父親、孫、赤ちゃんまでレンタル可能!?実在するビジネスの光と影を描いた映画監督に本音を聞いてみた
東京ウォーカー(全国版)
人間をレンタルする、実在のサービスを描いた映画「レンタル×ファミリー」がシネ・リーブル梅田などで公開され、注目を集めている。子供のためにお金で父親をレンタルする母親、息子や孫、彼氏をレンタルする人など、そこで繰り広げられる光と影を描く作品だ。
本作はEpisode1から3の3部で構成されており、Episode1はフリーのデザイナーをしながら娘を育てるシングルマザーの物語。Episode2では視点を変えて、人間レンタル業を営む三上健太をドキュメンタリータッチで浮き彫りにする。Episode3では母の突然の死と、父親からの思いもよらない告白に戸惑う女子高生の姿を描く。
本作のメガホンをとった阪本武仁監督に、本作やレンタル家族に対する考え方などについて話を聞いた。阪本監督は制作に至った経緯を次のように振り返る。

きっかけはワイドショーの「レンタル家族」特集
「きっかけは2年ぐらい前、ワイドショーでレンタル家族の特集を見たこと。とても興味深い職種だと思いました。それでレンタル家族を調べたら、家族レンタルサービスなどを行う株式会社ファミリーロマンスの石井裕一代表の『人間レンタル屋』という本が出てきたので、すぐ読んだんですよ」
そこに描かれた逸話の数々に阪本監督は驚かされる。
「ちょっと特殊な案件などもあって、びっくりしました。それでこの仕事を取材してみたいと思ったのが映画を作るきっかけです。作者の石井裕一さんにコンタクトを早速取って、取材の依頼をしました」
レンタル父親なのに、なんで顔を出しているんだ?強烈な違和感
「この業種は現在7社くらいあって、石井さんの会社はその中でも一番大きく、いろいろな案件を受けています。でも、この本で僕は大きな違和感を覚えました。石井さんは現在進行形で本当の父親だという体で、25もの家庭の父親としてレンタルされているのに、本の表紙に自分の顔を思いっきり出していることが無茶苦茶気になって。どういう理屈でこういうことになっているのかすごく引っかかったんですよね。
僕なら顔は出せないと思います。子供を傷つける可能性がありますよね。それが一番聞きに行きたかったことで、映画の中にもその答えは入っています。ただ、石井さんには石井さんの考え方があってこういう風に顔を出しているそうですが、それを聞いても納得はできませんでした」
取材をしたあと「友人らに話したら協力するよと、とんとん拍子に作品を作ることになった」ため、本作を制作することに。ただ、石井氏に対する違和感はずっと残っているという。
「僕の中では引っかかったままで、全肯定はできなくて。それってどうなんですか?という風に映画の中ではいいも悪いもそのまま描いていて、あとはお客さんの方で判断してもらいたいという作品にはしています」
相手を一生だましとおす覚悟はあるのか?
本作はさまざまな形で観客に家族のありように対する疑問を投げかけてくる。Episode1で特に印象的なのが、人間レンタル業を営む三上の、(父親をレンタルするのは)「相手を一生だましとおす覚悟が必要」というセリフだ。
「これは原作にあるんですよね。石井さんが依頼者に伝えた言葉で一字一句そのままではありませんが、『それでもお願いします』と言ってくれる依頼者の依頼は受けるそうです。その覚悟なく依頼に応じるのは控えているということでした」

作中で描かれているエピソードは基本的に原作にあり、石井氏の実体験に基づく。ただ、Episode3は原作にはなく、監督が石井氏から取材して聞いた内容をもとにしている。
「レンタル父親を務めていて、母親が亡くなるケースが2件あったそうです。子供たちが残されて、お母さんが亡くなるだけでも悲しいのに、同時にお父さんが本当のお父さんじゃなかったということもわかってしまう。すごく残酷だなと思ったんですね。
石井さんには困っている人たちを助けたいという思いはありますが、自分たちができる限界もあって、ずっとボランティアではできない。あくまでもビジネスとしてやっているので、そのせめぎ合いがいびつだと感じました。また、これがビジネスとして成立していることが、この先どうなっていくのかという疑問もあります」
実は石井氏自身も、この事業がこれだけ伸びるとは思っていなかったそう。
「需要がこれだけ増えるとは思っていなかったと話していました。あまり増えないでほしいと思いながら、依頼はすごく増えている状況だそうです、でも、もっと他の家族の形もあるのではないかと。イギリスにはナニーという保育のプロの女性がいて、彼女たちはベビーシッターよりももっと子供の教育などにも深く携わります。その男性版がマニー。実際に血のつながっていない父親のような形でそういう制度を利用するのであればまだわかるのですが。借りるのではなく、コミュニティとか、いろいろな視野を広げたほうがよいのではないかと、僕自身も思います。
そういう気持ちはEpisode3で描いています。最後のペンションのシーンも1つの家族だと思える。そういう思いで作った作品です。最後はどうしても救いを描きたかった。このEpisode3の残された子供のことを思うと、未来あるもの、希望あるものにしたいと思って、最後はそう描きました」

この記事の画像一覧(全6枚)
キーワード
テーマWalker
テーマ別特集をチェック
季節特集
季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介
全国1300カ所のお花見スポットの人気ランキングから桜祭りや夜桜ライトアップイベントまで、お花見に役立つ情報が満載!
全国約900件の花火大会を掲載。2025年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!
ゴールデンウィーク期間中に開催する全国のイベントを大紹介!エリアや日付、カテゴリ別で探せる!
おでかけ特集
今注目のスポットや話題のアクティビティ情報をお届け
キャンプ場、グランピングからBBQ、アスレチックまで!非日常体験を存分に堪能できるアウトドアスポットを紹介