トイレ問題に挑む企業の狙い、そして未来を見据えた理由が深い!新スタイルの公衆トイレ「インフラスタンド」とは?
東京ウォーカー(全国版)
埼玉県所沢市に、公衆トイレを運営するというユニークな取り組みをしている企業がある。地元・所沢で水道工事業を営む、有限会社石和設備工業だ。自社敷地内に建造した「インフラスタンド」では公衆トイレが無料で利用できるだけでなく、シェアサイクルステーションやフリーWi-Fi、自動販売機も備える。
設置の背景にあるトイレや水道工事業にまつわる問題、インフラスタンドが果たす役割を紹介するとともに、設置のきっかけなどについて同社代表取締役の小澤大悟さんにも話を聞いた。
背景にある「トイレ」が抱える問題
有限会社石和設備工業によると、一般的にトイレや排泄にはネガティブなイメージがあり、不衛生な公衆トイレ、和式トイレが苦手な子どもたち、洋式化が進まない小学校のトイレ問題など、水道工事会社である同社は、これまでトイレを取り巻くさまざまな問題に直面してきたという。また、所沢では近年、官民一体となった町づくりが進んでさまざまなイベントが開催されているが、多くの人が集まれば集まるほど「トイレ不足」は大きな問題になっている。
それに加え、水道工事業の人材不足の問題も。インフラを支える人材不足は、今後深刻になることが予測されている。
そういった背景を踏まえ、自社敷地内に公衆トイレ「インフラスタンド」を建造。同社は、トイレ不足解消のためにインフラスタンドをトイレ休憩所として提供するだけでなく、2023年10月に開催された「ところざわまつり」では仮設トイレの設営も担当するなど、公衆トイレの運営を通して水道工事業の魅力を発信するとともに、所沢の地域活性化も目指している。
地域コミュニティとしても機能している「インフラスタンド」
「インフラスタンド」は所沢駅から徒歩10分、所沢航空記念公園から徒歩3分という好立地にある。無料で使える公衆トイレだけでなく、シェアサイクルステーションやフリーWi-Fi、自動販売機を備えていることから、「コミュニティスポット」としても機能しているという。
清掃は1日3回実施。大便器や小便器に加え、おむつや女性向けの備品を用意し、おむつ台やパウダースペースも備えるなど、誰でも快適に使える空間となっている。

清潔な公衆トイレだからできるマルシェの開催
インフラスタンドでは周辺のスペースを活かして、過去3回「KAWAYA市」というイベントを開催。「KAWAYA市」は週末のひとときを食べて飲んで楽しめるマルシェで、すぐそばに清潔な公衆トイレ(インフラスタンド)があるため、安心してゆったりとした時間を過ごせると評判は上々だ。
1回目は、所沢市主催の「TOKOROZAWA STREET PLACE」と「暮らすトコロマーケット」と連携して開催。2回目も所沢市の後援を受け、所沢航空記念公園の「市民文化フェア」、ところざわサクラタウンの「サクラまつり」と連携して開催した。

2023年11月には3回目として、所沢市と西武グループ3社の連携協定を踏まえて開催される「TOKOROZAWA DESIGN WALK」と連携。大規模イベントの一部として開催した。初となる夜のイベント「KAWAYA夜」も実施し、インフラスタンドがアートに変わるライブパフォーマンスは、盛り上がりを見せた。



「公衆トイレを作った理由は?」代表取締役に話を聞いた
今や、地域コミュニティとしての役割も担っている「インフラスタンド」。設置のきっかけや、トイレの運営って大変ではないのか…など、率直な質問を有限会社石和設備工業 代表取締役の小澤大悟さんにぶつけてみた。
――まず、石和設備工業とはどういった会社なのでしょうか?
【小澤大悟】今年(2024年)で56期目になる地元所沢を中心に活動している水道工事店です。一般住宅の水道トラブルから官公庁のインフラ整備、ゼネコン発注の大型案件も行っています。2019年より業界では水道屋の聖域と呼ばれる【トイレ】を使ったブランド「KAWAYA-DESIGN」を立ち上げました。トイレを使ったブランディングに取り組み、業界のイメージを変える「かっこいい水道屋日本一」を目指しています。
――「インフラスタンド」は無料で使える公衆トイレということですが、なぜ設置しようと思われたのでしょうか。
【小澤大悟】インフラスタンドの建築目的は3つあります。ひとつ目は、「地域コミュニティの活性化」ということです。人との出会いが私を変えてくれたことへの恩返しでもあるし、私自身も新しい出会いとともに成長したいと思っています。
【小澤大悟】2つ目は、「トイレのイメージアップ」です。トイレのネガティブなイメージを所沢で払拭し、トイレが生み出す経済効果を実現させたいと思っています。水道屋さんが主体的なビジネスを創出することで、もっとおもしろい職業にしたいです。
【小澤大悟】3つ目は、「水道工事業界のイメージアップ」です。「3K」や「底辺職」なんて言われることもある私たちの業界ですが、若い人に憧れられる職業にしたいと思っています。認知が上がることによるブランディングで、誰でもよかった水回りの工事を「あなたに頼みたい」と言われる状況にもっていきたいです。選ばれるということは私たちに価値があることになりますので、単価が上がります。その利益で社員の待遇改善を図り、採用につなげていきたいです。40代の私が若手扱いされる業界は、将来が見えないので…。
――インフラスタンドを利用する人が多いと、掃除や管理もそれだけ大変になってくると思うのですが…。
【小澤大悟】トイレは、設置後の維持管理のほうが大切になります。トイレのイメージアップを目的にするうえで掃除を含めた管理こそが本丸なので、力を緩めることなく取り組んでいきたいです。そしてきれいなインフラスタンドを通して、私たちの想いが利用者のみなさまに伝わったらうれしく思います。
――定期的にKAWAYA市を開催されていますが、トイレの周りでマルシェを開く目的や思いについて教えてください。
【小澤大悟】トイレが生み出す経済効果を体現することで、トイレがもたらす新しい可能性を証明していきたいです。トイレを整えると、集客ができる・話題性がある・生産性が上がる・社員満足度(顧客満足度)が上がります。いくら力説しても実績がなければ、お客様には費用をかけてトイレを改修しようとは思ってもらえないと考えています。まずは、自らが体現して世の中に新しい価値を提供していくことで、説得力のある状況を作っていきたいです。それをモデルケースにすることで、間接的にはインフラスタンド2号のような場所が所沢に増えていく動きを作れたらと思います。

【小澤大悟】また、自治会、学校、PTA、私たち専門家や地元企業に加えて行政も含めたすべての力で、パブリックスペースを作りたい。巨大資本や行政だけに与えられるのではなく「私たちが作る私たちのトイレ」は愛される公共空間であり、これは私にとってのインフラスタンドそのものです。完成して(与えられて)一瞬だけは喜ぶけれど大切にしない、大事にされないのは自分ごとに捉えられないという側面があるからだと思います。地域の人たちが自分のやりたいこと、理想のトイレを作り、生活に豊かさが加わる想像をしてもらうためにもインフラスタンドの未来をワクワクさせることが私たちの今後のミッションです。
――KAWAYA市の今後の予定がありましたら、教えてください。
【小澤大悟】次回は、前回同様11月を予定しています。例年通りだと2024年は11月16日~17日となりますが、周りの動きを見ながら決めたいと思っているのでまだ確定ではありません。決まり次第アナウンスしていきます。
「インフラスタンドが目指す姿は、所沢の町のシンボルとなり、公園のように多くの人が集える空間です」と語る有限会社石和設備工業は、これからも「トイレ」を通じて、ますます所沢の町づくりに貢献していくことだろう。
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