岡田将生「長谷川泰子、中原中也、小林秀雄の男女三人の描き方が格別におもしろい」最新映画「ゆきてかへらぬ」が公開
東京ウォーカー(全国版)
実在した女優の長谷川泰子、天才詩人の中原中也、評論家の小林秀雄の不思議な三角関係を描いた映画「ゆきてかへらぬ」。「ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜」などを手がけた根岸吉太郎さんが監督を務め、NHK連続テレビ小説「虎に翼」や映画「ラストマイル」など話題作への出演が続く岡田将生さんが小林秀雄を演じている。
本作の撮影秘話や、長谷川泰子役の広瀬すずさん、中原中也役の木戸大聖さんとのエピソード、さらに映画館の思い出や最近おすすめのドラマなどを、根岸監督と岡田さんに語ってもらった。

根岸監督「岡田くんは芝居に対していろいろな角度から攻められる人だと思っていた」
――本作のオファーをいただいた時はどのような心境でしたか?
【岡田将生】根岸監督とご一緒してみたかったので、お声がけいただけてすごくうれしかったです。脚本を読ませていただいたら、長谷川泰子、中原中也、小林秀雄という男女三人の描き方が興味深く、読み物として格別におもしろかったので“なんて素敵な脚本なんだろう”と夢中になりましたし、撮影がとても楽しみでした。
――小林役は岡田さんにピッタリで素敵でしたが、監督にとって、岡田さんのどのようなところが小林役オファーのポイントとなったのでしょうか?
【根岸吉太郎監督】岡田くんは芝居に対していろいろな角度から攻められる人だと以前から思っていました。たとえば、商業的な映画やテレビドラマだけじゃなく、舞台「ハムレット」や「ガラスの動物園」、それからわりととんがった演劇にも参加されています。
そういったことから彼の“役者としての貪欲さ”みたいなものを感じて、小林秀雄という役に興味を持って挑んでくれるのではないかと、そう感じてオファーしたら、しっかりと期待に応えてくれました。

――岡田さんは小林秀雄を演じていくなかでどんなことを感じましたか?
【岡田将生】小林秀雄さんは実在した方なので、いつも以上に慎重にならなければいけないと意識しながら演じていました。そんななかで気づいたのは、小林が泰子と中也を見ている時の目線と、自分自身が泰子と中也を見る時の目線がけっこうリンクしていたこと。だからなのか、監督は自由にやらせてくださいましたし、その姿をにこやかな表情で見てくださっていたのが印象的でした。
【根岸吉太郎監督】今回は岡田くん、広瀬すずさん(長谷川泰子役)、木戸大聖くん(中原中也役)の三人に対して芝居に関するリクエストは特にしなかったんです。もちろん「こっちからこういうふうに動いて」とか「ここでこう向いてくれ」といった動きの指示や気になった部分はその都度伝えたりはしましたけれど、その程度でしたね。
本作の主な登場人物は実在する人物で、資料もたくさん残っていますから、みなさん資料と台本を読み込んで役作りしてくるわけですよね。そしていざ現場に入ったら、今度は三人がぶつかったり混じり合ったりして芝居が生まれていく。それがすごくいいなと思ったので、あまりこちらから「こうしてほしい」といったお願いはしませんでした。
【岡田将生】監督から小林に関する情報をいただいたり、お芝居に関する希望を伺ったりしながら、自分の中で小林秀雄という役を構築していく時間がすごく楽しかったです。
監督の映画を撮る姿を拝見していて“真摯な方だな”と感じましたし、それと同時にユーモアのある会話で現場を和ませてくれるような“無邪気さ”もとても素敵だなと思いました。“あぁ、これが映画の現場なんだな”と実感できたのもうれしかったです。
【根岸吉太郎監督】ちょっと褒めすぎじゃない?(笑)。
【岡田将生】いやいや、本当のことですから(笑)。

――広瀬さん、木戸さんとお芝居してみて印象に残ったことを教えていただけますか。
【岡田将生】脚本や台本を読んだ時以上に、三人の中で何か渦巻いているようなものを常に感じていたからなのか、本作の撮影期間中はいい意味で疲弊していたのを覚えています。
泰子も中也も小林もブレない強さを持っているので、演じている僕ら自身のエネルギーが混じり合う瞬間もあって、それが快感に感じられたというか。この三人のセッションだからこそ生まれているものなんだと思えて、それがすごく楽しかったです。
――先ほども「楽しかった」と仰っていましたが、今お話しされている表情からも充実した撮影だったことが伝わってきます。
【岡田将生】最初は小林を演じることに対して“不安だな”と思うことももちろんあったのですが、監督やスタッフの方々が撮影を“楽しもう”としているように見えたので、僕も“これは楽しむべきなんだ”と思いました。その瞬間から現場での意識が変わって、役について考える時間が楽しめるようになりました。

泰子の揺るがない強さは小林が持っていないもの「そこに惚れたのではないかなと思いながら演じていた」
――監督は泰子、中也、小林の関係性をどのように捉えて本作を作っていかれたのでしょうか。
【根岸吉太郎監督】すごく微妙なトライアングルですよね。中也と小林はお互いの才能をものすごく認め合っていて、小林は「お前、天才だよ」なんて恥ずかしいことを中也に向かって言ったりもします。それはつまり相手のことを信じているわけで、中也の才能だけじゃなく人格をも心のどこかで愛してしまっている。
そのことに対しての嫉妬心や嫌な気持ちが泰子の中にあって、そういうものが渦巻いてすごく不思議な三角関係を作っていると、そんなふうに捉えながら撮っていました。
【岡田将生】撮影で印象に残っているのが、泰子が中也の家を出て小林の家に向かう時に、なぜか中也が泰子の荷物を持って小林の家まで一緒に行き、そのあと三人で会話をするシーン。“なんで中也は荷物を置いてすぐに帰らないんだろう?”とすごく不思議でした。
会話中、泰子は小林の隣じゃなくずっと二人の真ん中に座っているし、小林は「コップはそこだから」と泰子に対して普通に指示を出したりしてちょっと怖い(笑)。この三人は一体なんなんだろうと思いました。とても強烈なシーンなので、いまだに忘れられなくて印象に残っています。

――中也が普通に座って二人と会話しているのがおもしろくて笑ってしまいました。
【岡田将生】そのシーンの撮影時に、泰子の揺るがない強さは小林が持っていないもので、そこに惚れたのではないかなと思いながら演じていた記憶があります。
【根岸吉太郎監督】中也は彼女のそういう強さに早いうちから絡め取られちゃったんだと思う。小林は自分が天才だと思っている中也が惚れている女性にすごく興味があるわけで、中也の目をとおして泰子を見ていたところもあるかもしれないね。もしもたまたま泰子とどこかで会っただけなら小林との関係性は違っていただろうと、そんなふうに思います。
【岡田将生】泰子の生命エネルギーはすごく強いと感じたのですが、きっと中也は吸い取られ、小林はそんな中也を見て怖くなって逃げたのかもしれません(笑)。
【根岸吉太郎監督】いや、小林も吸い取られきったあとで逃げたかもしれないよね(笑)。

――個人的には泰子と中也がダンスを踊り、そこに小林が割り込んで話しかけるシーンがすごく印象に残りました。ぜひダンスシーンの撮影についてもお話を伺えたらと思います。
【根岸吉太郎監督】ああいうシーンはミュージックビデオのようになってしまうこともあるから、編集も含めて気をつけながら作らないといけないんです。だから難しかったですね。
【岡田将生】僕は広瀬さんと木戸くんが、とにかくダンスの練習をたくさんして本番に挑んでいた姿が印象に残っています。
【根岸吉太郎監督】小林はそんなに踊らないけれど、岡田くんは二人のダンス練習にずっと付き合っていましたよね。そんな岡田くんを見て、あまり踊れない小林のダンスシーンをもう少しだけ足そうかなと思ったぐらいです。
【岡田将生】僕は三人でダンスを練習している時間がとても楽しかったので、小林のダンスシーンの長さはあまり気にせずに二人と踊っていました。木戸くんが無我夢中でダンスと向き合っている姿は中也そのものでしたし、広瀬さんと木戸くんが踊っている姿も泰子と中也に見えたので、それがすごく素敵で。小林のように嫉妬して、“ずるいなぁ”と思いながら二人のことを見ていました(笑)。
【根岸吉太郎監督】泰子と中也が踊っている最中に喧嘩になっても止めに入らずに小林はただ見ている。そういう関係性がおもしろいよね。
【岡田将生】喧嘩を見た人が小林に「なんですか?あの二人」と聞いてきますが、それに対して「愛情を交換し合ってる」と返すところもまたいいですよね。
【根岸吉太郎監督】三人の関係性はこの時代にしかなかったもののように思うし、とても映画的ですよね。

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