三木道三が盟友・MINMIと打ち上げる新作「花火」の制作秘話と今後の夢とは

関西ウォーカー

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ジャパニーズ・レゲエ界のパイオニアとして、今の時代にあった新しいモデルを作りたいと語る撮影=木村華子

サンバに魅了されブラジルへ。活動復帰までの12年

――今回「花火」をリリースされるにあたって、2002年に歌手活動を引退されてから2014年にDOZAN11として活動を再開されるまでの期間を経たからこそ、これまでと考え方やアプローチで変化した点についてお聞かせください。

「少なくとも2002年からステージ復帰まで12年…、オリンピックで言うと3回分経ってますからね。年齢も立場も変わっているので、いろんなことが変わりました。例えば、最初に引退するまでは、必要最低限の音楽の知識だとかを持ち合わせずにやっていたところがあったんです。それがその後、僕もプロデューサー的になって、制作全般のことをみる責任もあったので音楽の勉強を最低限しました。そこで得た知識などを生かして、画像から音楽を自動作成するアプリ『mupic』の開発することに繋がったり。あとは、サンバの修行をしてみたりね」

――サンバですか?

「2002年に日本と韓国で共催した、ワールドカップの決勝を横浜スタジアムに観に行ったんですよ。その時に、ブラジルの応援団を生で体験したり、帰りの電車がサンバトレインみたいに盛り上がっているのを目の当たりにして最高やなと思って、2・3ヶ月後にブラジルに行ってリオデジャネイロのカーニバルに行ってみたんです。そしたらもうサンバの歌詞にハマっちゃって、後からリズムやコード感の魅力にも気付いて、『オレ、遠回りしてたかも』とサンバにのめり込むことになったんです。それから、2年ぐらいはサンバしか聴けなくなったんですよね」

――すごいフットワークですね!

「それから、今度はカリブ海にあるトリニダード・トバコにもカーニバルがあるということで行ってみたんです。そのトリニダードのカーニバルで流れていた音楽が、今回の『花火』のベースとなるソカという音楽なんですよ。そっからもう、ソカにのめり込んでそこから2年ぐらいソカしか聞けない時期がありましたね。ちなみにトリニダードは、僕のやってきたレゲエの本場であるジャマイカと同じカリブ海にあるので、その影響を受けていて。ラガソカ(ダンスホールレゲエから影響を受けたソカ)と言っていいような、ミックスされたジャンル感の曲もあります。それから日本に帰ってきてから、ブラジル人に『リオのカーニバルとも違う、オリジナルなカーニバルだった』と報告したら、ブラジルにも同じような音楽やカーニバルのスタイルがあるよと聞いて。リオの北の方にある、そのバイヤというところのカーニバルにも行ってみたりしました。リオ、トリニダード、バイヤが3大黒人カーニバルなんですって」

――サンバ修行からソカを学び、今作にも繋がっていくことに。ちなみに、サンバの歌詞のどういうところを好きになったのですか?

「レゲエって、ラブ&ピースを連想する人が多いんですけど、実はぜんぜんそんなことないんですね。ラブ&ピースも歌うけど、日本で浸透していたイメージはどちらかというと昔のカリフォルニアのヒッピーの印象だと思うんです。僕らがやってきたラップスタイルのダンスホールレゲエはというと、もっと日常の会話の中で下ネタとか武勇伝とか、下品であったり暴力的であったり、差別なところもある男同士でヤイヤイ言うてウケる話がメインなんですよ。今でこそ廃れましたけど、当時は差別的なテーマも多かったですからね」

――日本で持つレゲエの一般的な印象と全然違いますね。

「それに比べて、リオのカーニバルは市が開催している国際的なイベントで、規制もあるため歌詞に暴力性や下品さが全然ないんです。なので黒人の苦難の歴史や愛国心、各国の偉人を称える歌詞などポジティブな歌ばかりですばらしいなと、好きになりました。トリニダードのソカのカーニバルの音楽だからか、アガろうとか踊ろうとかポジティブな歌ばかりです」

――音楽的には、サンバやソカ、レゲエは近いところはありましたか?

「共通点は、16ビートのダンスミュージックだということと、歌い手の声が凄まじいということとかかな。あとは、ループ音楽というところですかね。違いは、ジャマイカのレゲエは、うねるようなベースが特徴的なんですが、サンバはベースがなくて太鼓。それを聴いて、ベースは太鼓の代わりに生まれたんだなと再認識できたりもしました。その他にも、とはいえ、サンバはやはりジャマイカのレゲエとかなり違うカーニバルのスタイルなので、それにハマっていた僕は、なかなか元のレゲエミュージシャンに戻れなくなっていたんですけど、ソカを経由したことでカリブで繋がり、新しい世代のレゲエもカッコ良いのが色々あって、これなら自分もまたやりたいなと思えて復帰できました。レゲエミュージシャンとして再始動してみるまでに12年かかりましたね。その間に、体の不調とかもあったんですけどね。音楽的にはそんな変遷がありました」

「この取材風景も『Pococha』で配信したらよかった!」と、三木道三(a.k.a DOZAN11)さん撮影=木村華子


――今後は、サンバを取り入れた音楽やライブをされる可能性も?

「レゲエの次は、今度はサンバを日本に持ってきたいなと思っていました。だけどなかなか実現できなかったのは、クラブミュージックでターンテーブルを使うレゲエに比べて、サンバは生演奏かつ打楽器隊だけで100人ぐらいで演奏するんです。僕が行った時は、1チームで多くて4000人がパレードをするような規模なんですよ。楽しみ方の規模が違いすぎて、なかなか日本であのスケールを再現するのは難しいなと思いました。とはいえ、サンバやソカに触れたのは、リズムの取り方とか自分の音楽考察の中でたくさん吸収できたので、それが今活きていると思います」

ジャパニーズレゲエのパイオニアとして新しい道を提示

――今作はもちろんですが、今後どんな音楽をリリースされるのか、ライブをされるのかとても楽しみです。

「どうなっていくのか自分でもまだわからないです。新型コロナが流行してから、ライブが全部なくなって。それもあり『Pococha』を始めてみたり、その前にはYouTube Liveやインスタライブで発信していたんです。同時に、去年の春頃から暖かさを感じるとあちこちがピリピリ痛くなる病気が発症したんですよ。コリン性蕁麻疹といって、アセチルコリンという汗をかく物質に反応して起こる症状みたいなのですが、車で外に出た時も痛くて運転できないような状態で。駐車場に向かうだけでも痛くて、ライブどころか日中は移動すらできないドラキュラみたいな生活をしないといけない状態になったんです。これで『また引退するしかないか』とも考えたんですが、音楽もさらに好きになって知識もついてきて、今度引退したらもう復帰は難しいだろうと思うとそれは嫌で。それで、オンラインでできることを始めて今に繋がっています」

取材現場までの道中も配信していたそう。自然体にリスナーさんと交流する姿が印象的撮影=木村華子

撮影風景を配信して、リスナーさんとコミュニケーションする場面も撮影=木村華子


――ライブ配信に力を入れられてるのには、そういった経緯があったんですね。

「最初は、やったことないけど広瀬香美さんみたいにYouTubeで弾き語りをあげてみたいな、と思ったんですが、弾き語りのやり方があまりわからなくて(笑)。その練習から配信してみたら投げ銭をいただけて、あれ?これ仕事になるやん、と。そのうち『Pococha』を知り、『Pococha』のランキングもガーっと上まで上り詰めたので、後輩たちにも教えてあげて。彼らも子供がいたりするけどライブがないから、『どうしてるんや。大丈夫か?これやってみ。可能性あるぞ」とセーフティーネットとして勧めて回って、今はレゲエ界でも『Pococha』ブームになってます」

――今の時代にあった新しい音楽活動のモデルになりつつあるのですね。

「僕は仕事になるかわからなかったジャパニーズレゲエを始めて、仕事になるまで広めてメジャーにしたひとりでもあるので、日本のレゲエ人の中では僕がほぼ最年長なんですよ。この先の歴史もなければ新しいビジネスモデルもまだないんです。だから、新しいモデルを作って少し後ろの世代に道を作りたいなという思いもあります。もちろんもっと若い新世代もいろいろ登場していてその人たちの行き先までは示せませんが。例えば今人気が出てきてる女性アーティストの775とか、『よってらっしゃい』という曲で〈ラジオで聞いた三木道三 4歳児の頃からいい女〉と歌っていて、その歌詞に合わせた動画が、TiKTokでバズったりもするから面白いです。僕はできたスタイルやポジションを維持するより、これ新しいな、おもしろいな、と感じたらどんどんそっちに向かっていっちゃいます。そもそもレゲエが、当時は一番新しくて面白いものだったんです。今は『Pococha』で配信しながらの弾き語りライブで全国ツアーを回ってみるというのが、ひとつの夢です」

――配信をしながら、生でも聴けるような?

「そうですね。チケットを買って入場してくれた人に、席で『Pococha』を付けてもらって、楽屋にいる僕がステージに立つまでも見られる。もちろん、会場に来れない人も全国、それどころかアメリカやジャマイカからでも『Pococha』を通して参加してもらえて、会場の人もオンラインの人も投げ銭を投げて応援できたり、僕もコメントやリクエストに応えられる、双方向のライブがあっても面白いなと。収益もダブルで上がるし、アーティストとして弾き語りは憧れでもあり楽しいので。こういう時代だからこそ、後輩たちにこういう新しいライブの形もあるよと伝えていきたいです。そうやって、日本のレゲエ界で新しい活動スペースを作っていくような活動もできたらいいなと思ってます」

『Pococha』を使って、弾き語り全国ツアーをするのが夢だと語る三木道三(a.k.a DOZAN11)さん撮影=木村華子


取材・文=大西健斗
撮影=木村華子

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