北海道の定番土産「白い恋人」ヒットのきっかけは“機内食”?お土産として愛されながら道民にも大人気
東京ウォーカー(全国版)
“食の宝庫”とも言われる北海道。新鮮な海の幸、ジャガイモなどの農産物だけでなく、乳製品を使用しているスイーツも豊富だ。特産品の種類が幅広いため、お土産もバラエティーに富んでいるのも北海道の魅力。それだけに、北海道でお土産探しをする際にどれを買おうか迷ってしまう。
そんななか、北海道のお土産として長年人気をキープし続けているのが、ISHIYAの「白い恋人」。この商品のために特別にブレンドされたホワイトチョコレートを、サクサクした食感のラング・ド・シャクッキー(フランス発祥の焼き菓子)でサンドした北海道の定番銘菓だ。
自由におでかけができるようになった2023年の夏、「少しでも涼しいところへ…」と北海道旅行を考えている人も多いのでは?今回は「白い恋人」の人気の秘密を探るべく、石屋製菓株式会社(以下、石屋製菓) マーケティング室の山村梨花子さんと営業推進担当の野崎佳奈子さんに話を聞いた。
商品名の由来は社長の粋なひと言から。発売してすぐにヒットした理由
1947年の創業当初、石屋製菓は「きなこねじり」などでん粉を加工した駄菓子を扱う小さな会社だった。しかし、1960年代に入り、大手菓子メーカーが北海道へ相次いで進出したため、倒産の危機に。この窮地を脱するため、北海道の良質な原材料を使った高級洋菓子を取り扱うことを決め、1976年に「白い恋人」の販売を開始した。
「駄菓子製造から高級洋菓子の製造にシフトチェンジすることになり、新しいお菓子にふさわしい名前を付けるべく、スタッフは頭を悩ませていました。そんなとき、創業者であり初代社長の石水幸安が、雪が降り始めた情景を見て『白い恋人たちが降ってきたよ』と言い、そのひと言が決め手となりました」(山村さん)
発売当時は、同商品のような落ち着いたトーンの包装紙が珍しく、「色鮮やかな商品が並ぶ百貨店では売れないだろう」と言われていたが、その目新しさが功を奏した。こうして「白い恋人」は、売上・知名度ともにうなぎのぼりに。そして今では、北海道を代表する銘菓の1つとなり、日本全国で愛されている。
「空港で購入されるのは、主に観光客の方ですね。特に関東(主に東京・神奈川)の方の割合が多いですが、これは人口に比例するところもあります。一方、札幌市内にある直営店での主な購買層は北海道民の方で、30~50代の女性が多いです。北海道外の方への贈り物だったり、冠婚葬祭やお中元、お歳暮など、TPO問わず幅広くご愛顧いただいています。また、薄い箱でかさばらないため、サラリーマンの方がお土産として購入されることもありますね」(山村さん)
北海道外での知名度獲得のきっかけは「機内食」への採用
発売から40年以上経った今でも、北海道内外問わず大人気の「白い恋人」。もはや日本を代表する銘菓と言っても過言ではないほどの知名度を得ているが、本州にまでその名を轟かせたきっかけは何だったのだろうか。
「『白い恋人』が機内食で採用されたことが大きな要因のようです。当時、機内食に土産物が取り入れられた前例はほとんどありませんでしたが、二代目社長の石水勲が航空会社に売り込んだことで取り扱われるようになりました。結果、飛行機を利用していた関東・関西の方たちから大きな反響を呼び、次第に全国で知られるようになっていきましたね」
機内食の採用期間は、1977年10月に2週間、その後大反響により1978年1月〜2月までの2カ月間と短期間だったにも関わらず、あまりの人気ぶりに生産が間に合わないほどだったそうだ。
「店頭では陳列した瞬間から飛ぶように売れていき、生産を追いつかせるために工場の従業員は、夜通し商品作りを続けたそうです。そんななか、空港や百貨店の方が『商品置いてないの?』と直接工場まで来られたり、営業担当が得意先に出向いた際には、先方から『まだ入荷していないのか!』と怒られてしまった、なんてエピソードもありました(笑)」(野崎さん)
もはや“日本のお土産”!今後も北海道に根付いた事業展開を
2022年6月にはドバイ・モールでも販売を開始するなど、海外進出も果たしている「白い恋人」。もはや国内にとどまらない規模で展開しているが、今後の展望について聞いてみると郷土愛を感じる回答が。
「弊社は“100年先も、北海道に愛される会社へ”という長期ビジョン達成に向け、これからも北海道の方たちも含めた多くの方に愛される商品作りを目指していきたいと思っています。また、海外の方には“日本のお土産”として認知していただいているので、北海道、あるいは日本旅行の思い出とともに残るお菓子であり続けられるように努めてまいります!」(野崎さん)
そして山村さんは、「『普段はホワイトチョコレートを食べないけど、白い恋人なら食べる』『白い恋人を食べると北海道の景色を思い出して胸がいっぱいになる』といった声をいただくことがあります」と印象に残っているエピソードを話してくれた。石屋製菓の北海道に対する思いは、購入者にもしっかりと届いているようだ。
日本を代表する銘菓に成長しても、変わることなく地元・北海道に寄り添ってきた「白い恋人」。その姿勢が道内外、ひいては海外でも愛される理由なのだろう。2026年には誕生50周年を迎えるが、これから60年、70年と私たちに変わらない味を提供し続けてほしい。
取材=西脇章太(にげば企画)
文=永田奏歩(にげば企画)
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