだけ。自室にミナミがまるで霊のように現れる理由には思い当たる節がなかった。
夜な夜な苦しめられている現象について、レイナは恋人に打ち明ける。しかし恋人は「お前ホラー映画の見過ぎなんじゃねぇの?」とそっけなく、それどころかレイナの意思を無視してベッドに押し倒そうとする。
「好き」という、美化されがちな感情に潜む加害性を描く
作者の東洋トタンさんは、いわゆる女性同士の関係性や結びつきを描いた「百合」や「ロマンシス」といわれる作品を多く描いている。7月に発売された「ラストサマー・バケーション」も同じく、少女たちの感情が主題となった作品だ。
そんな東洋トタンさんに、ウォーカープラスでは「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」を描いた制作背景をインタビューした。
――本作はどんなきっかけで描かれた作品でしょうか?
「短編漫画を不定期で作っているのですが、『ホラーテイストな作品を作ってみたいな』という思いつきから生まれた作品です」
――ミナミは幽霊でも回想でも台詞がなく、それだけに一方通行の想いという印象を覚えました。
「確かに一言も喋ってませんね!言われて気付きました。ミナミはレイナに強い好意を抱いており、自分みたいな人間が関わることはできない存在だと思っていた。その想いの強さから、ミナミの死後の魂がレイナの部屋に引き寄せられて姿を現したのだと思います」
――また、心当たりがなかったレイナは、読者の「ミナミがどんな人かわからない」という目線に重なっていたと思います。
「以前に描いた作品なので記憶は曖昧ですが、結末がわかるまではただただ薄気味悪い存在にしたかったので、『全然知らない別のクラスの同級生』という最小限の情報に留めたのだと思います」
――結末の「ちょっとしんどいです」というモノローグにはどんな想いをこめたのでしょうか?
「ミナミはレイナのことを暴力的な彼氏から守ってくれました。とはいえ、強烈な好意を寄せていて、毎晩自分の寝床に現れた……、という事実には、ストーカーのような性的な気持ち悪さがあると思います。『好き』という気持ちは特に創作物においては美化されがちですが、その中には加害性があると思っています」
――東洋トタンさんは女性同士の関係性に着目した作品をこれまでも描かれています。どんなところに惹かれ、また表現しようとされているのですか?
「私は女性なのですが、恋愛において女性との間で大きな失敗を犯しました。また、友情においても、私が引っ込み思案ゆえにうまく関係を築けず後悔した経験がたくさんあります。それゆえ女性同士の深い関係は私の中で強烈に美化されていて、憧れの対象になっています」
――漫画家としての今後の目標について教えてください。
「リアリティ、いわゆる生々しさを保ちつつ、エンタメ性に富んでいる。そんな作品が理想ですし、私が愛する映画や漫画もそういったものが多いです。『1人でも多くの人へ』というよりは、『深く突き刺さる100人中の1人へ』作品を届けられたらいいなと思っています。
COMIC BRIDGEにて連載、完結した「ラストサマー・バケーション」の下巻が7月に発売された。「その細い腕で地獄を抱えながらも明るく振る舞う人気者の美月と、美月に特別な好意を寄せ続けていた嫌われ者の海野、2人の少女の接触から始まる『夏休み』を楽しんでいただけたら幸いです」と東洋トタンさん。少女たちの関係性を描いた本作、ぜひこの夏休みに堪能してほしい。
取材協力:東洋トタン(@To_Yo_Tutan)
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