中川紅葉のエッセイ連載!まだ消化しきれない、ほろ苦い記憶「音楽をやめたのは“逃げ”だった」/ココロすっぴん#35
東京ウォーカー(全国版)

体裁を保つための不純な気持ちがあった
好きならやめなければいいじゃん、もう一度やればいいじゃん。そう言われて、どこか納得していた。でも、他のメンバーまで道連れにして、自分の好きを強要させる自信はなかった。
高校生の頃、部活でバンドメンバーに「紅葉の熱量についていけない」と脱退させられたことがあった。今考えたら、それ言わせてしまったのも、私の強要とエゴが産んでしまった出来事で、何も反論すべきではなかったのだろう。

また、そんな風に好きなことを失いたくなかった。今度は、熱量を感じられないと言われるのではないかと、自分が終わりにしてしまうのが怖かった。
音楽をやめたことを、「逃げ」だと今は思っている。良い形で終わりにしたいからだとか、それこそ“去り際を考える”の中に、体裁を保つためのそんな不純な気持ちがあったことに気がつく。なんて我儘だったのだろう。でも今はそれ以上に、当時取るべきだった最良の策を、半年以上経ってもまだ見つけられていないことの方が悔しい。何のために芸能を目指したのか、何がしたくて人目につくことを選んだのか。自分にも、メンバーにも、それが間違っていないことだったのか、まだ分からない。
いつか、フェスに行っても、素直に音楽を楽しめる日がくるのだろうか。今はそんなことを考えている。

【ヒトコト】
7月から地方や国外にお仕事が多く、窓から知らない街を見る時に音楽を聴きたいと思うようになりました。今回はそんな中思いついたエッセイを書きました。
同じ環境に居続けると、凝り固まって、本心で何がしたいか分からないような気がして、最近はなるべく色んな場所に足を伸ばすようにしています。
いつも8月は、誕生日前ということもあり、最後の悪あがきをするのです。この年にここまで成長できたと自分で思いたいから。きっと私にとっての旅は、吸収を感じるひとつに今はなっているのかもしれないなと。そのおかげで、また音楽が好きだと気が付けたしね。
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