世界にここだけ?“かまくらのあるスターバックス”が誕生したワケ

東京ウォーカー(全国版)

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「今年は見られないと思っていたから、すごく嬉しい!」そう笑顔を見せる20代と30代女性2人組。目の前には、直径3メートル、高さ3メートルもある「かまくら」が。これは秋田県にあるスターバックス コーヒー 横手店の入り口前に2月12日に設置されたものだ。

「お祭りで見るものだと思っていたから、よく来る場所にあるのはいいね」と、友人同士で訪れていた10代女性


秋田県横手市では毎年2月に「横手の雪まつり」が開催され、市内全域に約80基のかまくらが造られる。かまくらの中で甘酒や餅などを楽しむ、横手の冬の風物詩だ。しかし今年は新型コロナウイルス感染症拡大対策のため祭りの規模を縮小。例年行っているメイン会場でのかまくらの展示は中止となった。

そんななか登場したのが、先ほどの横手店のかまくら。そこには、かまくらがつなぐ地域とスターバックスのパートナー(スタッフ)との物語があった。

地元を盛り上げたいという思いから参加を始めた横手の雪まつり

広々とした店内。中央の長テーブルは秋田県産の杉を使用


秋田県横手市初となるスターバックスが誕生したのは2020年4月。しかし横手市とスターバックスの交流が始まったのは、それより10年以上も前のこと。当時イオンモール大曲店のパートナー(スタッフ)だった、現・横手店シフトスーパーバイザー(時間帯責任者)の間美穂さんが雪まつりへの参加を発案したのがきっかけだ。スターバックス各店舗では「コミュニティ コネクション」という地域への感謝の気持ちを込めて店舗が自主的に行っている活動を行っており、その取り組みの一環としてイオンモール大曲店のパートナー(スタッフ)を中心に「横手の雪まつり」に参加。来場者にコーヒーサービスを行った。

雪まつり参加のきっかけを作った間さん。ほかにもチャリティランや増田町の蔵の日にもイベントに参加した


イオンモール大曲店はスターバックスコーヒーでは初の秋田県南部の店舗として、2008年にオープン。横手市増田町出身の間さんは過去に「ミスりんご」として活動していた経験から、横手市観光協会とのつながりがあった。「地域貢献をしながら、まだ地元では認知度が低かったスターバックスのことも知ってもらえたらうれしいという思いでした」(間さん)

そこからとんとん拍子に話が進み、初めてスターバックスが祭りに参加したのは2009年のこと。1年目は屋内の会場でのコーヒーサービスだけだったが、翌年からはスターバックス用のかまくらが1基用意され、そこでコーヒーサービスを行うこととなった。

【写真】横手の雪まつりの様子。「かまくらの中だとコーヒーの香りがより分かる!」という声も


祭りにはイオンモール大曲店だけでなく、秋田県内の他店舗からもパートナー(スタッフ)が駆け付けた。横手店がない頃は、一番近い店舗でも会場まで約20キロの距離。2000杯分のコーヒー、カップや保温器具などの資材を運んだり、各店のシフトを調整したりと準備は大変。しかし、「その苦労に代えがたい体験ができるんです」と、ディストリクトマネージャー(地区担当マネージャー)の櫻木芳樹さんは声に力を込める。

それは「おかえり」という地元の人々からの声。「『また来てくれたの、おかえり』って言われるのを味わっちゃうと、どんなに大変でもまた行こうと思えてしまうんです。何にも代えがたい体験です」(櫻木さん)

雪まつりでは来場者にコーヒーをサービス


初めはコーヒーサービスだけだったが、コーヒーの淹れ方講座をしたり、リクエストで物販も行ったりと年々グレードアップ。観光客はもちろん、「横手でスターバックスのコーヒーが飲めるなんて」と地元の人たちにも喜ばれ、毎年楽しみにしているという声が聞けるようになった。「コーヒーを通して来場者の方に喜んでいただき、いろいろなお話もできる。私たちにとっても祭りは本当に楽しいんです」(間さん)

そして回を重ねるごとに「市内にお店はいつできるの?」と聞かれることが増え、次第にパートナー(スタッフ)の中で「横手市にスターバックスを!」との思いが強くなっていったという。

かまくらを眺めながらコーヒータイムは格別


横手市とスターバックスとのつながり、その思いは地元の人々も同じ。「毎年、自然と『よし、今年もスタバのかまくらつくるべ!』っていいながら準備しているんですよ」と教えてくれたのは、横手市観光協会の小西春奈さん。「秋田県に店舗が増えて忙しくなってからも祭りに毎年参加して、盛り上げてくださって。気付けばもう10年。最初は人と人とのつながりだったのが、店と地域とのつながりになった。スタバには美味しいコーヒーがあるだけでなく、地元とのこんな交流があることがうれしいです」と、小西さんはスターバックスへの思いを語る。

そして今年で13年目。コロナ禍で例年のかまくらイベントは中止となったが、観光協会から祭りの協賛企業として「店にかまくらを展示しませんか」とスターバックスへ提案があった。長い年月で築かれた信頼関係があったからこそのできごとだ。

コロナ禍のオープンを後押ししたのは、雪まつりでできた絆

店舗前にかまくらを作る職人たち。雪集めはパートナーたちもお手伝い


今年のかまくらは2月10日・11日の2日間、かまくら職人4人で制作。かまくら職人の一人、新山聡さんは「例年に比べて今年は市内でかまくらを見る機会が少ないので、見てもらえる機会が増えてよかった」と、胸の内を教えてくれた。

また、制作の合間には「横手のかまくら文化を知ろう!」という講座も開催。かまくら職人からパートナー(スタッフ)たちへ、かまくらの歴史などが紹介され、交流を深める機会となった。

横手店によく訪れるという20代と30代の女性2人組。かまくらを前に記念撮影


水神様が祀られ、完成したかまくらのお披露目は2月12日~15日。初日は冬晴れの青空の下、真っ白なかまくらが訪れる人々の足を止めた。店内からもかまくらが見え、地元ならではの風景が、訪れる人たちの心をコーヒーとともに温めていった。

県南唯一のドライブスルーがあるのも地域性を考えたから。「地域に必要とされる店でありたい」とストアマネージャーの佐藤大さん


昨年の4月、コロナ禍の緊急事態宣言下という前例のない状況でオープンした横手店。パートナー(スタッフ)のトレーニングや内覧会など、事前イベントはすべて中止。このなかでオープンしてもいいのかという厳しい声、一方では楽しみにしているという期待の声もあった。当時を振り返り、「正直、不安でした」と櫻木さん。そしてテイクアウトのみの対応で迎えた営業初日。迎えてくれたのは「横手にオープンしてくれてありがとう」という歓迎の声だった。

一杯一杯に心を込めて


淹れたてのコーヒーを手に「大変だけど頑張ってね」「待っていたよ」と声をかけてくれる地元の人々。「雪まつりでの交流で私たちを知っていただいていたから、厳しい状況でも温かく迎え入れてくださいました。心待ちにしてくださる方々がいたので、オープンできて心から良かったと思えました」と櫻木さん。

ディストリクトマネージャーの櫻木さん


「店にかまくらを展示することは夢でしたので、こんなに早く実現するとは思いませんでした。いろいろな世代が過ごす必要とされる場所として、この店があることが地元の元気につながるといいなと思っています」(櫻木さん)

壁には横手市十文字町の伝統工芸品「十文字和紙」を使ったアートが

かまくらの展示に合わせて、かまくら文化を紹介するボードを掲示


広々とした店内では、横手の伝統工芸品をインテリアにするなど地元への想いにあふれている。そんな空間でくつろぎながらコーヒーを飲む地元の人たち。

最終日のかまくら点灯。「一戸一かまくら」は横手の伝統行事を守るため、一軒に一つのかまくらを作ろうという運動


2月15日のかまくら展示最終日、「一戸一かまくら」の活動に賛同してかまくらの点灯が行われた。ろうそくの暖かな光は、地元にそっと寄り添う横手店のようだった。

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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