もみじとカエデに違いはある?知れば紅葉狩りがもっと楽しくなる特徴や由来を解説

東京ウォーカー(全国版)

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紅葉と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、もみじとカエデ。紅葉と書いて、“モミジ”と読むことからも分かるように、日本の紅葉シーズンを代表する植物だ。そんなもみじとカエデには、イロハモミジ、ヤマモミジ、ハウチワカエデなど、それぞれさまざまな特徴を持つ品種があるが、もみじとカエデの違いとはどのようなものなのだろうか?葉がいくつかの数に裂け、赤く色づくものがすべてもみじと思っていたら大間違い!「NHK趣味の園芸」で講師としても活躍している確実園園芸場の川原田邦彦さんの監修のもと、もみじとカエデの違いを徹底分析すると、意外な答えが見えてきた。

「もみじ」は日本特有の呼び方、植物的には「カエデ」が正しい?

カナダの国旗にもデザインされているサトウカエデ

葉の形や色づき方が似ている上、すべてのもみじ・カエデがムクロジ科カエデ属に分類されていることから、仲間であることはなんとなく理解できるが、実は植物学上ではカエデともみじを区別する定義はなく、モミジ属は存在しない。

もみじという言葉は日本特有のもので、英語ではカエデがmaple、もみじがJapanese mapleと訳されており、同じカエデ属の植物ということがわかる。

では、なぜ日本ではもみじとカエデ、それぞれを違う名前で呼んでいるのか。それは、古来使われていた「もみづ」という動詞が由来になっている。この言葉から派生したのが名詞の「もみぢ」で、昔は草木が色づいたさまを「もみぢ」と表していた。それが転じて、カエデの中でも特に真っ赤に色づく種類をもみじと呼ぶようになった。そのため、もみじと名が付く植物は、大きく分ければイロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジの3種と少ないわけだ。

多くの日本人は手のひらのような赤く色づいた葉をもみじと呼ぶ。「紅葉狩り(もみじがり)」、「紅葉前線(もみじぜんせん)」、「紅葉に鹿(もみじにしか)」、「紅葉傘(もみじがさ)」など、紅葉と書いてもみじと読む慣用句も多いことも、“紅葉=もみじ”というイメージが定着している理由のひとつだろう。

街中でもよく見かけるトウカエデ


ただ前述したように、もみじとカエデはすべてムクロジ科カエデ属の植物で、イロハモミジなども植物学的にいえばカエデと呼ぶ方が正しい。それでは、もみじとカエデの違いを別の視点からも見てみよう。

もみじとカエデの違いを、園芸や盆栽の世界から見る

盆栽界では、葉の切れ込みが深いものがもみじ、浅いものがカエデとされているが、実は「明確な違いがない」というのが正しい答え。今回の記事に協力してくれた確実園園芸場の川原田さんは、「もみじは紅葉するという動詞が語源で、紅葉する代表的な木に名付けられたもの。一方で、カエデはカエルの手に似ている形容詞から付いた名前なので、実際のところ、2つの違いを論じる意味は薄いです」と話す。

このように、園芸や盆栽の観点で考えても、もみじとカエデを明確に区別することは難しいということがわかってきた。それでも、さまざまな種類のもみじやカエデの写真を見てみると、それぞれ葉の形が異なることはよく分かるので、紅葉狩りを楽しむ際にその違いに注目してみるのもいいだろう。

原寸 日光産カエデ類紅葉図譜画像提供:日光自然工房


日本各地に点在するもみじの名所を厳選!

そんなもみじとカエデの美しい紅葉が見られるスポットは、日本各地に点在。それぞれ、代表的な紅葉名所を紹介していこう。

まずはもみじ。東京ならイロハモミジ、オオモミジが多く自生する高尾山。都心から電車で約1時間と好位置にある自然の宝庫で、標高は599メートルだ。1967(昭和42)年に明治の森高尾国定公園に指定された山内には、約1200種の植物、約100種の野鳥、約5000種の昆虫が生息している。中でも秋の紅葉の景色は格別。

高尾山画像提供:公益社団法人八王子観光コンベンション協会


さらにアクセスが良い名所といえば、東京都中央区にある浜離宮恩賜庭園。国の特別名勝および特別史跡に指定されている、潮入の池や2つの鴨場をもつ江戸時代から続く大名庭園だ。例年では11月中旬から12月上旬にかけて、潮入の池周辺や園内各所でもみじやトウカエデ、ハゼノキといった木々の紅葉を楽しめる。

浜離宮恩賜庭園画像提供:公益財団法人東京都公園協会


全国各所にも名所はたくさんある。京都府の禅林寺(永観堂)、大阪府にある箕面大滝、勝尾寺、九州の小京都と称される福岡県の秋月などが有名だ。

赤や黄、オレンジなどで渓谷や古刹を彩るカエデも必見

もちろん、さまざまな種類があり、品種によって異なる色づき方をするカエデが見どころのスポットも点在。中でも、都内では多くの樹木が自生する御岳渓谷が人気だ。

御岳渓谷は、JR青梅線の御嶽駅からすぐ、多摩川上流に位置する渓谷で、気軽に紅葉狩りができる定番スポット。「日本の名水100選」にも選ばれている風光明媚な景観で、約4キロメートルの遊歩道も整備。紅葉を愛でながらのんびり散策もおすすめだ。

御岳渓谷画像提供:青梅市観光協会


紅葉の聖地、京都でカエデを見るなら嵐山が良い。赤や黄、オレンジなど多彩な色に染まった嵐山を背景に、曲線の美しい渡月橋がかかる風景はあまりに有名。トロッコ列車から見られる美しい紅葉や、名刹の天龍寺をはじめ名所が多く、1日中紅葉スポット巡りを楽しめるのも魅力だ。

嵐山画像提供:京都市メディア支援センター


そして、オオモミジで有名なのが兵庫県にある高源寺。三丹随一の紅葉の名所として知られる禅宗の由緒ある寺院で、境内にはカエデが群生している。中でも、鎌倉時代に同寺を創設した遠谿祖雄(えんけいそゆう)禅師が中国杭州の天目山より持ち帰って植えたといわれる「天目カエデ」が特に目を引く。葉が小さく、切れ目が深く、枝が垂れてくる天目カエデの紅葉が広い境内を埋めつくす様子は壮観だ。

高源寺画像提供:(C)高源寺


また、埼玉県の国営武蔵丘陵森林公園、宮城県の鳴子峡、広島県の三段峡(二段滝・三段滝・三ツ滝)なども色彩豊かな紅葉スポットとして知られている。

もみじとカエデの種類ごとの違いを意識して紅葉を見ると、これまでと違った美しさに気付けるかもしれない。今年は密を避けるように注意し、感染症予防対策を整えた上で、いつも以上にゆっくりと紅葉を愛でよう。

■監修:川原田邦彦(かわらだ・くにひこ)
茨城県牛久市にて大正6年に創業した園芸店・確実園園芸場のオーナー。東京農業大学造園学科を卒業後、樹木の育苗、造園など幅広く植物とかかわる。特にモミジ、アジサイ、フジについての知識が豊富で、「NHK趣味の園芸」にて講師としても活躍。「NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月カエデ、モミジ」、「NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月 アジサイ」(それぞれNHK出版)など著書も多く、2020年3月にはイラストレーターの磯村仁穂と共著で「はじめてでも美しく仕上がる 庭木・花木の剪定」(西東社)を出版。
公式サイト:確実園園芸場

■原寸 日光産カエデ類紅葉図譜 画像提供:日光自然工房
自然が人にもたらしてくれるさまざまな恩恵、自然の美しさ、素晴らしさを感じられるような商品を展開。当ページで使用した原寸 日光産カエデ類紅葉図譜のB1ポスター、日光 森の響きと題した自然音CDなど、日光の自然をテーマにしたオリジナルグッズがそろう。
公式サイト:日光自然工房

取材・文=諫山 力

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