脱ハンコが叫ばれるなか、ハンコで介護施設に笑顔を!城山博文堂の取組み
関西ウォーカー
昨今「脱ハンコ」という言葉が注目され、ハンコの存在意義に疑問が呈されることも多い。そんななか、「ハンコにできること」を模索する店がある。
介護施設でオリジナル印鑑作成イベント
2020年12月10日、大阪市浪速区の介護付き有料老人ホーム「SOMPOケア そんぽの家 難波稲荷」で、オリジナル印鑑が作成できるイベントが催された。これは大阪市此花区にある株式会社城山博文堂(しろやまはくぶんどう)がボランティアで行ったものだ。
コロナ禍で介護施設のイベントが開催中止に
介護施設では書画やエステなどのイベントが時折開催されており、利用者の楽しみともなっている。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で人が出入りするようなイベントが開催できない状況が続いていた。
城山博文堂の代表・城山謙一さんの母も「SOMPOケア そんぽの家 難波稲荷」に入所していた時期があったそう。城山さんは「母が入所していたのは1年弱でしたが、日課のように面会に行っていました。イベントが行われていたころは『こんなことをしてもらった』と母も楽しそうに話していましたので、イベントが行われなくなった現状に、寂しい思いをしている人も多いのでは?と感じていました」と振り返る。
ハンコを絡めたイベントで施設に恩返しできれば
「残念ながら母は亡くなってしまったのですが、施設の方には大変よくしていただきました。高齢者のお世話をするのは本当に大変で、私ならそんな仕事はできないと感じていましたから、その分なにか違う形で恩返しができればと。そこで私自身ができることを考えた際、ハンコを絡めたイベントを発案しました」
絵を描く楽しみや使う楽しみに加えて、実用性も
今回開催されたのはオリジナルのシャチハタを作成できるイベントで、指定用紙の枠内にハンコにしたい絵を描きこむと、それをもとに名前を入れてデータを作成。シャチハタに加工して本人に渡すというもの。
「ハンコを通じて絵を描く楽しみや仕上がる楽しみ、実際に使う楽しみを提供できるだけでなく、形として残るため、実用的にお使いいただけます」と城山さん。作る過程だけでなく、完成後もしっかり活用できるのがうれしい。
イベントでは参加者たちが笑顔に
ハンコの制作にあたっては、職員がマンツーマンで対応。「好きなものや昔話などを回想する場面もあり、有意義な時間を過ごせた」という声が多く聞かれた。また、完成した絵がハンコになることを聞くと「これがハンコになるの?」と驚く参加者も。
昔飼っていた犬の写真を出してきた人は、飼い犬との思い出話に花を咲かせながら絵を描いていたそう。対応した職員からは「完成した絵を確認した際にはみんな笑顔になっていて、いい雰囲気に包まれていました」と、心温まる感想が聞かれた。
ハンコはまだまだ可能性を秘めている
「最近ではハンコに代わってサインになったり、通販でも置配になったりと、ハンコを使う機会が減っているように感じます。ただ、押すだけのハンコは手元にあると便利ですし、当社の製品のように押すたびに笑顔になれるものも存在します。文化というものは現状維持だけでなく、時代と共に変化するものだと思っていますので、ハンコもまだまだ可能性を秘めているはず。時代にそぐう商品を提供し続けたいと考えています」と城山さんは、ハンコの今後について意欲を見せた。
笑顔が広がる取り組みに手を挙げて
また、このイベントを通じて「災害などでボランティアをされる方が増えたとは思いますが、コロナ禍もまた災害と同じです。SNSでは嫌な意見ばかりが目につきますが、ちょっとした心配りで笑顔が広がり、それは自分にも帰ってくることを再確認していただければと思っています」と城山さん。
「当社だけではボランティアにも限界があります。この記事に触れて、手を挙げてくれるハンコ店が増えること、また、それ以外の業種でもこのような取り組みがなされることを希望します」と将来への期待を語った。
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