「ブラックサンダー」が生産中止を乗り越え、国民的おやつになった理由とは?ひとりの従業員の熱意から再販へ
東京ウォーカー(全国版)
ちょうどいいサイズ感とザクザクとした食べ応えが特徴で、老若男女問わず愛されるチョコレート菓子「ブラックサンダー」。コンビニでもスーパーでも当たり前に見かける、“ちょっとしたおやつ”の定番だ。
定番チョコレート菓子の座をキープし続けるブラックサンダーだが、一時は生産が終了するほど売り上げが低迷していたこともあるのだとか。しかし、今では「国民総選挙」を実施するほど日本全国で認知されており、売り上げが低迷していたなんて嘘のようだ。さらに最近では、“おやつ”の枠を超えてオフィスワーカーに向けた訴求を行っている。
そこで今回は、有楽製菓株式会社(以下、有楽製菓)マーケティング部の嶋田真亜子さんに、ブラックサンダーの誕生秘話とここまで人気になった理由、味わいのポイント、そしてオフィスのお供を目指している理由について話を聞いた。
かつてのヒット商品とは違った食感を。「ブラックサンダー」の誕生秘話
ブラックサンダーが誕生したのは1994年のこと。当時、有楽製菓では、軽い食感が特徴の駄菓子「チョコナッツスリー」(現在は販売終了)が主力の商品だった。ブラックサンダーが生まれたきっかけは、この「チョコナッツスリー」とは対極の“重い食感”のお菓子を目指したことに始まる。
「ココアクッキーとチョコレートのみを組み合わせると、口当たりが重くなりすぎてしまうんですね。食べごたえはしっかりありつつも、味わいのバランスをとる必要がありました。さらに、駄菓子として売るにはコストが見合わないという課題もありました」
そのため、新たに開発した白い粒状のビスケットを加えるなど、試作を重ねたという。そんな試行錯誤の末に、求められていた「ザクザクした食感」「満足感のあるボリューム」のハードルをクリア。お手頃価格で幅広い世代に愛される「ブラックサンダー」が誕生した。
そんな待望の商品だったが、当時の売れ行きは芳しくなく、販売不振のため一時生産が終了していた時期も。現在の圧倒的な存在感からは想像できないようなマイナスからのスタートだった。しかし、そんな負の空気を吹き飛ばしたのは、とある営業社員の熱意だった。
「九州地区を担当していた営業担当が、すごく熱意を持って『この商品がすごい』とか『この商品売れてるよね』というのを言っていたそうです。それにより、社内でも徐々に盛り上がっていったみたいです(笑)」
懸命な働きかけの結果、「包材も残っているし、もうちょっとやってみるか」と、1年後に九州限定で再販が決定。じわじわと評判が広がり、再び全国での生産が決定した。
それからブラックサンダーは、大学生協で大ヒットを記録したり、「スポーツ選手が現地に持ち込むほどのお気に入り」としてメディアに紹介された際には一時的に品切れになるなど、話題が尽きない。この人気の一因として、誰でも手を出しやすい良心的な価格設定があげられるだろう。
しかし、2023年3月には発売以来初めて値上げが行われ、価格が30円から35円(参考小売価格、税別)に変更されることに。ただ、消費者からは「ブラックサンダーの値上がりはしょうがないよね」といった好意的な声が多く寄せられたそうだ。それにしても、クオリティの高い商品でありながら、ここまでの低価格を維持している秘密とは一体何なのだろうか。
「使用しているココアクッキー、プレーンビスケットを内製原料にすることで、コストを抑えながらも品質のいい原料を使用できています。これにより、口当たりが重たくなりすぎず、ザクザクしたアクセントをプラスしています。ただ、開発には1年以上の時間を要しました」
国民食を目指すべく、“オフィスのお供”としての訴求を
2024年に誕生30周年を迎えるブラックサンダー。今後目指すのは「老若男女から愛される国民食」だそうで、そのためにも、「ブラックサンダーを食べるきっかけを多く作っていきたい」と意気込んでいる。
「いろいろなシチュエーションでの接点を作ることが大切だと考えていて。たとえば、ストックしやすいパウチタイプの商品や、家族で食べられるファミリーパックなど、シリーズを増やして展開しています。そのほか、地域限定商品では旅行気分を味わってもらうといったシーンを想定しています」
一方で、ブラックサンダーのサイズ感やザクザクとした食感が、オフィスワーカーの間でも好評だそうで、最近では“オフィスのお供”としての訴求も行っているのだとか。嶋田さんは「会社員の方がリフレッシュしたいときや、頭が疲れた際に糖分補給にご活用いただけるような提案をしています」と語る。
「会議の合間に気合いを入れるために食べる方もいれば、会社の冷蔵庫にストックしておき、同僚と一緒に食べてひと息つくといった、コミュニケーションツールとしてもご活用いただいているようです。ちなみにSNS上では、コンビニコーヒーとブラックサンダーを一緒に写した写真や、仕事の休憩中に商品を撮影した写真が多く投稿されていて、『親近感を持っていただけているブランドなんだな』と実感しています」
紆余曲折がありながらも、今や知らない人がいないほど、絶対的な存在となったブラックサンダー。満足感のあるお菓子を食べたいときや、仕事の合間に甘いものをサクッと食べたいときなど、これからも私たちの生活に寄り添ってくれる存在であり続けてほしい。
取材=西脇章太(にげば企画)、文=永田奏歩(にげば企画)
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