タザキの投資本案内「ブラック・スワン」/過去に例がないから今後も大暴落は起こらない、とは言い切れない理由

東京ウォーカー(全国版)

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こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ( @tazaki_youtube )と申します。

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。

その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。本日は、 「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質(上・下)」(ナシーム・ニコラス・タレブ著/ダイヤモンド社) という本をご紹介します。

ブラック・スワン[上]ダイヤモンド社

ブラック・スワン[下](ダイヤモンド社)


「ブラックスワン」を直訳すると「黒い白鳥」となりますが、本書では通常あり得ない事象や予測不可能な出来事のことを指しています。特に、 投資の世界で言えば、予想外の大暴落を指します

本書におけるブラックスワンの定義は以下の3つです。
1…異常な出来事であること
2…極めて重大な影響を与えること
3…人間はその出来事が起こる前には想定できなかったと考え、その後に適当な説明をつけて筋道を立てようとすること

本書では、通常ではありえない出来事が起こった際に、その心理を学ぶことが重要であると述べています。

ブラックスワンが生まれる背景には、人類の進歩であるグローバル化や拡張可能性の誕生が大きな影響を与えています。

かつては、歌手や俳優などのエンターテインメント業界の人々は、その場で観客に向けてパフォーマンスを行うことが一般的でした。しかし、CDやインターネットの発展により、自分たちの作品を世界中に配信することが可能になりました。

他にも、銀行口座の残高、企業規模やSNSの影響力など、人間が作り出したものには、大きな格差が存在しているということもあります。

このような状況では、非常に大きな影響力を持ちながらも、通常の予測方法では予測が困難な出来事が起こりやすいとされています。

ブラックスワンは前触れもなく、突然起こる

ある場所で七面鳥が飼われているとします。この七面鳥は、生まれて以来、人間は毎日餌をくれるし、住む場所もくれる、すごく優しい生き物だと思っています。

グラフの縦軸が幸福度だとすると、日数が経つにつれどんどん幸福度が上がっていっています。しかし、アメリカのサンクスギビングデーの日に、突然、この幸福度がゼロになってしまいます。

図1 「人間は優しい」という七面鳥の認識は何の前触れもなく裏切られる


七面鳥にとって、364日目までにこの365日目に起こる出来事の前触れや証拠はまったくなかったということになります。

人間も同じで、過去の実績に基づいて推測をすることによって、失敗してしまうことがあります。ブラックスワンは、過去のデータを参照すると予知できないような出来事のことを指します。例えば、ゴールドマン・サックスのCFOがリーマンショックで 「25シグマ(標準偏差)の出来事が数日連続で発生した」 と述べたそうです(7シグマのイベントでさえ、31億年に1日しか起こらない確率です)。

図2 ありえないほどの小さな確率の出来事が実際に起こる


しかし、 人間という生き物は、「過去に例がない」というだけで、それは「起こらない」と思ってしまう心理的なバイアスがあります

暴落が起こるという証拠がないと言っても、絶対に暴落が起きないと断言することはできません。例え前兆がなかったとしても、暴落は突然起こるかもしれない。そのような心構えと準備が重要なのです。

【講釈の誤り】ストーリーが判断を鈍らせる

続いて「講釈の誤り」という心理バイアスをご紹介します。人は、講釈のついた黒い白鳥を過大評価し、講釈のない黒い白鳥は過小評価してしまいます。

つまり、 それらしいストーリーが付随することで、起こる確率を高く見積り過ぎてしまう のです。

このバイアスは保険の世界でも使われていて、アメリカではテロ保険に対して、普通の保険よりも高い金額が払われているそうです。その理由は、テロに遭う確率が低いにも関わらず、恐怖心やストーリーが付随しているためです。

一方、コロナウイルスの流行を誰が予想していたでしょうか。コロナ以前は、ウイルスの世界的な流行が今の時代に広がることは考えていなかったのではないでしょうか。

ここでの重要な教訓は、 ストーリーのある話を過大評価する一方で、ストーリーとしてありそうもないことだと、確率を低く見積もり過ぎてしまうこと です。

それにもかかわらず、そのような驚くべき出来事が起こったときには、後付けで理由やストーリーを作ることが人間の特徴なのです。

【物言わぬ証拠問題】本当にそのストーリーは正しいのか

「講釈の誤りバイアス」に加えて、注意が必要な心理バイアスに「物言わぬ証拠問題」があります。

たとえば、成功した投資家が自分が成功した理由を語る場合に、心理バイアスが存在しています。

実際には、同じ方法を使って失敗した人たちが多数存在していることがあるのです。ただし、これらの失敗者たちは表に出ることが少なく、その声は聞かれにくいです 。「生存者バイアス」とも呼ばれます。

また、成功者たちが成功した理由を聞いて、理由付けし「説明可能である」と考える心理バイアスも存在します。 実際には運の影響が大きい場合でも、成功した理由を因果関係がある原因として見つけようとする傾向があります。

合理的な思考が悪いというわけではありませんが、「時には説明不可能なことがある」ということを認める必要があります。

そうでなければ、偶発的な恐ろしい出来事(ブラックスワン)に対して十分な準備をすることができません。

どのような出来事にも、想定外の出来事が発生する可能性があることを認識し、備えることが重要だと思います。

偉大な発明は、計画に基づいていない

そもそも人は予想などできないと言われます。

例えば、皆さんの会社でも、5年間の計画や経営計画を立てることが多いと思いますが、筆者はそのような場面を見て、ほとんど無意味だと言っています。予測は不可能であるため、間違った前提をもとに議論を交わしても意味がないのです。

世の中の多くの発明というのは、予定表に基づいて作られたものではなく、全て偶然でできたものが、世の中の素晴らしい発明になっているんです。

昔、フレミングという博士が、たまたま掃除をしようと思っていたところ、それがきっかけでペニシリンという抗生物質を発見しました。

当時、さまざまな伝染病の治療薬となるものだったのです。これもたまたま見つかったもので、このような偶然の成果のことをセレンディピティと呼びます。こういった偶然を生み出す力も非常に重要です。

例えば、科学者に良い発見をさせようと思ったら、ビジネス的にいろいろ計画を立ててしっかりやらせるというよりも、科学者自身の興味や本能の趣く方へ目を向けさせて自由にさせるのが一番良い結果が出ると言われています。

これは科学者に限らないかもしれません。では、なぜわざわざ人は将来予測をしたり計画を立てたりするのでしょうか。これは人間の進化の一面として、もうそうせずにはいられない生き物になっているということなのです。

全ての計画や予想が悪いわけではありませんが、予想をできるわけがない分野にまで予想の得意な専門家たちの予想を信じてしまうのは非常に良くないことです。

その一例として、経済予測をする人や社会科学系の予想家たちの言葉を真に受けてはいけないと警鐘を鳴らしています。

もちろん、全てがそうとは言えませんが、相手が誰であろうとも盲目的に全て信じることは避けるべきです。自分なりの解釈を持つことが非常に大切です。

天気予報など、予想が外れても人生に大きな影響を及ぼすことはありませんが、お金の問題に関しては、人生を狂わせる可能性もあるため、注意が必要です。

この世はブラックスワンに満ちている

この記事の最後に、一つの引用を紹介して結びたいと思います。例えば、過去には9.11のテロのような「ブラックスワン」事件がありました。もし予測して防ぐことができたとしても、その人は英雄になれるわけではありません。

「治療より予防の方がいい」という言葉がありますが、予防に努めても高く評価されることはあまりありません。ブラックスワンが防がれた場合でも、それが気付かれないことが普通です。つまり、 私たちが当たり前の日常を過ごせるのも、過去に誰かが素晴らしいブラックスワンを防いでくれたからかもしれません。

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