父親、孫、赤ちゃんまでレンタル可能!?実在するビジネスの光と影を描いた映画監督に本音を聞いてみた
東京ウォーカー(全国版)
謝罪代行やレンタルへの依存なども
作中では、レンタル家族や人間レンタルの負の側面も描く。なかでも危険を感じるのがEpisode2で描かれる「謝罪代行」だ。
「謝罪代行は一番難しいとされています。携帯でボタンを押すだけで人に来てもらえる端末を持っていくとか、玄関まで行ったら靴を脱がずにすぐに逃げられる状態にしておかなければいけないとか、そういったノウハウがスタッフにはレクチャーされているそうです。危険度が高い分、ギャランティもいいという話でした」

また、シングルマザーがレンタル父親に次第に依存していく姿も描かれる。
「あのエピソードも実際に石井さんが体験したことで、20回ぐらい依頼を受けると必ず『結婚してほしい』と言われるそうです。レンタル父親であることを理解していればいいのですが、途中からどこからどこまでが嘘なのか、依頼者自身がわからなくなってくる。どんどん依存して戻ってこれなくなったりするそうです。
ただ、これはビジネスですから、リピートしてもらうと会社が儲かるわけじゃないですか。リピートをよしとしながら、依存しすぎると破綻してしまう。その辺のところを考えると『やらしいな』と思ったり。人を幸せにしたいと思ってスタートしたサービスですが、結果的にどうですかと作中で問うているところもあります。依頼者の女性が本作を見に来て『子供に打ち上げる決意ができました』と話してくれた例もありました。打ち明けるのにも勇気が必要だし、子供自身を傷つけるかもしれません。難しい問題です」
最近では赤ちゃんのレンタルが存在するそう
阪本監督はレンタル家族というサービスが登場した背景を次のように分析する。
「レンタル家族ができてきた背景を考えると、核家族が多くなってきたこともあるのかなと思います。都市部に利用者が固まっていることを考えると、おじいちゃんやおばあちゃんに子供を見てもらえないことも理由の1つではないかと。
また、石井さんに取材をする中で、依頼者には個性的な人が多いということもわかりました。それをそれぞれの俳優さんに、ワンポイントで表現してもらっています。たとえば、ネイルであったり、服装であったり、髪の色であったり。作品を見て『なんであそこはああなんだろう』と考える余白が増えるような、みんなで話し合って帰れるようなものにしたいと思いました」
作中では父親のほか、彼氏、息子、孫などのレンタルが登場するが、最近ではなんと赤ちゃんのレンタルも存在するそう。
「余命わずかな親に孫を見せてあげたいといった依頼があるそうです。親に嘘をつき、子供にも嘘をつかせる。倫理的に考えて、やらない会社もありますが、法に触れない限りはやるというスタンスもあります。まだ歴史の浅い業界なので、ルール作りがなされておらず会社によって自由なようです」
業界のあり方に疑問を投げかける阪本監督だが、もし誰かをレンタルするとしたら「僕は父親を割と早くに亡くしているので、父親をレンタルしたい」と話す。「一緒に飲みに行ったり、いろいろ相談をしたりしたい」というのも偽らざる思いのようだ。

本作で「人間レンタル」という新しい業界に着目し、家族をレンタルすることの光と影にスポットを当てた阪本監督。今後は「具体的に撮りたいものは決まっていませんが、社会を切り取るような、実際に起こっている社会問題を描いていけたら」と話す。今後も目が離せない監督の一人になりそうだ。
阪本武仁監督
NCF映像2期にて井筒和幸監督に師事。「パッチギ!」(2004/ 井筒和幸監督) に演出部ボランティアスタッフとして参加。卒業後上京し「大帝の剣」(2006/ 堤幸彦監督)、「手紙」(2006/ 生野慈朗監督)、「キトキト!」(2007/ 吉田康弘監督)、「20世紀少年〜もう一つの第2章〜」(2008/ 堤幸彦監督・木村ひさし監督)、「告白」(2009/ 中島哲也監督)などの作品に助監督として参加。映画「エターナル・マリア」(2016)で長編映画の初監督を努める。好きな映画は「岸和田少年愚連隊」。趣味は映画鑑賞、観劇、ライブ、飲みに行くこと。
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