不動産投資をより身近なものに。投資のプラットフォームを開発するWealthParkの狙いとは
東京ウォーカー(全国版)
近年、投資への関心が高くなっている。投資にもさまざまな手段があるが、株や債券といった昔からある投資対象のことを「伝統的資産」と呼ぶのに対し、新しい投資対象・手法のことを指して「オルタナティブ資産」と呼ぶ。不動産やアート、ワインやウイスキーがこれにあたる。
「オルタナティブ資産への投資機会をすべての人に届ける」というミッションを掲げているのがWealthPark株式会社(ウェルスパーク)だ。同社では、2017年に不動産オーナー向けの資産管理システム「WealthParkビジネス」をリリースし、不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引している。不動産DXのパイオニアとして成長を続けるWealthParkの強みがどこにあるのか、WealthPark株式会社代表取締役副社長COOの手塚健介さんに聞いた。

知見を得るためインバウンド向け不動産管理会社としてスタート
そもそも、不動産投資というのはどういったことをするのだろうか?
「基本的に“大家さんになる”ということですね。不動産の種類はアパート、ホテル、マンションなどさまざまですが、所有する不動産を貸すことで、売り上げを得ていくというのは変わりません。ただ、時代とともに大家さんのスタイルには変化が起きています。昔は自前の土地にアパートを建てて、入居者の方から直接手渡しで家賃をもらうというケースが多くありました。現在は不動産管理会社が大家さんと入居者の間に入ってくれて、入居者を探してくれたり、家賃や修繕費などのやり取りを代行してくれたり、設備の修繕手配をしてくれたりします。大家さんもいわゆるサラリーマン投資家という人が増えましたし、従来型の大家さんも代替わりを経て不動産を所有することを投資の目線で捉えている人が増えているという変化もあります」
WealthParkでは、不動産投資の分野でどの部分を事業として担っているのだろうか?
「事業のひとつとして、大家さん、つまり不動産オーナーと不動産管理会社をアプリでつなぐ業務支援システムの提供をしています。従来、封書やFAXといったアナログな媒体でのやりとりがメインだった両者に当社のシステムを利用していただくことで、アプリ上で収支報告や必要な各種手続きに関する連絡をスムーズかつ安全にとることができます。現在利用者数は11万人を突破しており、好調に伸びています」
WealthParkは2014年に事業を開始した会社だが、最初は海外不動産オーナー向けの賃貸管理業からスタートした。
「そこから賃貸管理用アプリの開発に着手していきました。テクノロジーを利用して不動産業界の課題解決や従来の慣習を変える取り組みのことを“不動産テック”といいます。2018年には不動産テック協会も設立されているのですが、我々はこの業界の中で先行して事業を展開していったといって差し支えないと思います。不動産DXに取り組むにあたって難しいこととしては、不動産の実務を理解する必要があるということです。一般的なSaaS(インターネットを介して提供されるソフトウェア)では、会計機能や人事機能といったどんな事業でも用いられることが多い機能にフォーカスされることが多いです。これに対し、特定の業界・業種に特化したバーティカルSaaSとなると、その業界に精通していることが必須になります。不動産オーナーと管理会社の間にどんなやり取りがあるのか、どんなデータが必要なのか、不動産オーナーや管理会社が何を求めているのか。賃貸管理業からスタートしたのは、その知見を得るためでした」
システムの開発にあたって、大事にしたのは不動産オーナー目線であることだという。


「我々のシステムは、まず不動産管理会社側に導入してもらうのが入り口です。不動産オーナーが個別で物件情報などを入力していく機能もあるのですが、不動産管理会社側に入力してもらうのが通常の使い方になります。そうすると、システム導入のための営業は不動産管理会社側に働きかけていくわけですが、不動産オーナーの使い勝手を一番に考えているのがWealthParkの特徴ですね」
システムを導入するきっかけが不動産管理会社であることを考えると、業務負担を軽くするシステムのほうが、導入されやすそうな気がする。不動産オーナーを向いたシステム開発を大事にしているのはどうしてだろうか?
「まず、賃貸管理会社のビジネスモデルは不動産オーナーからいただいている賃貸管理手数料で成り立っています。不動産管理会社のビジネスを支えているのは不動産オーナーです。我々は顧客の顧客に向き合うことで不動産管理会社の収益化寄与につなげています。それらを理由に我々のシステムを選んでいただけるというケースが多いです。こうしたコンセプトの差分なども理由になり、160社以上から選んでいただけていると感じています」
手塚さんによれば、不動産オーナーが不動産管理会社を変えるケースは珍しいことではないそうだ。
「入居者がなかなか見つからない、工事でお金がかかる、相続などイベントごとが発生したときに不動産管理会社を変えるということはありますね。不動産管理会社としては不動産オーナーが離れていってしまうことは避けたいところ。これを防ぐには不動産オーナーの満足度を上げ続けることが重要です。不動産管理会社側の業務が効率化や仕組み化されることも大事ですが、それ以上に、不動産オーナーをひきつけたい。そこがビジネスの根幹になっているわけですね」と手塚さん。さらに、WealthParkがビジネスで大事にしていることとして「とにかく顧客に向き合って、ニーズを拾う。ヒントを得る。事業サイクルを回していくのが大事」と教えてくれた。
自分たちのビジネスが誰を向いているものなのか。その見極めがなされているからこそ、WealthParkのアプリやシステムが支持されているということなのだろう。
不動産DXは伸び代がある分野。意欲のある人材と共に成長を目指す
WealthParkが掲げるミッションは「オルタナティブ資産への投資機会をすべての人へ届ける」。オルタナティブ資産は不動産以外にも、アートやワイン、ウイスキーなどがあるが、WealthParkが不動産に特化しているのはなぜだろうか?
「オルタナティブ資産投資で一番市場が大きく、単価が高いのが不動産です。なので、まず一番大きな市場で強固なプラットフォームを作っていこうという考えがあります。そこにほかの商材をのせていくことを考えています。もちろん、不動産とアート、ワインやウイスキーはそれぞれまったく別のものですから、不動産投資の目利きができるからといって『この絵がいくらなのか?』という問いに答えられるわけではありません。我々が不動産以外の資産を取り扱うことになれば、学ばなければならないことはたくさんあります。しかし、オーナーたちがなぜ“投資”を求めるのか。そのニーズを汲み取ってビジネスを展開してきた経験は新しい資産を取り扱うことにも役立つと考えています」
オルタナティブ資産投資の中でも不動産投資が大きな市場になっているのは「ミドルリスクミドルリターン」であることが大きいと考えられる。所有する不動産にきちんとしたテナントが入居してくれれば、定期的な収入を得られるからだ。
「株は買ったときの倍になるかもしれませんが、半額以下になってしまうかもしれない。しかし、銀行に預けていてもほぼ増えることはない。そうした中で不動産投資というのはリスクリターンのバランスが比較的良い傾向にあると思っています。ただ、不動産を所有するとなると、初期投資がどうしてもかさみます。頭金や仲介手数料も必要ですから、どんなに安くても数百万円は必要になってきてしまうので、そこがハードルですね。ただ、最近はひとりで投資物件を100%保有するのではなく、クラウドファンディングを利用して1口1万円くらいから、複数の人が投資をする“小口化”の方法も出てきています。Finance(ファイナンス、金融)とTechnology(テクノロジー、技術)を組み合わせたFintech(フィンテック)という言葉があるのですが、WealthParkではFintech事業にも注力していこうとしはじめいます。具体的には、複数の不動産管理会社とパートナーシップを組み、当社アプリ『WealthPark』を利用する不動産オーナーが小口化商品に投資できるプロジェクトを進めてきました。これまで気軽にアクセスすることが難しかったさまざまなオルタナティブ資産に“投資すること”。そして、“所有することの喜び”を今後さまざまな人に届けることを実現するために引き続きFintech事業に取り組んでいきます」
Fintech事業を拡大することで、不動産投資の世界を広げていくのと同時に、既存のシステムやアプリの普及拡大にも余念がない。
「国税庁のデータによれば、不動産所得がある人の割合は日本で約150万人。現在、WealthParkのアプリを使ってくださっている不動産オーナーは11万人なので、全体の7%くらいということになります。2017年のリリースから順調に伸びてきていますが、まだまだ伸ばしていけると考えています。そもそも、我々のアプリに限らず、オルタナティブ資産の運用というのは新しいテーマですし、不動産はDX化が遅れている分野ですから伸び代です。伸び代をしっかりと伸ばしていくためにも、新しいものへの好奇心、変革していくことへの楽しさを持てる人を募り、強くしなやかなチームで事業に挑戦していきたいと思っています」
不動産投資と聞いて「自分には関係のない話」と感じる人は少なくないだろう。しかし、WealthParkの働きによって、その世界が身近になる日もそう遠くはないのかもしれない。
この記事のひときわ
#やくにたつ
・ニーズを的確に拾い上げるためには、顧客と近い立場になることが必要
・自分たちのビジネスがどこに向いたものなのか考える
取材・文=西連寺くらら
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