【第3回】東京オリンピックがつなぐ、天ぷら専門店「天寅」の真摯な想い
東海ウォーカー

円頓寺商店街の脇道、ひっそりとたたずむ天ぷら専門店「天寅」。1964(昭和39)年の創業当時は、天ぷらの知名度が低く、なかなか苦労したのだとか。
真心を込めた仕事が生んだ「天ぷら専門店」

「創業した年は東京オリンピックがあったので覚えやすくて」と話すのは、店主の山田一三六(いさむ)さん。生まれも育ちも円頓寺界隈で、名古屋駅や大阪、東京の天ぷら専門店での修業を経て、この地に店を開いた。

「ここはいわゆる下町でね、天ぷらの専門店なんてなかったんですよ。最初は苦労したな。天ぷらをよく知らないから、天つゆを飲んじゃうお客さんとかもいてね」。当時は“天ぷらは総菜の一品”というイメージが強かったそう。

店内には、創業当時からの看板「天通心真」が飾られている。真心を込めて一生懸命やれば想いは天に通じる、という意味の漢文だ。
「昔からずっと試行錯誤の連続。主人は本当に努力しましたね」と話すのは、奥さんの八重美(やえみ)さん。その真摯な仕事ぶりが、天丼をはじめとした人気料理につながっているのだろう。
長年の職人技が光るサクサクの天ぷら

エビ3尾に日替わりの魚、ノリ、大葉がのった食べ応えある「特天丼」は、一番人気のメニュー。長年の勘を頼りに最適な温度とタイミングで揚げられる天ぷらは、抜群の食感だ。創業以来継ぎ足されている甘いタレと食材が相まって、口いっぱいに温かな旨味が広がる。

店主は「タレは自分の舌で味わってなんぼ。長年の感覚ですね」と話し、とくに継ぎ足す調味料を量ってはいないという。揚げる工程も同様に、「揚げる時間は衣の色など目で見て判断しますね。というより、体が自然と動くんですよ」とのこと。これぞまさに職人技である。
奥さんも「タレは少しだけ濃いめかな。名古屋の人向けにしています」と教えてくれた。
長く続けることで出会えたお客さんに感謝

地元・名古屋の客のなかには、孫の代まで食べに来てくれる人もいるとか。また、県外からの来訪者も多く、出張のたびに来るリピーターも。「そんなお客さんに出会えたということは、長くやってきたこと自体が一番よかったのかな」と奥さんは話し、店主も「感謝の気持ちでいっぱいだわ。お客さんにはなんべんでも“ありがとう”と言いたいですね」と話した。

食材は毎朝、柳橋中央市場で仕入れている。そのあとに少し散歩をして体を整えてから仕込みに入るのが、店主のルーティーンだ。「散歩すると体を動かしやすいんだわ。店の営業だって自分の健康のためもあるからな」と店主。
「2020年の東京オリンピックの年まで働くぞ!」と、現在の大きな目標を宣言。健康のためにも働き続けたいそうだ。

昭和から平成の東京オリンピックへ。健康にも気を付けてもらいながら、その先も続けてほしいところである。【東海ウォーカー/礒永遼太(エディマート)】
礒永遼太(エディマート)
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