半身まひの父手作りの鳥の彫刻に「感動しました」とTwitterで反響 「動きのある鳥の姿を表現できれば」

2021年6月1日 10:00更新

東京ウォーカー(全国版)

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Twitterに投稿されたとある手彫りの彫刻作品が注目を集めている。イラストレーターさんの湊谷鈴( @siratamairipafe )さんが5月上旬に相次いで投稿したのは、湊谷さんの父が作った木彫りの鳥の写真。細部まで丁寧に削られ彩色された木彫りのスズメやカワセミの写真に、「めちゃくちゃかわいいです」「丁寧で細やかなお仕事ぶりに感動しました」と賞賛のコメントが数多く寄せられている。63歳になるという湊谷さんのお父さんは、数年前から左半身まひを患いながらも、リハビリの一環としてそれらの作品を作り上げたという。ハンディキャップと真摯に向き合い、繊細なバードカービング(鳥の木彫り)作品を作り出す湊谷さんのお父さんに、作品作りのきっかけや原動力について話を聞いた。

2万以上のいいねが寄せられた木彫りの子スズメ画像提供:湊谷鈴(@siratamairipafe)


脳出血でまひの後遺症、リハビリとしてはじめたバードカービング

――あたたかみのある木彫りの鳥たちがTwitterで話題です。作品作りをはじめたきっかけを教えてください。


「バードカービングを始めたのは、平成28年(2016年)頃からです。私は元々、趣味で釣り具のバルサミノー(バルサ材で作るルアーの一種)作りや、フィッシュカービング(魚の木彫り)をしていました。ですが数年前に右脳頭蓋内出血を発症し、左手・左足の末梢部分に機能障害、いわゆるまひが残る状態となりました。そんな中、『木彫りをする時に木材を障害のある左手で持って行えばリハビリになるのでは?』と考えるようになりました。指先の掴む、握る、離すという動きの機能回復に良いではないか?と思ったのです」

――以前からハンドメイドをされていたんですね。鳥を題材にした理由はあるのでしょうか。

「退院後、フィッシュカービングに改めて取り組むようになり、しばらくはフィッシュカービングに専念していましたが、段々とバードカービングに移行していきました。理由は2つあり、1つ目は、発症前からバードカービングに興味があり、将来時間があれば挑戦したいと思っていたということ。2つ目は、フィッシュカービングで使用する塗料の臭いがキツい、ということです。

フィッシュカービングではラッカーシンナー系の塗料を作品の仕上げに使用するのですが、家中臭くなるほどで、家族からも苦情が出ていました。バードカービングもラッカーシンナー系の塗料を少しは使いますが、アクリル絵の具の使用が主です。家族のことも考え、魚から鳥に切り替えることにしましたが、今では臭いについての苦情はほとんどありません」

【写真】細部まで繊細に。湊谷鈴さんのお父さんのバードカービング作品画像提供:湊谷鈴(@siratamairipafe)


鳥のディティールを追求、1つの作品に約20時間

――どの作品も細部まで丁寧に作りこまれていますね。どのくらいの時間や工程をかけて制作されているのでしょうか。

「制作時間について特に記録は取っていないのですが、何度か作っている同じ鳥であれば、約20時間位かと思います。鳥の種類やポーズによって、作品の制作時間は異なってきます。

作成工程は大まかに分けると、11工程あります。

(1)下書き: 作りたい鳥の写真等を参考に、これから作りたい鳥のポーズで型紙を作ります。
(2)墨入れ: 素材となる角材に、鉛筆などで型紙から鳥の形を写し書きます。
(3)粗削り: 写し取った線に沿って、ルーター(電気工具)や彫刻刀などにより、おおまかな鳥の形に削り出します。
(4)成形、修正彫り: 彫刻刀、ヤスリを使って、より細かく鳥の形に整えます。
(5)鳥の羽を削り出す: 背中・腹部の羽毛→ミニルーターに先端ビットを付けて削ります。翼羽・尾羽は、バードカービング用の電熱ペンにより焦げ目を付けます。
(6)脚の作成: 銅線を資料を元に切り、脚の形に曲げてから、はんだ付けをして足を作ります。爪も作り、最後に全体に色付けをします。
(7)目の作成: 鳥の種類に合わせて、アクリル板から目のパーツを丸く削り出し、瞳孔などの色を付けます。
(8)鳥本体に脚と目を付ける: 作った脚と目を鳥の本体に取り付けます。
(9)鳥本体に色付け: 鳥の写真等を参考に、実際の色に近くなるよう、アクリル絵の具を使って着色します。
(10)土台作り: 鳥が止まっている土台の部分を、木の枝や流木などを利用して作ります。
(11)鳥本体と土台を接合して完成

以上が、大まかな私の作成工程です。材料を削っている時に納得が行かず、写真と比較して削ったりパテを盛ったり、と修正を繰り返すこともあります。そのため、完成までに時間が掛かる時もあります」

餌を加える親すずめと待ちわびる小すずめのツーショットがほほえましい画像提供:湊谷鈴(@siratamairipafe)


――作品作りにおいてこだわっている点やテーマがあれば教えてください。

「鳥のそれぞれの特徴を表現することです。同じ種類の鳥を何度か作って、ようやくモデルとなっている鳥の特徴を少しは掴めて来たかな?と思えるようになりました。

始めたばかりの頃は、彫り終えてからしばらく経って作品を見返すと、ここが違う、ここも違う、と思うことがたくさんありました。しかし、最近はそう思うことも少なくなったように思えます」

――特に力を入れた作品や、ご本人が気に入っている作品はありますか。

「スズメとシジュウカラの親子です。餌をねだるヒナと、餌を与える親鳥をイメージし作成しました」

左手の機能を回復し、納得のいく作品を。その姿勢に感銘の声も

木彫りのシマエナガ画像提供:湊谷鈴(@siratamairipafe)


――これから作りたいと思っている作品やモチーフはありますか?

「動きのある鳥の姿を表現できれば最高だと思っています」

――今後、挑戦したいことや目標を教えてください。

「左手の機能回復のためにと思って始めましたが、時には左手の代わりに万力で木材を挟んで、作品を作ることもあります。そのため、自分自身、まだ納得のいく作品は作れていません。あくまでも左手の機能が少しでも改善し、満足いく作品が作成できるようになりたいです」

――個展など、作品の実物を見られる機会などの予定はありますか?

「私は個展については考えておりません。実物の作品発表については、リハビリに通っている福祉センターで機会を得られています。年に一度、障がい者の美術作品展示会が小規模ですが開かれているので、そこに過去2回、合計6点の作品を出品させて頂きました。

作品展示中、私と同じような障がいを持った方から『物も満足に握れない貴方の作品と知って驚きました。私も何かやろう、頑張ろう、という気持ちがわきました』と、声をかけてもらえたことがとても嬉しかったです。それ以来、『私の作品を見てくれる人もいる、機能回復を兼ねて木彫りをしているけれど頑張らなければ』と感じるようになりました」

――最後に読者へメッセージをいただければ幸いです。

「左手のリハビリを目的に始めたバードカービングです。作品の出来に関係なく、私と同じような障がいを持つ人が『自分にも何かできるかも』と前向きな気持ちになれるきっかけになれば幸いに思います」

父の作品を少しでも多くの人に見てもらいたいとTwitterに写真を投稿した湊谷さん。お気に入りの作品は父と同じく、スズメとシジュウカラの親子で「お腹のふわふわ感が可愛らしくて好きです」と話す。

鳥の種類ごとの特徴や佇まいを表現した作品群からは、湊谷さんのお父さんが懸命なリハビリに励んできたことと、自分が納得できるものを作れるようになりたいという作品作りへの情熱がうかがえる。1つ1つ想いをこめて作りだしたバードカービング作品をぜひ堪能してほしい。

取材協力:湊谷 鈴(@siratamairipafe)

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