「長髪を守る」守護霊と、髪型変えたい美容師の激闘！怒涛の勢いで描かれるギャグ短編に爆笑【作者に訊く】

WEB上の個人制作漫画には、プロの漫画家が手掛けたものも数多く存在する。「ヒーローズ(コミプレ)」にて 「天津水市『がご』撲滅だより がごはん」 (※コミックス第1巻は2024年2月5日発売)を連載する漫画家のゆのこショウ(sho.t)( @shoshot005 )さんのオリジナル作品「呪われし髪　長髪死闘編」もそうした漫画の1つだ。

とある美容院を舞台に、5年間同じ髪型だったというロングヘアーの女性が入店するところから物語ははじまる。「どこも私の髪をカットしてくれなくて…」と意味深な言葉を残し居眠りを始めた女性客に戸惑いながらも、ばっさりとボブに切りそろえた店長。しかし次の瞬間、女性客はカット前の長髪に逆戻りしていた。髪型が戻ってしまうなか、何度となくカットを試みる店長だが、そこに「いつまで切れば気が済むんだ」と女性客の守護霊が現れ――、というストーリー。テンポのいいセリフ回しと展開が笑いを誘う短編作品だ。

現在連載中の「天津水市『がご』撲滅だより がごはん」のベースにもなったという同作。制作背景や連載への繋がりについて取材した。

「なんらかの形で活躍させたい」思い入れのあるキャラクターの誕生まで

――作品の着想と、どんな作品を目指して作られたか教えてください。

【ゆのこショウ】本作「呪われし髪 長髪死闘編」(※以下「呪われし髪」)は、別の読切作品 「みいちゃんと蛇神さま」 とともに元々一つの同じ物語がベースとなっていて、「髪の毛が全部蛇になった女性が美容院に訪れてオシャレな髪型にしてもらう」というネタが分裂してできたものです。「髪の毛が全部蛇になった女性」の設定は「みいちゃんと蛇神さま」に、「ベテラン美容師が変わった客を相手にする」という設定は「呪われし髪」にそれぞれ引き継がれています。

「呪われし髪」はその設定をベースに「切っても切っても髪が一瞬で生えそろうお客さん」というホラーチックなネタを加えどんどん発想を膨らませていきました。同一の髪型になってしまうのはきっと何かに呪われているんだろうということで守護霊を登場させ、それに対抗するには並みの美容師ではダメだということで店長に特殊能力を身に着けてもらいました。

――本作の店長とお客さんのひろみちゃん、そして「みいちゃんの蛇神さま」の茶川みいが、連載中の「天津水市『がご』撲滅だより がごはん」(※以下「がごはん」)のメインキャラとなっています。もともと「がごはん」の連載を見据えたパイロット版といった意味合いを含め制作されたのでしょうか？

【ゆのこショウ】もともと彼女たちはなんらかの形でメインとして活躍させたいと考えていたキャラクターなのですが、当時は「がごはん」の構想はなかったのでパイロット版というより、キャラクターを動かす練習としてとりあえず漫画を描いてみたという感じでした。「がごはん」を構想し始めたときに、彼女たちを上手く活躍させられるかもしれない…と思いそれぞれの作品のキャラを登場させてみたのですが、偶然にもいい感じにメンバー間のバランスがとれた気がしたのでうれしかったです。

――「がごはん」では、髪に限らず不思議な存在「がご」が闊歩する地方都市の日々が描かれていて、キャラクターのみならず同作のノリを継承しているように感じます。連載に繋げるにあたって、「呪われし髪」で描こうとしたことを残した部分や、逆に方向性を変えた点があれば教えてください。

【ゆのこショウ】連載する際にキャラや設定を一部変更した点があります。「がごはん」に登場した「うめこさん(店長)」と「ゆうちゃん」は、当初「呪われし髪」に登場したときの名称「店長」と「新人」のままでいこうと思ったのですが、アニメ「ザ・ペンギンズ from マダガスカル」のリスペクトなのが透けて見えてしまうので、新人はちゃんと名前で呼ぶようにしました。

それと読み切り時では彼女たちは「美容師」という設定だったのですが、お客さんのヒゲや眉を整える描写も入れたかったので、「理美容師」に変更しました。それに伴い、彼女たちの使う特殊技能も理美容技(カッティングアーツ)と名付けたのですが、まだ紹介しきれてない技も多いので、なんとか「がごはん」本編中で全部紹介したいな…と考えております。ちなみに「呪われし髪」に登場した守護霊はごく普通の守護霊なので、「がごはん」に出てくる「がご」とは一切関係ありません。

――先日は「がごはん」のコミックス第1巻が発売されました。本作で「がごはん」に興味を持った方に向けて、どんな作品かメッセージをいただければ幸いです。

【ゆのこショウ】「がごはん」は熊本県の架空の街を舞台にした、一般市民たちと「がご」と呼ばれる怪物の戦いを描いたギャグ漫画です。「がご」という名称も熊本一部地域の方言からとってますし、ほかにも地元ネタを少しずつ入れているのですが地元の方もそうでない方も楽しめる作品作りを心掛けていきたいです。

また線の太さやトーンの濃淡の表現、コマ割りや物語の構成など漫画として未熟な部分も多い本作ですが、個人的にはまだまだ伸びしろがあると思い込んでおります。頑張ってもっと上達したいです。

現在お付き合いいただいている読者の方々には、今後ともがごはんの面々と「がご」との戦いの行方を見守っていただけると幸いです。基本一話完結のエピソードが多いので、まだお読みでない方も最新話や単行本から読んでいただけると大変ありがたいです。

取材協力：ゆのこショウ(@shoshot005)