【漫画】「怖いけど…悲しい」嫌いだった“死んだ娘”の帰宅。恐れる母と祝う娘がすれ違う短編ホラーに解釈集まる

東京ウォーカー(全国版)

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実家を離れた娘が突然帰ってきた。自身の誕生日を祝うためにわざわざ帰省したのかと思う母だったが、扉越しの娘は「今日は何の日か覚えてる?」と問いかけ――。「誕生日」と「命日」、切り離せない二つの節目に帰ってきた“死んだ娘”を描いたホラー漫画に、Twitter上で7600件超えの「いいね」とともに「怖いけど…悲しい」「なんて切ない話なんだ」と反響が集まっている。

母の誕生日に帰省した娘。だがそれは、亡くなった義理の娘で…。誕生日で命日の邂逅が恐ろしくも切ない画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


話題を呼んだのは、「少年サンデーS(スーパー)」および「サンデーうぇぶり」で連載中のホラーオムニバス漫画『僕が死ぬだけの百物語』(コミックス第5巻は2023年1月12日発売)の一篇。恐怖感を与えるホラー作品にあって「切ない」「悲しい」という感情を読者から引き出した同エピソードへの思いを、作者の的野アンジ( @matonotoma )さんに訊いた。

突然の娘の帰省。その正体は死んだ義理の娘で…物悲しいラストに反響

的野さんが1月、自身のTwitterに「死んだはずの娘が、帰ってきた。」というキャプションとともに投稿したエピソードは、「ただいま~」と、実家を離れて久しい娘が突然帰宅するところからはじまる。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(2/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


すぐにトイレに駆け込んだ娘に「アキちゃん…!?」と驚きながらも、普段は連絡をくれないアキが自分の誕生日に帰ってきてくれたことに喜びを隠しきれない母。だが、扉の向こうの娘は、今日が「ナツの命日だよ」と告げる。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(4/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


その家にはかつて、実の娘であるアキだけでなく、夫の連れ子であるナツがいた。血の繋がらないナツに愛情を注いだという母だが、アキが生まれた後は家でも学校でも暴れまわり、悩みの種となっていた。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(5/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


「ナツのこと今も嫌い?」と声だけで問う娘に、「…嫌いよ、昔から」と母はこぼす。そのナツは母の誕生日と同じ日に交通事故で亡くなったが、そのことも自分に対する当てつけではないかと疑っていた。

その話を聞いて、「ナツはお母さんのこと好きだったと思う」とつぶやく娘。そして、誕生日に毎年花をプレゼントしていたこと、亡くなった日の夜も花屋に急いでいたことを、まるで見てきたかのように語りだしたのだ。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(8/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


動揺する母の前に姿を現したのは、セーラー服姿の少女。帰ってきた娘の正体は、アキではなく亡くなったナツだったのだ。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(10/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


死者の訪れにうろたえる母だったが、ナツの返答は「ただお祝いに来ただけ」。自分にとっての母親は実の母ではなく育ての母のあなただけだったと告げるナツに、彼女の死後も重荷になっていた母は「解放してください」と懇願する。

するとナツは、ドサッと何かを落とした音とともに忽然と姿を消してしまう。恐る恐る近づいた母が見たのは、床に横たわった美しい花束一つだけだった。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(13/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


「お話を読んだあと、自分がどう思うのか」解釈揺れる“問いかけ”のような演出

自身の誕生日、そして義理の娘の命日に起こった死者との対話を切り取ったエピソード。母の視点に立てば、自分を嫌っていただろう義理の娘が死後、突然現れたことへの恐怖を描いた一幕だが、一方で「恨んだことなんて一度もない…」と、ただかけがえのない母の誕生日を祝おうとした娘の気持ちの切実さが胸に刺さる一遍だ。

Twitterではユーザーから連れ子の「ナツ」と実の娘の「アキ」の名前の関連性から当時の母の心情を推察したり、スイセンと思しき花束の花言葉を引き、ナツの気持ちを読み解こうとするコメントが寄せられたほか、あくまで幽霊が精神的に追い詰めようとする行為と解釈する読者もいるなど、受け止め方にもさまざまな形が見られた作品となっている。

僕が死ぬだけの百物語 第三十五夜「ハッピーバースデー」(12/13)画像提供:的野アンジ(@matonotoma)


こうした反響について、的野さんは「今回のお話は台詞も多く、派手な演出がないにも関わらず最後まで読んでくださる方が沢山いて驚きました。登場人物たちそれぞれ目線での感情を汲みとって考えてくれてありがたかったです」と話す。

エピソードとしては「亡くなったはずの人が帰ってくるというシチュエーション」自体が持つ恐怖をベースにしたそうで、そこから「母と娘、二人の関係や人間性がわかるお話にしたいと思い、今回のお話ができました」とのこと。

的野さんが描く『僕が死ぬだけの百物語』の作中には、本作のように読者からさまざまな解釈が集まる“問いかけ”のようなラストがしばしば描かれる。的野さんは「お話を読んだあと、自分がどう思うのか。他の人がどう思うのか、考えたり知ったりするのが楽しいと思うので、いろんな解釈が集まると私も嬉しいです」と、答えを明示せず読者ごとの受け止め方が広がることへの喜びを教えてくれた。

取材協力:的野アンジ(@matonotoma)

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