フィギュアスケート・全日本ノービスで見つけた未来のスター候補達 【ノービスA女子】
東京ウォーカー(全国版)
フィギュアスケート・全日本ノービス選手権が10月22、23日の日程で、尼崎スポーツの森(兵庫県尼崎市)にて開催された。ノービスクラスというのはジュニア年齢に達する前のクラスであり、日本ではその年の6月30日の時点で9歳、10歳に達している選手をノービスB、11歳、12歳をノービスAとして分類、競技を実施している。ノービスAクラスともなると高難度の演技を披露する選手が多数おり、過去のトップ選手の大半はノービスA年代の頃には頭角を現している。また近年においてはノービスBクラスでも、一昔前には考えられなかったような難しいジャンプ構成に挑む選手も見受けられる。さらにノービス年代からアイスダンスに取り組む選手も増えてきており、年を重ねるごとに見どころの多い大会となってきている。今年、トリプルアクセルを成功させて一躍トップ選手の仲間入りを果たした紀平梨花も、わずか1年前にはこのノービスクラスで戦っていたのだ。今年の大会においても、数年先には必ず世界の舞台で戦うことになるだろう、才能溢れる選手を多数見出すことが出来た。
この夏、最も急成長を見せたホープ 住吉りをん

まずはノービスAクラス女子をご紹介したい。大会直前の展望記事でも伝えた通り、今年は進境著しい3名のホープ、住吉りをん、岩野桃亜、松岡あかりの戦いとなった。制したのは住吉りをん。8月の夏季フィギュアでは82点、東京ブロックでは98点と驚異的な進歩を見せてきた選手だ。そして今回のスコアは108.25。ノービスA女子の歴代最高得点を更新しての優勝だ。
「東京ブロックよりも緊張した」との言葉通り、3フリップ+3トウループでバランスを崩す場面もあったが、その後はしっかりと立て直し、安定した演技を見せた。普段よりも慎重な演技を心掛けた印象で、その分、東京ブロックのような勢いは感じられなかったが、全日本の大舞台で落ち着いて演技をまとめられたことは素晴らしい。
この夏からの急成長の背景には、地道な練習の積み重ねと精神面での成長があったようだ。
「今までは試合では気持ちが弱かったんです。積み上げた練習を信じることを心掛けるようにして、段々と試合に強くなれました。少しずつ克服してきていると思います」
試合本番中も、「出来る、出来る」と自分に言い聞かせていたという。直前に岩野桃亜が107点という高得点をマークしたのだが、それがプレッシャーになることはなく「自分がノーミスするぞ」との意識をもって臨んだそうだ。
東京ブロックの取材において、全日本ノービスでの目標の一つとして「くるみ割り人形を繊細に、綺麗に表現したい」と語っていた住吉選手だが、
「今回、それが出来たと思います。どういう風に表現すればいいのかを自分で研究してきました。振付の武田奈也先生からは、『くるみ割りだから笑顔が大切』とのアドバイスがありました」
この楽し気な表現力こそが住吉選手の演技の魅力であり、高難度のプログラムを、ただこなすだけでない、楽しく鑑賞できる作品に仕上げたのだ。
素晴らしい演技で優勝を飾った住吉選手だが、「まだノーミスが出来ていない。もっといい演技をしたい」と気を引き締めていた。そして迎える今週末の全日本ジュニア。「ショートプログラムは“アメリカン・パトロール”という明るい曲です。ショートは絶対ノーミスして、フリーに進出して3分半の新しいくるみ割り人形を、いい状態で見せたい」と意欲的な発言を続ける。そして力強い言葉で会見を締めくくった。
「自分よりも上の選手達と戦えるいい機会です。楽しんで滑りたい」
納得の2位、素晴らしい演技を披露した岩野桃亜

僅差で2位に終わり、悲願の優勝は果たせなかった岩野桃亜だが、「今回の試合は自分の納得の行く演技が出来て嬉しい」と出来栄えに手応えを感じた大会となったようだ。そのスコアは107.00。例年ならば優勝しているはずの点数だ。
「最初、97点だと思いました。また100点を超えられなかったかと思ったんですが、107点でビックリしました」
「この夏には自分を追い込んだ苦しい練習を重ねてきました。そして近畿ブロックからの2週間は自分の苦手なジャンプをひたすら練習しました。そして今日、納得の行く演技が出来ました。自分の演技を出し切って観客に見てもらえました」
1年間の努力を見せることが出来た、その思いがガッツポーズになって表れたという。今回の出来栄えには満足したという岩野選手だが、この先の目標はとても高いところに置いているようだ。
「関大のリンクで一緒に練習している紀平梨花選手がトリプルアクセルを軽々と決めて、コンビネーションにもしています。安藤美姫選手もジュニアの頃から4回転サルコウを跳んでいました」
そこから刺激を受け、4回転サルコウへの挑戦を決めたという。既に近畿ブロックの頃から挑戦を公言していたが、まだ回転不足なので試合には入れられないという。が、来季には試合で挑戦するプランがあるようだ。そして将来の目標として、「2022年北京オリンピックでの金メダル」を挙げた。高い目標だが、実現に向かって突き進んでほしいものだ。
「全日本ジュニアまでにルッツ+ループの回転不足を改善し、スケーティングも改善したいと思います。ショートプログラムは鈴木明子さんの振付で、“リトルプリンス”(星の王子様)です。神秘的でかわいい雰囲気のプログラムです。お姉さんたちに負けないように、表現力でジャッジ、観客にアピールして会場と一体となることが目標です」
既に来季のジュニアグランプリシリーズへの挑戦も考慮して、今から練習内容を考えているようだ。まずは今週末の全日本ジュニア、スピード感溢れる演技を期待したい。
極めて質の高い演技で高い評価を受けた、松岡あかり

試合の4日前に右足首を怪我したのだそうだ。そのため「緊張と不安とでドキドキしていた」という。
「一番決めたかった3ルッツ+3トウループが降りられて嬉しさはあります。ただいつも跳べている最後のルッツ、フリップは、足が震えたのか転んでしまいました」
終わって安心した、と率直な気持ちを吐露した松岡選手。
「怪我の影響はないと思っていますが、集中力、メンタルが足りなかったと思います。3つも失敗があって、100点行かなくてもおかしくない演技でした。それがこんなに失敗して104点。ビックリです」
そう、大きなミスが2つ、そして本人が納得の行かなかった質の悪いルッツジャンプも含めると3つのミスがあった。それでいてスコアは104.56。ジャッジからは極めて高い評価を受けたのだ。その理由は演技を見れば分かる。成功したエレメンツのクオリティがとにかく高い。直前に怪我をしていたとは信じられないほどだ。特にジャンプの軸の取り方が美しい。器械体操の経験がある選手に良く見られる軸の取り方なのだが、「テニスと水泳とピアノをやっていたんですが、スケートを始めてすぐに辞めてしまいました」と、特に他の競技に力を入れて取り組んだ経験はないそうだ。天性の資質なのだろう。
「全日本ジュニアに向けては怪我も治っているので、いつも通りの練習をして臨みたいです。今回は練習が足りなくて不安がありました。100点を出したという自信を持って、万全のコンディションでいい演技をしたいです」
夏場にはまだ取材にも慣れていなかった。それが今回は厳しい状況においても力強いコメントを聞かせてくれた。一試合ごとに着実に成長している松岡選手、その将来性は極めて高い。全日本ジュニアでのアピールを楽しみに待ちたい。
※「ノービスA男子」編へ続く 【東京ウォーカー/取材・文=中村康一(Image works)】
編集部
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