大人計画の衝撃的作品「業音」が15年を経て再演、関西に初登場!

関西ウォーカー

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舞台「業音」で主演を演じる平岩 紙撮影:Jin Take


WEB連載「はーこのSTAGEプラス」Vol.46をお届けします。

大人計画の松尾スズキが作・演出し、“悲劇”をテーマに描くプロデュース公演「日本総合悲劇協会」。このニッソーヒ第3弾として2002年に初演した「業音」が、15年の時を経て再演。8/10に東京で幕を開け、関西に初登場する。大人計画旗揚げ30周年を目前に、劇団初のパリ公演が決定。全国5か所の公演終了後、フェスティバル・ドートンヌに参加する。

演歌歌手として再起を目指す元アイドルを主人公に、不幸が不幸を呼び、負の連鎖が奇怪にうねっていく物語。人間の業や執念、情念を描き、生々しい感情をさらけ出す人物造形が話題となった衝撃作だ。初演は荻野目慶子が主演。松尾の思いも強く、新たな作品に作り上げるまでに初演のイメージを引きずらない時間として、その封印解除には15年という歳月が必要だった。

今回は、平岩 紙が劇団公演で初主演。生まれも育ちも大阪・吹田で「太陽の塔の裏にある黒い太陽を見て泣いてました(笑)。今もたまに行きます」という、バリバリの大阪人だ。意外な感じを受けたものの、話を聞くうちに”あぁ、やっぱり大阪人や”という瞬間も(笑)。稽古中に来阪し、作品への思いと初主演の意気込みを語った。

舞台「業音」が、15年の時を経て再演!撮影:田中亜紀


【「業音」のこと】

 「大人計画の作品の中で独特なんです、この作品だけが。似ている作品がほかになくて、1個だけ浮いてる。松尾さんが15年間、手が出せなかったという気持ちもわかります。作品が思い出の扉の向こうに封印されてて、今回それをガッと開けたら、当時の空気のまま、ぶわっと襲われそうな感じというか…。開けるの怖かったけど、開けちゃった、みたいな。今回、敢えてゲストを呼ばず、劇団員だけで向き合ってみようと思った松尾さんの気持ちもわかるなと」

【劇団公演で初主演】

「松尾さんに”どうせ主演するなら、一筋縄ではいかない作品の方がいいだろう”と言われて。ずっと再演したいという話は聞いていたんですが、まさかそれを自分がとは思ってなくて、私で大丈夫なんだろうかと思いました。初演が荻野目さんの空気で充満していた舞台という印象だったので。でも、劇団で17年経験を積んで来て、ようやく向き合えそうなタイミングでもあり、挑戦させてもらおうと。これは松尾さんの強い思い入れがある作品なので、ちゃんと背負ってしっかりやんなきゃ、と思っています」

8月10日から9月3日(日)まで東京芸術劇場シアターイーストで上演されている東京公演の写真が到着!撮影:田中亜紀


【初演のこと】

「堕落した若い兄弟の妹役で、宙吊りでギターを弾く役でした。さまよいながら演じていましたね。どこまでもさまよえる作品なんです。終わった時も終った感じがしない、やりきったなんて一生言えないんじゃないかな、みたいな。お客さんの反応も、どよ~んとしてました(笑)。エライもん観てしもた、みたいな空気で。いい虚脱感があって、芝居の世界から抜け出すのに時間がかかるかも。観終ってすぐに、友達としゃべり合えない感じというか。今回は先輩の池津(祥子)さんが、初演の私のセリフをしゃべっていて、なんかすごくおもしろい。同じ作品で役が変わって出演させていただくのって新鮮ですね」

【落ちぶれた元アイドル・みどり役について】

「やらなきゃいいのに手ぇ出しちゃって、不幸に転がって行く人。誰かにもたれかかって生きようとしてる。友達になりたくないって思います。”日頃の行いがそんなんやから、そうなってんねんやん、人生”って言いたくなるような(笑)。自分とは真逆の生き方をしてるなと。私は人に頼るのはあまり好きじゃなくて、なるべく自分の力で人に迷惑かけないで生きて行きたい。”男やね”って、よく人から言われます(笑)」

舞台「業音」はパリにあるパリ日本文化会館・大ホールでも上演される撮影:田中亜紀


【作品のテーマのこと】

「泥臭くても、かっこ悪くても、欲むき出しで必死で生きようともがいてる。人間臭いって、こういう感じかなと。誰しも失敗したり、踏み外したりする瞬間はありますしね。でも、生きる希望を持ってる。結局、生きるという話なんです。初演から15年経った今も、描かれている社会的な問題は変わってないなと思います。松尾さんは”いろんな人が演じて上演され続ける、普遍的な作品にしたい。今回は劇団員で、初演とはまた違う新しい『業音』を作りたい”と」

【意気込み】

「今回、初演を気にせず、まっさらなところから始めて新しく取り組もうと思っています。どうしようもないけど、こういう生き方って人間らしいなと共感してもらえるように、説得力を持って演じたいですね。決してかっこいい生き方じゃないけど、そこにも愛着を持っていただきたいなと思っています。松尾さんの作品は過激なことをしているようでも、裏の深いところに優しさが流れているから、隠れたメッセージを感じ取っていただきたいです。”笑っていいの?”って、お客さんが思いそうですけど、笑ってほしいです(笑)」

【関西ウォーカー編集部】

演劇ライター・はーこ

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