中川紅葉のエッセイ連載!まだ消化しきれない、ほろ苦い記憶「音楽をやめたのは“逃げ”だった」/ココロすっぴん#35
東京ウォーカー(全国版)

青山学院大学に在学する現役女子大生で、演技やバラエティなどマルチに活躍している中川紅葉さんによるエッセイ連載「ココロすっぴん」。かなりの読書家で、大学生・タレント・インフルエンサーなどのさまざまな顔を持つ彼女が日々感じたことを、忖度なく書き綴ります。第35回は、2023年末に音楽活動をやめてから音楽と距離を置いていた話について。

#35「なくなった右耳のイヤホン」
今まで何を思って何の音楽を聴いていたのかも覚えていない。それでも、早朝のロケバスで、何かを考えてイヤホンを耳に付けたことを思い出した。誰かを思い出す時も、考え事をする時も、落ち着きたい時も、音楽を離さなかった。
7月終わり、そんなことを考えながら朝早くに窓の外を見ながらイヤホンを突っ込んだ。久しぶりの感覚だった。
ワイヤレスイヤホンを自宅で片方落とし、なくした。音量を最大量にして、爆音で行方不明の片耳のイヤホンを探す。目の前のあたりでなっているその音を頼りに探しているが、嘘のように見当たらない。何かが心で引っかかって、答えに辿り着けないモヤモヤの感覚と似ていた。

去年の大事な日に決起として買ったものなのに。そう思いながら、同じ機種の色違いのイヤホンをその日に新しく買いに行った。その日以来、せっかく買ったのだからと音楽を意識的に聴くようになった。
音楽を聴かないようになってから、かれこれ半年以上が経った。12月にバンドを“個人の仕事を優先して”という理由で引退してから、そんなに経ったのかと感傷に浸っていた。何をしている時が1番幸せか、という質問に、真っ先にライブをしていた時と思い浮かんだのに言えなかったことが、一番の後悔だった。「バンド、やめたんですよね」と言わなくてはいけない場面に何度も遭遇して、その度に音楽を捨てたことに実感が湧いていた。

好きなものを手放すのも、何かに見切りをつけるのも、大人になったら簡単になってゆくものだと思っていた。なにより、自分は“仕方ない”と割り切ることが上手いとすら思っていた。(エッセイ本には書いたけれど、)大人にならざる得ないことが、人より多かったから。きっと自分はそんな大人だと信じていた。
それなのに、ライブに行っても素直に楽しめない。すごく心は躍るのに、どこか喪失感があった。やっぱりどうしても諦めたくなかったのだな、と。離れるのは簡単でも、すぐに忘れることはできない。なんか恋愛に似てるな、なんて今になって呑気なことを思った。
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