「靴下で世界を変える」老舗メーカー3代目を継いだ靴下ソムリエの姉妹がつくる、色覚・視覚障害に負けない“新しい靴下”
東京ウォーカー(全国版)
ーー妹のさやかさんは、どのタイミングで加わったのですか?姉妹で同じ仕事をすることの大変さなどはありませんか?
【日比野ほのか】私たち姉妹は、それぞれ大学3年生からインターンのような形で仕事をしていたんです。その流れで新卒入社っていう感じなんですね。2歳差なので、私の入社2年後に同じような流れで入ってきました。
【日比野さやか】私は大学で会計経理を勉強していたので、経理として入社したんです。途中から靴下のデザイナーになるために仕事をしながらデザイン学校に通い、現職の靴下デザイナーになったんですね。現在は経理とデザイン、二足のわらじとしてやらせていただいています。社長はもともと営業から入っているので、私と得意な分野が違いますし、考え方も真逆なんですよね。

【日比野ほのか】目標は一緒だけど、考え方が違う。たからこそ、いい意味で上手に分業して力を合わせてできているなって思います。たまに喧嘩になることもありますが(笑)。
ーー違う領域だからこそ、目標に向けて異なるアプローチができる強みがあるわけですね。
【日比野ほのか】本当に文系と理系ぐらいの差がありますね。やっぱり商品開発は妥協できないと思っていますので、そこでの私としてのアプローチの仕方と彼女のアプローチの仕方で、設計とデザインで両方とも譲れないところがありつつ、例えば色選びで、今回グレーを2色ラインナップしていて「たくさん種類があるなかで、どの色だったら一番コーディネートに合わせやすいか」とか「この色なら一般的なグレーとくくって大丈夫じゃないか」とか、お互いの意見が一致したときには、「これでイケるな」って強く思えたりします。
ーー今回は、色覚・視覚に障害を抱えている方でも楽しめる靴下の開発を行われましたが、ほかにも社会貢献を意識された取り組みがあれば教えてください。
【日比野ほのか】1つ目は、福祉施設とのパートナーシップの確立を私の父の代から進めていまして、協業する場を広げることを目指しています。A型B型の就労継続支援事務所と仕事の連携をして、障害を持たれた方に施設外就労という形で弊社に来ていただいて、弊社のメンバーと一緒に仕事をしてもらっています。今回の新商品『みちる』シリーズも、その方々と協力して出荷に向けて準備をしているところなんです。将来的には、その方々にも企画や商品開発に参加してもらいながら、能力の発揮というところで一緒に取り組んでいきたいと考えていて、準備中なんです。
【日比野ほのか】2つ目は、“SOCKS FOR ACTION ”と社内で呼んでいる取り組みで、3年ほど前から養護学校や地域のお年寄りの見守りをされている団体などに靴下のプレゼント活動を行っています。まだまだそこまで大きい活動ではないのですが、靴下の会社ということで「クリスマスに関係性があるかな?」と考え、一番寒い季節に靴下を履いて温まってほしいなという想いからスタートした取り組みなんです。今年は、盲学校の学生さんへまだ大人用しかない『みちる』シリーズをクリスマスにプレゼントできるよう、改良しているところです。
ーー代替わりして会社を受け継いだ際にこだわって変えた部分など、それぞれの仕事の領域でどういったところがありますか?
【日比野ほのか】やっぱり、時流に合わせて変化することは大事ですよね。昭和、平成、令和と時代が移り変わっているので、今までの常識が通用しなくなっている部分もあります。ビジネスモデルや体制、さらに商品も時代遅れになれば、ダサくなりますから。経営判断をするときの指針として、今どきじゃない部分は理解を求めながら変えていくようにしています。
【日比野ほのか】でも、槇原敬之さんの楽曲「遠く遠く」の歌詞にもあるように、“変わらずいること”も大事なんですよ。代替わりしたからといって、なんでも改革をすればいいということでもないんです。みなさんが大事にされている習慣などは、変わらずに持ち続けていると思うんです。人がいて社会が成り立っているので、一人ひとりが会社に対して抱いている想いに最大限、応えられるようにしなければと考えています。私が創業した会社ではなく、周りの人に支えられて今この場所に居させてもらっているので。変える部分と変わらずいる部分を両軸としてやっています。

ーーデザイン面ではいかがでしょうか?
【日比野さやか】デザインも同じで、例えば、今年作っていたものが来年必ず売れるとは限らないんですよね。ただ、デザインの場合はトレンドも意識しつつですが、そこに振り過ぎてもお客様にはウケないので、そのバランスを取ることが重要なんです。新しいものを取り入れつつも、新しすぎないように受け入れやすいデザインにすることにこだわっています。それから、私は途中から靴下デザイナーになったので、他人任せにせず、自分が成長してデザインできるように学習し続けています。
【日比野ほのか】補足すると、一番変わったことは、ユーザー目線に気をつけるようになったことですね。
【日比野ほのか】今、UX(ユーザーエクスペリエンス=ユーザーが商品を通じて得られる体験)・UI(ユーザーインターフェイス=ユーザーが製品などを手にする際に目にする情報)というシステムがあるように、自分たちが実際にお客様の様子を伺ったりお話を聞いたりして、イチから見直しを行いました。それまでは、この客層にはこれが一番人気だろうと少し決めつける形で進めてしまっていたので、変わらなければいけなかったんです。代替わりしてから「デザインが若返った、よくなった」と言っていただけることが増えたのですが、これは、デザイナーの彼女を中心にほかのメンバーたちの頑張りによって達成できたのかなと思っています。
ーー最後に今後の貴社の展望と、日比野さんの今後の野望を教えてください。
【日比野ほのか】“靴下を通じて世界を変えていく!”という信念のもとに、会社もブランドも取り組んでいます。国内だけではなく世界に羽ばたいていくなかで、ひとりでも多くの方々を足元から救っていきたいという、ちょっと大げさですが、かなり大きな夢を持っています。祖父から与えてもらった靴下というバックボーンを最大限に活かしつつ、人助けまでは力が及びませんが、世のため人のためにできることを自分たちで発信して広げていくのが目標ですね。
ーーありがとうございます。さやかさんはいかがですか?
【日比野さやか】私も、やはり自分たちで商品を作らせていただける立場にありますので、少しでも誰かの役に立てるような商品作りを行って、ひとりでも多くの方を笑顔にさせていただくお手伝いができればなって思います。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・身近な存在の課題にビジネスの新しい気づきがある<br />・ユーザー目線で商品づくりを徹底する<br />・変える部分と変えない部分をしっかりと分析する<br />
取材=浅野祐介、取材・文=北村康行
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