コーヒーで旅する日本/四国編|日々のにぎわいから広がるコーヒーの楽しみ。絶えず新たな試みを重ねてきた「とよとみ珈琲」の20年

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。瀬戸内海を挟んで、4つの県が独自のカラーを競う四国は、各県ごとの喫茶文化にも個性を発揮。気鋭のロースターやバリスタが、各地で新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな四国で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが推す店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

木工所をリノベートした店は、大きなCOFFEEのロゴが目印


四国編の第10回は、徳島市の「とよとみ珈琲」。市街から少し外れた住宅街にあって、朝から夕方までお客が入れ代わり立ち代わり、にぎわいが絶えない人気店だ。店主の豊富さんは、ジーンズショップの販売から転身し、35歳のときにコーヒー店主として独立。徳島でいち早くスペシャルティコーヒーの魅力を伝えてきたロースタリーの先駆け的存在だ。いまやすっかり“わが街のコーヒーショップ”として定着した「とよとみ珈琲」が、当初から目指してきたのは、コーヒーに関心を持つ人との会話が生まれる場。豊富さんの快活な人柄と懐深い接客、何より開店20年を経た今も尽きない探求心で、地元・徳島の日常にコーヒーを楽しむ時間を広げ続けている。

店主の豊富さん


Profile|豊富正史(とよとみ・まさし)
1968年(昭和43年)、徳島市生まれ。大学卒業後、アパレル企業に就職し、ジーンズショップで約10年間勤務。その間、学生時代から好きだったコーヒー店での開業を志し、30歳を過ぎた頃から焙煎を始め、独自にコーヒーの知識・技術を追求。神戸の焙煎卸・マツモトコーヒーとの縁を得て、研修に参加するなど指導を仰ぎ、2003年に「とよとみ珈琲」をオープン。カフェを主体とした店としてスタートし、2020年に豆の販売・テイクアウト専門店にリニューアル。

誰かが作ったのでなく、自分の手で作ったものを届けたい

店内にはコーヒー豆やドリップバッグ、抽出器具などが所狭しと並ぶ

徳島のシンボル・眉山の東側、海にほど近い住宅街の中にある「とよとみ珈琲」。市街からは少し離れているにもかかわらず、ほとんどお客が途切れることがない。訪れるたびに、“いらっしゃい”“ありがとう、サンキュー”と、店主・豊富さんの明るい声が響き、店内はにぎやかな会話が絶えない。豆を買いに来たお客から質問があると、カウンターで即席のコーヒー教室が行われることもしばしばだ。「地方の街では、スペシャルティコーヒーに触れる機会が少ない。だから、話題になっている豆や器具もそろえるようにしています。僕は、物販が好きで、できるだけ丁寧に説明したいから」と豊富さん。快活な笑顔と朗らかな接客は、前職時代に培われたものだ。

豆はブレンド4種、シングル8種を時季ごとに入れ替えで販売


大学卒業後、大阪のアパレル企業に就職した豊富さんは、ジーンズショップの販売員を皮切りに、関西や徳島で店長も務めた経験の持ち主。実は、当時はジーンズショップでの独立を考えていたそうだが、折しもネット通販が普及しつつあった頃。商品知識やコミュニケーションを磨き、接客した常連もネットで購入する機会が増えていると感じていた。「今後は、他人が作ったものを売るのはますます難しくなる。それなら自分で作ったものを売るべき」と考えた豊富さん。そのときに思いついたのは、昔から好きなコーヒーだった。

「徳島は、自家焙煎の店が多いコーヒーどころ。身近にいい店がいっぱいあって、学生時代はデートに行くにも、バイクに乗って、コーヒーが旨い喫茶店に行くのがステータスでした」と振り返る。とはいえ、コーヒーを作る側の仕事については全くの素人。仕事の傍ら、関連書籍や雑誌を読み漁り、方々のコーヒー店を飲み歩いた。さらに30歳を過ぎた頃から焙煎も独学で始め、自宅に小さな焙煎機を購入するまでに。原料である生豆や味作りの技術を独自に追求していった。

豆の販売カウンターでは、目の前で抽出のレクチャーが始まることも


当時はちょうど、スペシャルティコーヒーが広まり始め、アメリカでサードウェーブの波が起こり始めた頃。コーヒーに関する知識、技術を深めるにつれて、焙煎する豆の種類も幅が広がり、生豆の入手先もさまざまな卸業者から取り寄せるようになっていた。その中で出会ったのが、神戸のコーヒー卸・マツモトコーヒーだった。「社長の松本行広さんは、世界各国の産地を訪ね、いち早くスペシャルティコーヒーを日本に広めようと奮闘した第一人者。その頃のコーヒーの世界では、異彩を放つ存在でした」

その強烈な個性に惹かれて以来、松本さんの元を度々訪ねて教えを請うようになり、1週間の社内研修も経験。その後も、自分が焼いた豆を持参してみてもらうなど指導を仰いだ。「すごく厳しい方でしたが、受け入れてもらえて本当にラッキーでした。コーヒーの道は自分が考えていた以上に深く、この経験があったからこそ、一生学び続ける覚悟ができたように思います」と振り返る。

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