「巻き肩」の改善には、着物を脱いでヒゲダンス!?伝わる図解や指導が人気のHiromi流 体の使い方とは
東京ウォーカー(全国版)
理学療法士の経験から「一生使える体へ」をコンセプトに活動しているHiromiさん。パーソナルトレーナーとして1対1で運動や姿勢などの指導を行っているほか、体の使い方を学ぶオンラインサロンの運営など精力的に活動中。Twitter(
@Hirominpp
)、Instagram(
@hirominpppp
)で発信する体の使い方は、図解などがわかりやすいと好評を得ている。
理学療法士として勤務している時に、延べ3000人以上の体を診てきたHiromiさん。「どうしてこんなに悪くなってから病院に来るんだろう、病院に来る前にもっと簡単にできる対策がたくさんあったはず」という疑問から、情報発信の大切さを知りSNSを始めたという。
HiromiさんのSNSのポイントは、ふだん気になっている症状を取り上げてくれるだけでなく、動かすことを意識する方向を矢印で入れたり、体の内部(筋肉や骨など)をイラスト化したりしてわかりやすく解説されていること。「(図解化した)直接のきっかけは、パーソナルトレーニングのお客様に言語表現ではまったく伝わらなかったことと、たまたまTwitterやInstagramで矢印を使ったストレッチ動画を投稿したところ、反応がよかったこと。でも一番大きいのは、体が楽になる使い方をもっと伝えたい!という気持ちですね」
巻き肩に対する図解が反響を呼ぶ
最近ではスマホを見ている時間が増えたこともあってか、Twitterにアップした「巻き肩」の解消・予防法に注目が集まった。Hiromiさんのお客さんや講座を受ける方も、巻き肩への関心は強いという。そこで今回は、巻き肩に焦点を当ててHiromiさんに説明してもらった。
Hiromiさんによると、巻き肩の弊害には以下のようなものがあるという。
1…猫背、スマホ首、肩こり
「関節の運動連鎖と言って、連鎖的に姿勢が崩れる仕組みがあります。そのため、巻き肩を起点にして、猫背や頭が前にいく姿勢になりやすく、その不良姿勢は首〜肩まわりの筋肉が凝る原因にもなります」
2…五十肩、肩の痛み
「巻き肩は肩甲骨の位置がずれており、腕を動かしたときに肩関節がスムーズに動きにくくなります。その状態が長年続くと、少し腕を動かすだけで腱が挟まりやすく、腕を上げる可動域が狭くなり、五十肩や肩の痛みにつながります」
3…デコルテ、脇後ろや二の腕のたるみ、肩幅が広く見える
「巻き肩により、胸の筋肉や皮膚が縮み、胸がたるんできます。脇の後ろや二の腕後ろの筋肉を使いにくい姿勢になるため、そのあたりの皮膚もたるみがちに。さらに、後ろ姿の印象も変わってしまいます」
では、どんな習慣によって巻き肩になってしまうのか。Hiromiさんが挙げてくれたのは次の3つの「ない」だ。
1…日常でいい姿勢を意識する瞬間が1回もない
2…肩周りをストレッチする習慣がない
3…普段使いにくい筋肉を筋トレする習慣がない
上記に当てはまると思う人は、Hiromiさん流の体の使い方をチェックしてみては。
巻き肩に効く体の使い方は?
Hiromiさんに、巻き肩に効果的な体の使い方を聞いてみたところ、「ひとことで言うと『着物を肩で後ろへ脱ぐ』です」。どういうことか、試してみよう。
具体的には、小胸筋が縮まないようにすること。小胸筋とは鎖骨を首の下から肩に向かって触っていき、端っこから指二つ分下にあるポコっとした骨と、そこから胸の中心に向かって引っ張った線をイメ―ジした時の真ん中あたりをつないだ筋肉。ここが縮むと肩が前に引っ張られてしまう。逆にこれを縮まないように後ろに伸ばすには、「羽織った着物を脱ぐよう」なイメージで動かすといい。
ほかにもポイントがある。
1…脇後ろへ力が入る「ヒゲダンスの力」
ヒゲダンスのようなポーズをして手の平を地面と平行にして、小指側に力を入れながら下にプッシュするような動きをすると、脇の後ろが硬くなる(力が入る)。これが広背筋。この筋肉を使い、左右の肩甲骨をお尻の中央に向かって(V字形に)引っ張るようなイメージで力を入れる
2…肩の付け根後ろへ力が入る「手先ではなく根元」
肩甲骨の上と下に筋肉がある。その筋肉を縮めるように動かすと、肩の付け根が後ろにぐるりと外旋する。手先で回すのではなく、肩の付け根を外旋するのが正しい。
3…胸は張らない「肘の後ろに背中」
肋骨の下端を後ろに引き込むと姿勢が整えやすい。ポイントは、体を横から見た時、ひじのしわの後ろに背中が見えるように。胸を張ってしまうと、ひじが背中より後ろに行ってしまうのですぐわかる。
この動きを習慣づけることで、巻き肩はだいぶ改善していくはずだ。
わかりやすい表現を心掛ける
Hiromiさんが図解や伝わりやすい表現にこだわる理由について語ってくれた。「理学療法士同士の会話では、専門用語で意思疎通が簡単にできていました。そこで『専門用語で言った方が、わかりやすいはず』と思い込んだんです。でもパーソナルトレーニングを始めたら、お客さんにはなかなか伝わらない。自分の表現力の低さにかなりショックを受けました」。そこで、多くの人に伝わる表現方法を模索。
「毎回資料を作っては図解や言語化を繰り返し、お客さんの反応を見て試行錯誤しました」。そのかいあって、フォロワーからは「意識して動かす部位が明確でめちゃくちゃわかりやすいです!」と喜びの声が多数もらえるようになった。「体の動かし方を理解するには『動かす方向』や『体の内部のイメージ(ボディイメージ)を高めること』が重要なポイント」とか。そのため図解は非常に役立つそうだ。
ほか、SNSで紹介するエクササイズにも工夫がある。「数種類を目的に応じて順番に行った方が、より効果的なものも実はあるんです。ただ、数が多いと続かないケースが多い。『一生続けられること』を最優先にするには、タスク量を減らすことが重要だと思っているので、むしろ日常の合間にできる『1つのエクササイズ』やちょっとした意識付けの提示を心掛けています」
「エロンゲーション」の意識を広めていきたい
Hiromiさんの今後の目標は「エロンゲーションを世に浸透させる」ことだそう。「エロンゲーションとは重力に逆らって背骨を頭方向へ引っ張ること。聞き慣れない言葉の浸透が、体の使い方を知るきっかけになればと思っています」。Hiromiさんについていけば、これからも体のよい使い方を知ることができそうだ。
そして「今後も活動の軸は『一生使える体へ』です。まだこの思いを届けられていない方々に、今後も伝え続けていきたいと思います」。HiromiさんのSNSを見ると、「ふだん体をどう使うか」を意識することの大切さを知ることができる。痛くなる前にぜひ見てほしい。
取材・文=澤田佳代
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