「農」という地域資源を通して、相互扶助で暮らす社会をめざす埼玉・宮代町の「新しい村」
東京ウォーカー(全国版)
自然豊かな田園風景が広がる埼玉県・宮代町(みやしろまち)にある、「農」をテーマとしたコミュニティエリア「新しい村」。地域の自給自足促進やコミュニティづくり、宮代町の農業を支える場所としてどのような活動が行われているのか、総務経理課課長の千葉美香さんと、農園交流主任の今井真紀さんに話を伺った。

宮代町に「新しい村」が整備されたのは2001年のこと。「宮代町には水田や屋敷林など日本の原風景が残り、自然が豊かで住みやすい町です。一方で時代の流れとともに兼業農家が増え、田畑が維持管理できないところも多くなってきました。こうした田んぼや畑を、町で管理していこうと新しい村が立ち上がりました」と千葉さんは創立の経緯を話す。
「新しい村」は3つの柱をコンセプトとしている。ひとつは地産地消の促進だ。敷地内には農産物直売所森の市場「結(ゆい)」があり、地元で採れた旬の野菜や果物、また地元の食材を使った総菜や弁当などを販売している。また、町内で採れた野菜は新しい村を通して学校給食や町内福祉施設などの食材としても使用されている。「生産者と消費者をつなぐ場所として、結と名付けられました。宮代町の農産物を広く知っていただければと思っています」と千葉さんは笑顔でいう。



2つめはコミュニティの創造だ。新しい村では、農や食をテーマにしたさまざまな体験や講座を開催。宮代町の農の象徴ともいえる「ホッツケ田」で行う田植えと稲刈りの体験は県内外から年間約1000人が訪れるという。ホッツケ田とは、沼地を掘り上げて作った田んぼ「堀上田」のことで、掘り下げられた部分は水路となり、小生物や淡水魚の棲み家となる。まさに自然と人の暮らしが共生する田んぼだ。体験を担当する今井さんは「私たちが管理し大切にしながら、宮代町のホッツケ田の風景を、未来に残していきたい」と話す。
新しい村では、ホッツケ田での体験のほかにも、ジャガイモやブルーベリーなど、さまざまな収穫体験を行っている。




3つ目は、「宮代の農を支える」だ。新しい村では、耕作できなくなった農家の田畑を預かって米や野菜を栽培したり、耕作放棄地の草刈りなど農作業の受託を行うほか、市民農園の支援も行っている。
市民農園には無洗米加工時の副産物である有機質資材「米の精」を配布。これは、「SDGs未来都市計画」として各市町村と連動した取り組みを推進する埼玉県下の宮代町を含む5つの市町村に対して、東洋ライス株式会社が提供したもので、土壌を元気にする効果が見込めるという。「市民農園は72区画あり、食の安全に意識が高い多くの人たちが無農薬栽培に取り組んでいます。米の精は、とぎ汁として家庭から流されていたものを工場段階で機械的に取り除いた、いわば『とぎ汁のもと』で、ムクドリが食べに来るほど安全な資材です。2月下旬に市民農園や村内の畑、田んぼの土に鋤き込みましたが、今後の作物の成長が楽しみです」と千葉さんと今井さんは笑顔で話す。このほかにも、村内のカフェや直売所から出る生ゴミを堆肥にして使用するなど、サーキュラーエコノミーをめざして農に取り組んでいる。



新しい村ではさらに村内を流れる内郷用水に浄化用水路を設置。生活排水から出る雑排水を水質浄化システムできれいな水にし、農業用水として利用している。「宮代町の人たちと共存できる仕組みのひとつです」と千葉さん。農を中心に、人と人、人と自然が共存しあいながら暮らせる社会の実現をめざし、新しい村の取り組みはこれからも続く。


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