ランドセル業界に新風!アウトドアメーカーのモンベルが作る軽くて丈夫で多機能なランドセル「わんパック」に熱視線
東京ウォーカー(全国版)

男の子は黒、女の子は赤というイメージはもはや昭和。現在のランドセルはカラーバリエーションもデザインも豊富。自分の子どもに合ったランドセルを選ぶことを指して“ラン活”という言葉が生まれるほど、ランドセル業界は活気に満ちている。一方で、教科書の大型化やパソコン、タブレット使用のため、小学生の荷物が重量化していることも話題に上っている。ランドセルメーカーのセイバンが行った2018年調査によれば、重い日にはランドセルそのものの重量も含めて約6キロの荷物を背負うことも。そのため、肩や腰への負担を訴える小学生も少なくないそうだ。
そんななか、総合アウトドアメーカーのモンベルが発表した通学用バックパック「わんパック」が注目を集めている。2021年に富山県立山(たてやま)町からの依頼で作られた通学用バッグだが、反響を受けて2022年12月から一般販売もスタートし、今期分は早々に完売している(次回入荷は来春の予定)。なぜ総合アウトドアメーカーがランドセルを作るにいたったのか、モンベル広報部の黒瀬美保さんと立山町の担当者に話を聞いた。

包括連携協定を結んだ富山県立山町の取り組みにモンベルが賛同

そもそも、なぜ立山町はオリジナルの通学用バッグの開発を考えたのか。
立山町にその狙いを聞くと「小学校に通う児童が使用している“ランドセル”は新入学用品の中でも高額であることから、入学準備をする保護者などの経済的負担を軽減したいと考えました。また、軽量化によって児童の身体的負担の軽減も考慮し、新入学児童に対する通学用リュックサックの無償配布について令和3年度から検討し始めました」と回答が寄せられた。
そこに、立山町と包括連携協定を結んでいるモンベルが手をあげた形だ。包括連携協定とは、自治体などが抱える課題に対し、企業などと連携・協働することで解決を目指す協定のこと。モンベルではアウトドアを基軸とした新たな取り組みとして、地方自治体や企業、大学などさまざまな団体と協定を結んでいる。
「立山町との関わりは長いものになります。モンベルでは『モンベルクラブ』という会員向け組織があり、入会すると、買い物や提携施設で特典が受けられます。そこで、アウトドアを楽しむフィールドがある地域と連携し、地域での優待を受けられるようにしています。絶景に恵まれた立山町は非常に魅力的なフィールドで、“フレンドタウン”として登録していただいています。そこからさらに発展して2017年10月に包括連携協定を締結するにいたりました。協定には7つの取り組みがあり、そのなかには『子どもたちの生き抜いていく力の育成に関すること』というものがあります。ランドセルの開発はそこにマッチするものでした。モンベルではすべての商品をイチから自分たちで開発しています。リュックサック・バックパックの開発もしてきましたので、そのノウハウが生かせるということで立山町のプロポーザルに参加しました」と黒瀬さん。
プロポーザル案件ということで、モンベルの提案が立山町の心を射止めた形になるが、決め手はなんだったのだろうか?
立山町に聞くと「アウトドア用品の製造で培ってきた経験や技術を生かし、従来のランドセルと比較して非常に軽量で、またパソコンやタブレットを含む学習教材すべてが入るなど収納面でも工夫を凝らし、使いやすく、6年間の使用に耐える丈夫な通学用リュックサックという立山町が求めるものを充分に考慮した提案であったためです」と、回答してくれた。
軽さ、丈夫さ、機能性、コスト。すべてのバランスを見極めたモノ作り
こうして「わんパック」の開発が始まったが、プロポーザル案件がゆえの大変さがあったそう。
「通常、商品の開発から販売まで2年以上かかるのですが、『わんパック』については、2023年度入学のお子さんに配布する必要がありましたので、スケジュールは非常にタイトでした」と語る黒瀬さん。
それでいて、児童に負担がかからない軽さ、長く使える丈夫さ、児童が使いやすいもので、従来のランドセルより低価格…。求められるクオリティを超えるため、すべての要素に対して、試作を重ねていったそう。なかでも特徴的なのは、ハンドルを引くことで大きく開閉ができるダブルファスナー部分だろう。


「教科書を出し入れしやすい自立した形にするためと、子どもが中を見やすくするために、大きく開くダブルファスナーの形を新しく考えました。この点は今までモンベルで作ってきたバッグパックとは全く違う構造です。生地は雨や水濡れに強いものを採用しています。ただ、開閉口のファスナー部分は防水性の面でどうしても心配が出てきてしまいますので、その部分をカバーできるようにレインカバーを付けました。レインカバーはサイドポケットに収納できるようにしているので、急な雨にも対応できるようになっています。ほかにも、反射テープをつけるなど、子どもたちのニーズに細かく対応しています」

特にこだわった点を聞くと「どこか1カ所にこだわったということはなく、すべてのパーツに対して試作を重ねています。難しかったのは、丈夫さと軽さ、価格面のバランスをとることでした。モンベルで作っている登山用バックパックでは、例えば本体に210デニール、底部に420デニールの生地を使用しているものがありますが、これに対して、今回、『わんパック』では840デニールの生地を使用しています。糸を太くすれば耐久性は上がりますが、反面、軽量さは失われますから、そのバランスの見極めが大変でした」と黒瀬さん。
しかし、苦労の甲斐あって「わんパック」を贈られた児童、保護者たちからは好意的な反応が届いているのだそう。

「2022年10月11日に行われた贈呈式では、子どもたちの笑顔や『青色もかっこいい』『なんでも入りそう』『学校が楽しみ』などの声に、受け入れてもらえた安心感を感じました。また、ある保護者からは、『うちの子は肩が弱いので、こういった(軽い)ランドセルはうれしい』というご意見もあり、手応えを感じているところです。『わんパック』によりランドセルの使用を制限するものではありませんが、ぜひ多くのお子さまに使っていただければと思います」と立山町も手応えを感じているようだ。
贈呈式のニュースはSNSでも話題になり「大人だけど使ってみたい!」というような声もあがっているが、現在のところ「わんパック」はあくまでも小学生向けの製品。「反響の大きさに社内が追いついていないです(笑)」と語る黒瀬さんだが、要望の声は届いているとのこと。今後、中高校生向けや大人向けの製品開発もあるかもしれない。
いわゆるランドセルとは大きく見た目が異なる「わんパック」だが、そもそも昭和の頃と比べると、カラーリングやデザインなどランドセルの選択肢は増えてきている。その中に、経済的にも機能的にも優れた「わんパック」という選択肢が増えるのは、ラン活に悩む保護者にとって朗報となるのではないだろうか。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・1カ所にこだわるのではなく、全体的なバランスを見る
・使用者のニーズを細かく検討し、実現化していく
取材・文=西連寺くらら
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