【第24回】地元で愛され続ける昔ながらのパン屋さん「サカエパン」
東海ウォーカー

JR岐阜駅の南口を出て、最初の交差点を渡ったすぐのところに店を構える「サカエパン」。誰もが気軽に食べられる“低価格でおいしいパン”をモットーに、1日あたり60~70種類のパンを焼いている。近所のお婆さんや小さな子どもを連れたお母さん、学校帰りの高校生など、地元のたくさんの人たちに愛されている人気店だ。
昭和22年にパンの卸しとして創業

同店の創業は戦後間もない1947(昭和22)年。もともとは市場や青果店にパンを卸すパン工場(こうば)としてスタートしたという。「それより昔の戦前は、かりんとうなどの菓子を作っていたと聞いています」と話すのは、3代目店主の高木芳継(よしつぐ)さん。

転機が訪れたのは今から20年以上前。バブル崩壊で取引先が半減したことをきっかけに、一般向けの小売業へと舵を切った。工場に隣接する自宅兼パン置き場を改装し、1992年にパン屋を開業。しかし当初は1日の売り上げが5000円に満たない日も少なくなかったという。

その後、地元のテレビ番組に取り上げられたことで客足が増加。卸しのころから培ってきたパン焼き技術と、創業者の妻で「すまんなも」が口癖だったというさきのさんの温かい人柄が、少しずつ地域の人たちに知れ渡っていった。

一番人気は「あんぱんちゃん」
毎朝、高木さんが仕事を始めるのは早朝4:00ごろ。「これから会社や学校で1日がんばろうという人たちに、おいしいパンで元気をつけてもらいたい」と、店がオープンする6:50に合わせて約20種類のパンを焼き上げる。その後も休む暇なくパンを焼き続け、もっとも多くの種類が店頭に並ぶのは昼前後。そこからさらに夕方まで、1日かけて60~70種類のパンを焼いている。

一番人気は北海道産の小豆を使ったあんがたっぷりと入る「あんぱんちゃん」(120円)。甘さ控えめの食べやすい味が特徴だ。1回に焼く数はおよそ70個。それを平日は6~8回、土日は10回以上も繰り返し、多い日は1日で800個を売り切ることもある。

そのほかの人気商品は、卸しのころから作り続けているという「やきそばくん」(170円)や「カスタードシナモンちゃん」(170円)など。なお、同店は総菜系のパンを「◯◯くん」、おやつ系のパンを「◯◯ちゃん」という商品名で統一。かわいくてわかりやすいと評判だ。


昔からの定番商品がある一方で、高木さんは新商品の開発にも力を入れている。近年のヒット作はフランスパンをベースにした「フランスビーフカレーくん」(170円)など。「やっぱり新しい商品もあったほうが、お客さんもうれしいですよね」と、毎月必ず1品は新しいパンを考案している。
誰もが気軽に食べられるパンを
店頭には高木さんの母である紀子(のりこ)さんや妻の菜穂子(なおこ)さんら、エプロン姿の女性スタッフが立つ。常連の客がやって来ると、楽しいおしゃべりに花が咲くことも。「かわいらしいお孫さんを連れてきてくれる昔からのお客さんや、親子3代で通ってくださる方も少なくありません」と紀子さん。特に昼前後は次から次へと客がやってくる。1日あたりの客数は多い日で500人を超えるという。

卸しの時代も含めると、この地でパンを焼き続けて70年。昔から大切にしてきた“低価格でおいしいパン”というこだわりを今も変わらずに守り続けている。「このあたりは年金暮らしの高齢者や学生さんも多いですからね」と高木さん。これからも誰もが気軽に足を運べるパン屋であり続けたいと語ってくれた。

決して派手さはないものの、堅実においしいパンを焼き続けている「サカエパン」。地域に欠かせない昔ながらのパン屋さんとして、今後も多くの人に愛されていくだろう。【東海ウォーカー/藤原均】
藤原均
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