貴重な史跡に海鮮グルメも!長崎・松浦で日本の行く末を変えた“水軍”を訪ねる旅

九州ウォーカー

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長崎県の北部、唐津市と伊万里市(佐賀県)との県境に位置する松浦市。豊かな海に抱かれたこの地は、実は旅情くすぐる歴史ロマンいっぱいのエリア。キーワードは歴史の教科書にも登場する「元寇」と日本三大水軍に数えられる「松浦水軍」だ。まだ意外と知られていない、松浦歴史の旅に出てみよう。

2018年3月にリニューアル。蒙古襲来や海をテーマにしたトリックアート、VRを新設した


「元寇」いわゆる蒙古襲来は、ご存知の通り、700年以上前の鎌倉時代中期に起きた大事件。当時、中国を支配していたモンゴル軍が侵略のために博多から有明海沿岸を襲った2度の侵攻を指す。

海底に沈んだ貴重な遺物が見られる!


玄界灘に浮かぶ鷹島は、その蒙古襲来の激戦地であり、終焉の地とも呼ばれるところ。かねてから海底に元軍の遺物があるといわれ、「漁の網に何か引っかかった」という漁師さんの話は昔からあったそうだ。1980年(昭和55年)から調査が始まり、引き揚げられた遺物が展示されているのが「松浦市立埋蔵文化財センター」。2011年(平成23年)には軍船が発見され、話題となったのは記憶に新しい。

元寇の歴史をパネルで解説。海から引き揚げられた遺物が多数展示されている


銅製帯金具・飾金具。これらの金具を使ってベルトを締め、刀などを吊り下げていた


3月13日に一部リニューアルオープンしたガイダンス施設館内では冑や弓といった武器や武具、日用品などさまざまな遺物を見ることができる。驚いたのは「てつはう」。「蒙古襲来絵詞」のなかで、鉄のような玉が割れて、赤い炎が出ているのを見たことはないだろうか。それがこの「てつはう」といわれる炸裂弾。中に鉄や陶器を詰めたもので、導火線で点火して飛ばしていたと考えらている。「蒙古襲来絵詞」に描かれたものがこの発見により裏付けられたこととなる。

水中考古学についても深く知ることができる。遺物を水につけ、塩を抜いているところ


[松浦市立埋蔵文化財センター]長崎県松浦市鷹島町神崎免146 / 0955-48-2098

松浦に行く途中に寄ってみよう!福岡の元寇防塁


元寇と聞いて思い浮かぶのが、博多湾沿岸の各地に残る防塁の跡ではないだろうか。福岡市西区今津海岸の生の松原にも「今津元寇防塁」がある。ここにわざわざ足を運びたい理由は、防塁が築造時の高さに復元されているから。時とともに海岸が変化したため、砂で埋まった防塁が多いが、ここでは周囲が堀り起こされ、かつての姿を取り戻している。高さ約2m、幅は1〜1.5mほどの石の壁が海に平行して走っているのだ。松浦市立埋蔵文化財センターや鷹島観光とあわせて訪れれば、元寇をよりリアルに感じられそうだ。

事前に連絡すれば地元のボランティアによる解説を聞くこともできる


[今津元寇防塁]福岡市西区今津

夏は海水浴場として人気!松浦党党祖が京都からたどり着いた浜「ぎぎが浜」


元寇の際、勇敢に闘ったと伝わっているのが、西九州の海を治めていた松浦党(まつらとう)だ。源平の合戦でも活躍したといわれる海の武士団のことで、高い船舶技術を持ち、大陸との交易も行っていた。その党祖は嵯峨天皇の子孫にあたる、源久(みなもとのひさし)公。松浦が朝廷に食糧を提供する「御厨(みくりや)」であったことから、命を受けて京からやってきたとされ、はじめにこの「ぎぎが浜」へ上陸したと伝わる。不思議な名前は久公が上陸した際、砂がギイギイと鳴ったことからついた。

澄んだ美しい海。夏は海水浴を楽しむ人でにぎわう


[ぎぎが浜]長崎県松浦市今福町北免

名物宮司の歴史話も楽しい!源久公ゆかりの「今福神社」


「今福神社」は、ぎぎが浜に上陸した源久公がそのあとに訪れたという古社。滋賀県の多賀大明神の分霊を勧精した際、ここで歳を越したことから「歳の宮」と呼ばれている。今福神社でのお楽しみは、松浦の歴史に造詣が深い宮司・早田伸次さんのお話。参拝した折にお会いできればラッキーだ。

今福神社の境内


松浦市はローカル線の松浦鉄道が走る。今福駅で降りると今福神社はすぐ


[今福神社]長崎県松浦市今福町東免68 / 0956-74-0722

美しい海を見渡せる360度の絶景も見どころ!「松浦党梶谷城跡」


標高約200mの小高い山で、源久が築城したと伝わる山城跡。玄界灘や伊万里湾を見渡せる絶好ビューも魅力だ。松浦党の人々がここから海を往来する船を監視していたと思うと胸が躍る。

梶谷城であったことを表す石碑


絶景ポイント。おだやかな海に島々がぽっかりと浮かぶ


[松浦党梶谷城跡]長崎県松浦市今福町東免

天井絵も必見の、今福松浦家の菩提寺「宛陵寺」


ぎぎが浜や今福神社が松浦党のはじまりなら、ここ「宛陵寺(えんりょうじ)」はその後の今福松浦家を物語る場所。菩提寺として創建され、源久公を祀る。約1km先には、かつて寺があった旧宛陵寺跡があり、そこには歴代今福松浦絵家の墓がある。宛陵寺は本堂に描かれた天井絵も必見。落款によれば江戸時代の絵師・片山舟水の筆によるものだ。

十二支のほかに、龍や鳳凰などが描かれている。全部で72枚と圧巻!


土地の寄進などについて書き残された古文書が残る


旧宛陵寺跡。源久公が逝去した場所


[宛陵寺]長崎県松浦市今福町仏坂免958 / 0956-74-0139

国道204号線にインスタ映えスポットを発見!「調川道路公園」


松浦市から伊万里市へ向かう途中、「調川(つきのかわ)道路公園」には、迫力のある松浦水軍の兜のモニュメントがある。高台にそびえ、まるで海を睨んでいるかのようだ。一説によれば、源久公のご先祖様をたどると源氏物語のモデルともいわれる源融(みなもとのとおる)につながるとも。源久公がどんなお顔立ちをしていたのか気になるところだが、残念ながら資料はない。

松浦党の兜のモニュメント。迫力満点


[調川道路公園]長崎県松浦市今福町仏坂免

おいしい魚もお宿もこちら!鷹島の海の幸満載「旅亭 吉乃や」


歴史旅の最後に、松浦市自慢の海の幸をご紹介しよう。阿翁浦(あおううら)港を臨む「旅亭 吉乃や」は明治創業の旅館で、お昼時間はランチもいただける。地元イチオシの「おとこ飯膳」(1000円)のほか、養殖が盛んなトラフグやマグロも絶品だ。

港に面する「旅亭 吉乃や」


おとこ飯膳。漁師が好んだ料理をアレンジ。卵をといたゴマダレのお陰でまろやかに


旅館でマグロを1本買い。さまざまな部位を盛る「マグロ丼」


源久公も味わったであろう新鮮な海の幸を存分に味わって、松浦の『歴旅』の締めとしよう。

[旅亭 吉乃や]長崎県松浦市鷹島町阿翁浦649 / 0955-48-2030

山本陽子

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