コーヒーで旅する日本/四国編|日々、刻々と移ろう気分に寄り添うコーヒーを。「LUSH LIFE COFFEE」が思い描く“みずみずしい生活”の深意
東京ウォーカー(全国版)
全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。瀬戸内海を挟んで、4つの県が独自のカラーを競う四国は、県ごとの喫茶文化にも個性を発揮。気鋭のロースターやバリスタが、各地で新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな四国で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが推す店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

四国編の第22回は、香川県高松市の「LUSH LIFE COFFEE」。高松を代表する観光地・栗林公園のお膝元にあって、2019年のオープン以来、海外からのお客にも支持を得る気鋭の一軒だ。店主の川染さんも、オーストラリア・メルボルンでバリスタ修業を積んだ経験の持ち主。個性豊かなカフェが街に根付くメルボルンのコーヒーカルチャーに触れ、地元高松で現地のクオリティを再現し、コーヒーを楽しむ日常を提案している。「生活のリズムの一部として、いろんな場面で普段使いしてほしい」という川染さんが、店名の“LUSH LIFE”に込めた思いとは。

Profile|川染高太郎(かわそめ・こうたろう) ・未樹子(みきこ)
1978年(昭和53年)、香川県生まれ。愛媛で過ごした学生時代、飲食店でのアルバイトをきっかけにバリスタの道へ。同業の先輩の勧めで、ワーキングホリデーを利用してオーストラリアに渡り、バリスタとして働きながら、現地のカフェカルチャーを吸収。帰国後は、高松のスペシャルティコーヒー専門店の先駆け・アロバー、静岡、東京のカフェや調理専門学校の講師を経験。N.Y.発のベーカリーカフェ・THE CITY BAKERYで、同僚だった現在の奥様・未樹子さんと出会い、2019年、地元の高松に戻って「LUSH LIFE COFFEE」を開業。
メルボルンで体感したバリスタの醍醐味

高松を代表する観光地の一つが、国の特別名勝・栗林公園。街なかにそびえる紫雲山を借景とした、日本最大級の大名庭園は、海外のトラベルガイドで3つ星を獲得するほど、今や世界的な名所ともなっている。「LUSH LIFE COFFEE」が店を構えるのは、栗林公園のお膝元という立地。「お客さんは、海外からの観光客も含めて、県外の方が半分以上」と店主の川染さん。ただ、観光地でありながら店はまばらなエリアとあって、地元の人々にとっては穴場のロケーションだという。
「この辺りは、かつて市役所などがあった名残で古くから続く店は点在していますが、あまり新しい店ができなかった場所。だから地元のお客さんが逆に少ない。海外では、どの国も国立公園のお膝元は賑わっています。でも、ここは賑わいが少ないから、もったいないなと感じてました」。川染さんがそんな印象を持ったのは、自身がバリスタとして海外で働いた経験があるからこそだ。

学生時代を愛媛で過ごし、当時からカフェ、レストラン、バーなどの仕事に親しんできた川染さん。そのころに出会った仕事場の先輩から、本格的にバリスタを目指すなら、オーストラリアに行くことを勧められたことが、海外に渡るきっかけとなった。特に勧められた街が、個性豊かなカフェが日常に根付くオーストラリア。ワーキングホリデーで渡豪して、約4年を過ごした。「1年目は違う仕事に就いて、2年目はメルボルン、その後、ニュージーランドに移り、4年目から本格的にバリスタとして技術の向上を目指しました。現地での仕事はめちゃくちゃ楽しかったですね。どこに行ってもおいしいコーヒーが飲めるうえに、品質に対して安価だから、毎日でも通うお客さんがほとんど。日々、店に来ては何かしらの会話があって、生活の中にコーヒーを楽しむ環境が浸透しています。そうしたローカルなサービスを愛する気質が強いので、あのスターバックスも入り込めなかったほど。ほかの町とは空気感が違うのを肌で感じました」と振り返る。その後、高松に戻って、地元のロースターのパイオニア的存在である老舗・アロバーで、スペシャルティコーヒーの多彩な酸味の魅力に触れ、1年を経て今度はニュージーランドへ。さらに、再びメルボルンに移り、のべ3年ほどを海外で過ごした経験は、川染さんにとって何よりの財産だ。

今この瞬間の気分に合わせたベストな一杯を

帰国後の2013年からは、静岡や東京など国内を渡り歩き、バリスタや調理専門学校の講師などを経て、N.Y. から日本に上陸したベーカリー・カフェTHE CITY BAKERY品川店へ。その後、大阪梅田店に移り、現在の奥様・未樹子さんと出会う。お互いにバリスタとして勤め、2018年、独立を視野に高松に帰ってきた。当初は自家焙煎も考えたそうだが、「豆の販売よりはサービス重視で、コーヒースタンドとしてやりたいとの思いがありました。メルボルン時代の経験から、豆の品質だけでなくサービスや店の環境が味にも影響すると感じていて、やるからにはバリスタとして常にクオリティの高い仕事をしたかった」と川染さん。そこでコーヒーは、東京のOBSCURA COFFEEにオリジナルの豆を依頼。スペシャルティコーヒーが好きな人にも、深煎り党にも受け入れられる味わいを目指した。
「東京にいるときによく行っていましたが、スペシャルティの専門店でありながら、極端な浅煎りにならない、バランス感がいいなと思っていました。また、ダイレクトトレードで豆を仕入れているのも大事なポイント。アフリカ系の豆は店で独自に買い付けているもので、個人店ではなかなかできないこと」。中でも、店の顔となるべきブレンドは、ドリップ用とエスプレッソ用の2種類を提案。メルボルンにいたころ、最も印象に残った店で飲んで以来、思い入れあるルワンダをベースにしている。「ブレンドとは別に、シングルオリジンでも提供しています。今のブレンドは、スペシャルティコーヒーならではのユニークな風味をかけ合わせて、相乗効果を引き出すイメージ。店のキャラクターが出るものですから、普段、コーヒーを飲みに行くときもブレンドに目が行きますね」

ドリップ用のブレンドは、ひと口目にはビターな香味が立つが、徐々にみずみずしい果実味へと移り変わる。まさに深煎り、浅煎りのいいとこどりのような、味わいの変化が印象的だ。またエスプレッソを使ったメニューには、オーストラリアでポピュラーなフラットホワイトも定番に。まろやかなミルクの甘味と華やかなコーヒーのフレーバーが心地よく広がる。ほかにもバリエーションは幅広いが、川染さんのいち推しはマキアートだとか。「オーストラリアでは、その店のエスプレッソのおいしさを測るものとして、初めて訪ねた店で必ず注文するそうで、いろいろあるなかで最後にはマキアートに行きつくと聞きました。コーヒーの味を活かしつつ飲みやすさも加味したマキアートは、日本ではいまだになじみが薄いんですが、こちらからおすすめすると気に入って下さる方は多いですね」。現地のカフェカルチャーに触れられるのも、この店の楽しみの一つだ。

コーヒー豆は常時7、8種をそろえるが、「お客さんの気分は日によって違いますから、そのときのベストな一杯を出すためにも、幅広いレンジの豆が必要。バリスタは、店の内と外、両方に接してつなげる存在。ロースターから届く豆を、お客さんにどうプレゼンして、そのときの気分にフィットさせるか、常にバランスを取るのが大事な役割」と、会話を通した当意即妙の対応力こそが川染さんの真骨頂だ。
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