コーヒーで旅する日本/東海編|子供から年配者まで集う、コミュニティスペース。「NOBI COFFEE ROASTERS」

東海ウォーカー

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

2022年4月にオープンしたばかりの「NOBI COFFEE ROASTERS」。外観からもかっこよさがにじみ出ている

東海編の第23回は、愛知県刈谷市にある「NOBI COFFEE ROASTERS」。この地域で生まれ育った久米さんが、理容室だった建物をリノベーションして2022年に開業した。「この辺りは昔からの住人に加えてファミリーや外国人も多く住むようになりましたが、人口に対して喫茶店が少ないんです。だから、この建物に出合った瞬間、ここでコーヒーを提供しようと思いました」。そうして、コーヒーをきっかけに、人と人が繋がっていく場所になればという想いから始まった店は、たった1年で地域に欠かせない存在へと成長。街のハブとして機能し、日々新しいことがこの場所から生まれている。

店主の久米伸明さん

Profile|久米伸明(くめ・のぶあき)
1988(昭和63)年、愛知県刈谷市生まれ。幼少期から喫茶店が身近な存在だった家庭で育ち、大学生時代は豆を購入してドリップするのが毎朝の日課だった。また、海外旅行先で浅煎りのコーヒーを知ってからは、興味を持っていろいろなコーヒーを飲むように。コロナ禍で「会社をやめて何か始めたい」と考えていた時に元理容室の物件に出合い、自家焙煎コーヒー店の開業を決意。最新の焙煎機を導入し、約1年間の準備期間を経て、2022年4月に「NOBI COFFEE ROASTERS」をオープン。

昭和レトロな理容室をリノベーション

茶色いタイルやガラスブロックに、レトロテイストが息づく

愛知県刈谷市は、ものづくり王国と呼ばれる愛知の製造業を支える大手企業が数多く集まる街。「NOBI COFFEE ROASTERS」は、JR・名鉄両線が乗り入れるハブステーションの刈谷駅からひと駅離れた、名鉄刈谷市駅から徒歩3分の場所にある。「ここは長年にわたって理容室として営業していた場所でした。店の閉店に伴い建物を取り壊すと聞いたので、『じゃあここでコーヒー店をやろうかな』と思ったんです」と話すのは、店主の久米伸明さん。壊す前に建物の内見をしたところ、すっかり気に入ってしまい、そのまま使わせてもらうことになった。

豆のサンプルやコーヒー機器などを、すっきりと配置

店内に入るとまず目に留まるのが、存在感抜群のアイランドカウンター。造作された下がり天井と合わさり、まるでステージのようなかっこよさがある。その周囲を見渡せば、タイル張りになった一角や壁に添って鏡が等間隔で並ぶ場所があり、かつて理容室だった時の面影も発見。新旧の雰囲気を絶妙にミックスさせた空間に、唯一無二の個性が漂っている。

店内は入口から見た印象よりもずっと広く、ゆっくりと過ごせる空間だ

カウンターの奥には、消毒室と書かれたすりガラスで仕切られたエリアがあった。「ここも、理容室だった時の名残です。扉と柱だけ残して、ちょっとしたキッズスペースみたいな感じにしています」と久米さん。小さな驚きや発見、ワクワク感がそこかしこに仕組まれており、ただコーヒーを飲むだけでは終わらない楽しさがある。

さまざまなデザインの椅子が並び、どこに座ろうか迷ってしまう

店内に置かれた椅子はどれもデザイン性が高く、心惹かれるものばかり。これらはすべて、アンティーク好きの久米さんがコレクションしていたものなのだとか。「学生時代から、アメリカ・オレゴン州、ロンドン、パリが大好きで、年1回は必ず旅をしながらアンティークショップなどを回っていました。この時の海外旅行がきっかけで、浅煎りのコーヒーを知ったんです」

かっこよさも大事なポイント

豆ごとに、味わいを直観的にイメージできるグラフィックデザインを添えている

近所に行きつけの喫茶店があるなど、コーヒーを身近に感じられる環境で育った久米さん。大学生になる頃には、毎朝豆を挽いてドリップするのが日課になっていた。「コーヒーを淹れる器具がすごいかっこよく見えて、いろいろと買っていたらドリップにちょっとハマってしまって。行きつけの喫茶店で豆を買って、毎朝それを挽いて家族の分もコーヒーを淹れていました。よりコーヒーにハマったのは、海外旅行で浅煎りを知ってから。香りや酸味にびっくりして、いろいろなコーヒーを飲むようになったんです。そんな経緯から、当店は浅煎り中心のラインナップになりました」

カウンターに並ぶのは、スペシャルティコーヒーのみが常時4、5種類。日常的に飲みやすいもの、軽めで華やかなもの、インフューズドコーヒーのようなちょっと変わったものなど、個性豊かに取り揃えている。

「豆を焙煎しているライブ感を出したい」と、窓際の目立つ場所に焙煎機を設置

扱う豆はすべて自家焙煎。外から見えるよう、通り側の大きな窓際に、プロバットの5キロ釜を設置している。「開業を決めたのがコロナ禍だったので、とにかく早く決めないと機器が届かない危険性がありました。だから、最新の焙煎機をオーダー。いろいろな焙煎機をチェックしているなかで、単純にデザインがかっこよかったのも選んだポイントです。焙煎機が届いてから実際に操作してみましたが、プロファイル通りに焼いてくれるので毎回決まった味が出しやすく、クオリティがぶれない点もいいですね」

エスプレッソマシンも、カウンターの目立つ場所に設置している

エスプレッソマシンを選んだポイントも、ビジュアル面が大きいという。「かっこいいし、迫力がありますよね」と久米さん。コーヒー店で働いた経験のないまま開業に至ったため、焙煎もエスプレッソマシンの操作も、実際の機器が届いてからトレーニングを積んだというが、自分がかっこいいと思うものに囲まれて好きな味を追求している姿は、とても自由でのびのびとしているように見えた。

店頭で販売しているORIGAMIのドリッパー

店頭で販売している抽出器具は、カラフルでかわいいORIGAMIのドリッパーが売れ筋なのだとか。「店で提供するコーヒーはカリタのウェーブで抽出することが多いのですが、希望があればORIGAMIで抽出することもできます」。かっこよさがコーヒーカルチャーの魅力のひとつとはいえ、デザインが気に入っても味が好みでなければ本末転倒。どんな味になるのか自分の舌で確かめてから豆や抽出器具を購入すれば、自宅での再現性もコーヒーを淹れる意欲も高まるに違いない。

誰が淹れても安定した味を意識

カリタのウェーブで抽出

「店のコーヒーをカリタのウェーブで抽出している理由は、味が安定しやすいからです。当店は私のほかにも数人のスタッフがいるので、誰が淹れても同じ味になるように気を付けています」と久米さん。底が平らなのでお湯がコーヒーに均一に馴染み、多少の注ぎムラはカバー可能。3つ穴でスムーズに落ちていくため雑味の少ない仕上がりになり、浅煎りの魅力であるフレーバーも気持ちよく表現できる。一方、エスプレッソでは粉の詰め具合や0.1グラム単位の量で味が変わってしまうので、クオリティをコントロールするためにもスタッフ間の情報共有は欠かせないという。

カップ、ソーサーともに、すべて形やデザインが異なる

「NOBI COFFEE ROASTERS」では、久米さんの嗜好もあって酸味が強めのものやフルーティーなものもよく扱っている。「こういうコーヒーはまだまだ刈谷には少ないので、皆さんに知ってもらいたいですね」。カップ&ソーサーは、白い陶器でお馴染みの作家、julia moliさんが製作。ひとつひとつデザインが異なり、「julia moliさんのカップでコーヒーが飲みたい」というファンがわざわざ訪れることもある。

2階席から、吹き抜けを望む

「うちはコーヒーしかやっていないので、器であったり、食べ物であったり、コーヒーとかけ合わせたコラボもよく開催しています。実は2階もあるので、1階は通常営業で2階はイベント、という使い方をしていることもあります。そうやっていろいろな興味からたまたまここに集まって、友達になって、遊びに行ったり仕事が生まれたりすることもあるようで、なんだか不思議な感じですね」

ここから広がっていく繋がりがおもしろい

ペット同伴OKのテラス席

「NOBI COFFEE ROASTERS」に集うのは、コーヒー好きだけではない。元々の理容室に通っていた近所のおじいちゃん、製造業に携わる外国人、次々と建てられる新築マンションに引っ越してきた若いファミリー、アンティーク好きなど、年齢も性別もライフスタイルも趣味嗜好も実に幅広い。屋上のテラス席では、ペット同伴もOKだ。

2階席は、小さい子供連れのファミリーに人気がある

「当初から、人と街とコーヒーを軸に、コーヒーから始まる豊かな広がりを提供できる場になれば、という想いはありました。しかし、今では想像していた以上の繋がりがここで生まれていて、すごくおもしろいですね。私はコーヒー店で働いていたり修業していたりという経験がないので、ある意味自由にやれたことがよかったのかもしれません。これからも、この場所からなにかプラスになるような出来事が巻き起こっていくといいなと思っています」

久米さんレコメンドのコーヒーショップは「ayakicoffee」

「愛知県の三河地方を中心に活動している『ayakicoffee』は、キッチンカーで営業しているカフェ。精力的にマルシェなどのイベントに出店していて、飲む機会の多いお店です。私が気に入っている『ayakicoffee』さんのよさは、その雰囲気。おしゃれな女性がかわいい車でコーヒーを淹れている様子は、マルシェの空気感と合わさってすごくいい感じなんです。コーヒーは嗜好品なので、深煎りが好きな人もいれば浅煎りが好きな人もいる。だから、タイプの違うものを取り揃えているところも、おすすめしたいポイントです」(久米さん)


【NOBI COFFEE ROASTERSのコーヒーデータ】
●焙煎機/プロバット半熱風式5キロ
●抽出/ハンドドリップ(カリタウェーブ、ORIGAMI)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ GB5)
●焙煎度合い/浅煎り~中煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。

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