佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021 『メリー・ウィドウ』徹底解剖!
東京ウォーカー(全国版)
演劇ライターはーこによるWEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.92をお届け!
兵庫県立芸術文化センター(以下、芸術文化センター)で、佐渡裕芸術監督が毎年夏に贈る人気のプロデュースオペラ。昨年予定していた『ラ・ボエーム』は、コロナ禍のため2022年に延期となったが、今年は徹底した感染対策の上で、レハールのオペレッタ『メリー・ウィドウ』を上演。オペレッタは喜歌劇と訳され、敷居が高いと感じるオペラよりカジュアルで、庶民に愛された娯楽的作品だ。2008年に上演して大きな反響を得、13年の時を経た今、新たなキャストによる改訂新制作版として登場する。
先日、指揮・佐渡裕、演出・広渡勲、ヒロインのハンナ役・並河寿美が登壇。同じくWキャストでハンナ役を演じる高野百合絵がリモートで参加、桂文枝のコメント映像も加えて会見が行われた。そのコメントと共に、劇場を熱気と興奮の渦に巻き込んだ前回公演から作品の見どころ、そして今回の新たな楽しさを紹介しよう。
【あらすじ】
1900年頃のパリ。ある東欧の小国ポンテヴェドロの公使館で、国王の誕生日を祝う華やかな夜会が開かれている。パーティーの中心は、夫の莫大な遺産を相続した美しき未亡人ハンナ・グラヴァリ。もしハンナが外国人と結婚すれば、財産は国外へ流れ、国は破産してしまう。なんとか財産流出を防ごうと、ツェータ男爵はハンナを昔の恋人ダニロと元のさやにおさめようと画策する。昔は結婚まで考えた仲のハンナとダニロだが、再会した2人は意地を張り合うばかり。気をもむツェータ男爵は、妻ヴァランシエンヌの浮気に気がつかない…。
【伝説の『メリー・ウィドウ』】
2005年、兵庫県西宮市に開館した芸術文化センター。その3年目、佐渡裕プロデュ-スの夏のオペラ第3弾で上演したのが、オペレッタ『メリー・ウィドウ』。佐渡は当時、劇場会員向けに発行した”佐渡通信”で自身の思いを伝えている。
「僕は1人でも多くの人に、舞台芸術を心のビタミンとして届けたいといつも考えているんですよ。この劇場で、もっとおもしろいものを楽しみたいと願う人たちに、『佐渡裕は次に何を持って来るんや?』と期待してくださる気持ちに応える舞台を。そこで、これぞ芸術文化センターや!と言える舞台を届けたいと思っています。『メリー・ウィドウ』は、胸に残るメロディがたくさんある素晴らしい音楽に乗せて『これでもか!』というほど、次から次へと楽しい場面が繰り広げられ、息つく暇もないほど。宝塚歌劇とお笑いを親しむ街に生まれた芸術文化センターの地の利を生かして、おしゃれで楽しくてサービス満点、思い切り興奮してもらえる舞台にします。この劇場をもっともっと好きになっていただきますよ!」
佐渡の熱い思いがあふれる言葉通りの舞台だった。華やかだった。ものすごく楽しかった。公演回数は追加公演を含め全12回。観客動員数は約2万人。通常のオペラ界では考えられない数字だ。さらに観客の約8割がオペラ初心者!この快挙に全国のオペラ関係者は誰もが驚嘆し拍手を送った。かくして芸術文化センターの『メリー・ウィドウ』は伝説となった。
【佐渡芸術監督のこだわり】
開館から16年、佐渡は夏のプロデュースオペラで多彩なプログラムに次々と挑んで来た。「その中でも広渡さんと作った08年の『メリー・ウィドウ』は、今思い出しても一番誇らしく、この芸術文化センターならではの世界で唯一の舞台が作れたと自負しています」(佐渡氏)
この劇場で、関西でしか作れないものを。劇場を作る時から「この地域の文化は、宝塚の歌劇場に元がある」と考えていた佐渡は、宝塚のテイストを取り入れようと”銀橋”を作った。銀橋”とは宝塚歌劇でおなじみの舞台仕様で、本舞台からオーケストラピットを囲むように張り出した幅の狭い舞台。踊り、歌う出演者たちが間近に見え、迫力も伝わる。さらに宝塚OG(前回は平みち)の出演も。
そして「もう1点はお笑いの文化」。前回は桂ざこばが出演し、公使館書記・ニエグシュを演じた。オーケストラピットから登場して客いじりをしたり、アドリブを入れたり。さらに、燕尾服姿の平みちとタップダンスまで披露し、観客は大喜びだった。
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