自転車をこいで靴下を作る!『日本一ワクワクできる靴下工場』を目指して老舗工場が挑戦し続ける理由

東京ウォーカー(全国版)

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「世界中から広陵町に靴下を買いに来てもらいたい」という願い

創喜では3つの自社ブランドを展開している。ECサイトや百貨店・各地のセレクトショップへの卸だけではなく、直営店「S.Labo」をオープンさせた理由を出張さんは次のように語ってくれた。

2021年12月にオープンした「S.Labo」。靴下の販売だけではなく、チャリックス体験や靴下の端材を使ったワークショップを開催することで、靴下を楽しめる場所にしている 【写真提供=創喜】

「広陵町での靴下産業は創喜もそうであったようにOEMでの製造がほとんどだったので、町で作られた靴下を買う場所がなかったんです。『靴下生産日本一と言われているのに、なぜ町で作られた靴下を買えないんだろう』というもやもやとした思いがありました。今治に行けば今治タオルがあるし、信楽に行けば信楽焼があるように、広陵町にも靴下が買える場所がほしいと思っていました。自分も職人としていいものを作っているという自負があったので、お客さんに広陵町に来て靴下を買ってもらいたかったんです。ゆくゆくは世界中から広陵町に靴下を買いに来てもらいたい。そのためには自社ブランドの製品が必要だと感じ、足を運んでもらう理由となる付加価値として、チャリックスが生まれました。S.Laboをオープンさせることができて、ひとつの目標をクリアできたと思っています」

S.Laboでは、擦り切れたり穴の空いたりした衣類をおしゃれに修繕するダーニングのワークショップを開催。ベースになる靴下は創喜の規格外靴下。奈良県産のヒノキで作った道具、奈良県の糸商が企画したリサイクルコットンを用意するなど、奈良県にこだわった内容だ 【写真提供=創喜】

S.Laboをオープンさせてから、チャリックスをこいだ人は5000人以上。近畿圏からの観光客が多いが、全国各地から来店があるという。「S.Laboに来るために奈良にはきたとか、東大寺に行くかS.Laboに行くか悩んでS.Laboに来ましたと話してくださるお客様もいました」と出張さん。靴下作りだけではなく、広陵町への思いも深い。

「広陵町は30分で難波まで行けるので、大阪のベッドタウンになっていて、若い人、子育て世代がどんどん増えています。行政区分は町ですが、3万以上の人が住んでいます。観光資源も豊富で、靴下生産量日本一以外にも、“かぐや姫の里”と言われたり、古墳があったりと、観光ポテンシャルも非常に高いと思っています。家業を継いでから広陵町に戻ってきたのですが、あらためていい町だなぁという思いが生まれ、家業も広陵町も守りたいという思いが強くなりました」

広陵町を盛り上げるために、異業種・同業者との連携も考えていきたいとしている。

「S.Laboの近所に、日本酒醸造元の長龍(ちょうりょう)酒造が2022年3月に『長龍ブリューパーク』という公園併設のクラフトビールと日本酒が楽しめる施設をオープンされました。若い世代を取り込みたいという思いもあって、クラフトビール事業を始められたとのことで、おもしろい取り組みを一緒にやっていきませんかと声をかけました。ファクトリーブランドをされている靴下メーカーや、モノ作りをしている方とも連携して、2022年11月には『KORYO CRAFT FES』というイベントも開催しました」

国内の靴下業界は決して順風満帆ではない。靴下編み機自体の国内メーカーは既になく、コストの安い海外製品が大きく立ち塞がる。その難しさは感じつつも、出張さんは前を向いている。

「うちは小規模工場ですし、自社だけでやっていっても限界があるというのは感じています。昔のような状態に戻るということは難しいと思っていますが、どのように残っていきたいのか、続けていきたいのかということをひたすら考えています。流れ作業のようにただ靴下を作るのではなく、誇りを持って自分も従業員も働いていきたいです。家族にこういうものを作っているんだと、こういうふうに評価してくれる人がいるんだというのを話せる仕事・会社でありたいと思っています。“創喜”という社名が表すように、『日本一ワクワクできる靴下工場』を目指したいです。従業員が楽しくワクワク働き、お客様にも商品を通じて喜んでもらえるものを作り続けていきたいです」

チャリックスの次なる構想として「ドライブスルーチャリックス」を考えているんだそう。自分の自転車で来てもらい、その場で編み機につないで靴下を作っていく。自分の自転車で作ることで、より靴下への愛着がわきそうなアイデアだ。靴下への確かな技術と斬新なアイデアを持つ会社が、町を大きく変えていくかもしれない。

この記事のひときわ #やくにたつ
・自社の強みを生かしてブランディングをする
・モノだけではなく、訪問・体験という付加価値をつける
・地元と一緒に盛り上がる

取材・文=西連寺くらら

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