930万件以上のご家族を撮影　子ども写真館として人気であり続け、記念撮影を文化にできたワケ

お宮参り、七五三、成人式など、今や大切な記念日に利用することが当たり前になっている写真スタジオ。子ども写真館大手で知られ、商業施設でもよく目にするスタジオアリスは、昨年に過去最高営業利益を達成し、今年で創業から30年を迎えた。今や当たり前になっている記念撮影はなぜ文化となったのか、子ども写真館として人気であり続ける理由は何か、スタジオアリス代表取締役社長の牧野俊介さんに話を聞いた。

ーー子ども写真館はどのようにして世の中に浸透しましたか。

元々日本の伝統文化には、お正月や七五三などの家族揃って記念写真を撮るという習慣があり、暮らしの中に写真館がありました。しかしアマチュアカメラの発達と共に暮らしの中から写真館が消えてしまいました。それはお客様から見て、閉鎖的で入りにくい、衣装も用意しなければならない、値段がいくらかわからない、写真の出来上がりがわからないなど、写真館で写真を撮ること自体、格式が高く感じられていたことが背景にありました。

スタジオアリスでは、お子さまにフォーカスし、入りやすいオープンな店舗づくりや、普段着でご来店いただいても記念写真が撮れるように工夫しました。豊富な衣装をご用意し何着着ても無料、着付けやヘアセットも無料で行い、多ポーズ撮影し、その中からお客様のお好みの写真をその場で選んでいただき、お手ごろ価格で1枚からご購入いただけるシステムにしました。そういった点がヒットし、世の中に浸透してきたのかと思います。また、一店でも多くの店が必要であると考え、写真業界では珍しかったチェーン展開をしてきました。

ーーお客様の撮影の仕方や衣装について、昔から変化したことはありますか。

カメラが身近になり撮影機会が増えたことで、背景の種類もバラエティ豊かになりました。さらに進化を続け、現在では立体的で奥行の感じられる造作や光あふれるスタジオで、ナチュラルな雰囲気の写真も撮影していただけます。世の中の動きやニーズと共に、スタジオも大きく進化しています。フィルムカメラからデジタルカメラに変わったこともその１つです。

また、豊富な衣装も洋装、和装ともに、お子さまの年齢や性別によって、デザインや小物もトレンドなどを取り入れています。時代の変化に対応できるよう、毎年新作を導入し、定期的に入れ替えを行っています。

ーーお客様が写真館自体に求めることは昔と今とで変わったことはありますか。

生活習慣が変化しても、我が子のハレの日の記念日をお祝いしたいというご家族の気持ちに変わりはありません。弊社が実施した赤ちゃんのお祝い行事調査では、昭和親と令和親で傾向を比較し、令和親の方が写真館、フォトスタジオで撮影する傾向があることが明らかになりました。近年ではSNSなどの情報共有により新たな記念撮影の機会も増えています。弊社でもマタニティフォト、ニューボーンフォト、ハーフバースデー、２分の１成人式など、お子さまが大きくなった時に成長を感じられる記念写真などの需要が増えています。

ーー創業から30年　子ども写真館として人気であり続けた理由は何でしょうか。

お子さまの“なりたい”“一緒に撮りたい”という夢を叶える為、ディズニーやポケットモンスターなどの各社とのライセンス契約により、人気キャラクターの衣装や撮影メニューをご用意してきました。これらのキャラクター撮影ができるのは、スタジオアリスだけのオリジナルです。また、着付を終えたお子さまが着付け室から登場するシーンを演出するデビューステージを設置したほか、キッズカメラマン体験など、ご家族の思い出になる体験ができるよう工夫もしています。

スタジオアリスでは約930万件以上のご家族に撮影いただき、ありがたいことに成長の節目ごとに撮影にお越しいただくリピーター様が全体の約7割いらっしゃいます。そういった成長の節目ごとにご撮影いただいたお写真をいつでもどこでもスマホでみられるポケットアリスというアプリもご用意しています。プリントの焼き増し注文はもちろん、離れて暮らすおじいちゃんおばあちゃんともシェアしていただけるサービスとして、お客様にもご好評いただいています。

ーー今後注力したい事業を教えてください。

成人式の振袖レンタルと前撮り撮影をセットにしたふりホサービスです。調査したところ、実際に成人式に参加している割合は約6割にとどまっており、約4割の方が何らかの理由で成人式に参加していないことがわかりました。成人式という日本の大切な文化を、より多くの方に楽しんでいただくために、サービスを充実させていきたいと考えています。

スマホの普及、新型コロナウイルス、少子化など生活習慣が変わり、ライフスタイルはこれからも多様化するが、記念日をお祝いしたいという家族の気持ちは変わらない。これからもたくさんの家族の記念写真を、スタジオアリスが残してくれるだろう。