ナイチンゲールダンス・ヤスのコラム連載！解散するコンビには予兆がある？芸人がゴールの見えない暗闇を彷徨いながら抱く不安と葛藤【ヤスのコラム#11】

神保町よしもと漫才劇場に所属し、「M-1グランプリ2023」では準決勝進出＆敗者復活戦3位という結果で注目を浴びたお笑いコンビ・ナイチンゲールダンスのヤス。“尖り芸人”と呼ばれた過去もあるが、その素顔は「真っすぐで熱い男」だ。そんな彼が日々感じたことを書き綴る連載「ヤスのコラム」。第11回は、お笑いコンビの「解散」に芸人目線で語る。

第11回「解散するコンビのサイン」

ヤスです。

最近解散が続いてますね、心を痛める日もあると思います。

僕は日々劇場で色んなコンビの裏での様子を見ていて気づいたことがあります。それは意外とめちゃくちゃ喧嘩してたり、険悪な雰囲気でネタ合わせやネタ終わりの反省会してるコンビは解散してません。むしろどんどん売れていってます。

では一体どんなコンビが解散していってるのか、それはお互いを諦めた目で見始めたコンビです。

不思議ですね、普通仕事なら相手のことを諦めれば諦めるほどだらだら続けられそうなのに。お笑いコンビは相手のことを諦めれば諦めるほどさよならしてしまいます。若手なら尚更。

これは、芸人って売れるまではある程度自分の中でリミットを決めててそこから逆算してこいつとはもう無理だ売れるまで間に合わなそうだから諦めよう、解散。となるのかもしれないです。

僕は結構そのレーダー敏感で解散しそうな雰囲気のコンビ外したことないです。今思えば女の子に振られるときもみんな同じ目してました。しょん。

なのでもし今好きなコンビがなんか見えるとこでも喧嘩多いなとか険悪な雰囲気の時あるなと思う方、おめでとうございます。健全です。お互いのことを諦めてないのでダメ出し苦言が出てるだけです。そう思うとなんて良好な関係なんでしょう。

そりゃほぼ毎日同じ人間と顔合わせて、色んな現場で売れる？売れない？と焦りながら仕事してたら普通喧嘩します。しかも芸人って相方っていう制度で上下がないので最終的な意思決定をどっちに委ねるか基本的なルールはありません、その場の雰囲気や第三者の意見。

ゴールの見えない暗闇を灯りもなく2人で彷徨わないといけないのです。そしてその不安、葛藤を表に出してはいけないのです、そこは人を笑顔にする洞窟なので。

次第に相手に指示する声は強くなって、そこだけ切り取ったらただ相手に強く当たっているだけの乱暴なやつにうつります。その裏の不安、葛藤を汲んでくれる人間はいません。

これが大体のコンビが険悪に見える時の解説です。

じゃあ喧嘩や言い合いをしないためにはどうすればいいのか、簡単です。相手を諦めるのです。2人で目指していたゴールまでの道のりを一旦ソロプレイにするだけです。暗闇で声を掛け合うのをやめて1人で黙々と進むのです、するといつの間にか相方の姿は見えなくなっています。

これが解散です。

なので僕は、コンビはお互いのことを諦めた瞬間に最も解散しやすいと思っています。これが僕の見つけたコンビが解散するサインです。

もちろん解散が悪いわけではありません、そのあとさらに魅力的な旅人に出会って一緒にゴールする可能性もそもそも1人の方がゴールまで早かった可能性も大いにあります。だって結局はゴールすればいいだけの話ですから。

そうですよね？あれ？なんでゴールしないといけないんでしたっけ？続けます

この洞窟の怖いところは“寄り道しても引き返してもいい”のです。さらにその寄り道は暗闇でとてもきらきら輝いて見えます。そこで探検を辞めてもいいらしいです、だって誰もゴールを目指せなんて言ってないから。

こうなると一生懸命ゴールを目指してる方があほらしくなってきます。寄り道先で長い時間酒やパチンコをしながらふと思います、そろそろ飽きたしゴールでも目指そうかな。

そう思って久々に天井を見上げた時、気づきます。洞窟が崩れ出しているのです。

無限に思えたこの洞窟が有限だったことに気づき、慌てて走ってゴールを探します。違和感を覚えます、あの時の全力疾走が出来ません走る筋肉が衰えています、もう引き返す体力も残っていません。ここで自らも有限だったことに気づきます。

諦めて寄り道先で穏やかに最期を迎えます。

いかがでしたか？僕は思いました。

どっちも幸せならOKです！！！！！！

はい、そりゃ僕は体育会系なので転んでも引き返しても寄り道してもゴールまで突っ走る選択肢しかないですが、全然寄り道先で幸せならOKです！！！

と思います、そもそもゴールなんてあるようでない洞窟なのでそこを寄り道にするかゴールにするかは自分次第ですからね、本当にそう思います。

でもこれはヤスのコラムなんですよね、僕のわがままなだけの信念も最後に書かせてください。参考にはしないでください。

真っ直ぐ進んで惨めに餓死した死に顔の方が口角上がってそう。