「低投入、内部循環、自然共生」をモットーに、循環型農業とゼロ・ウェイストに取り組むローカルスーパーマーケット「渥美フーズ」
東京ウォーカー(全国版)
愛知県の渥美半島を中心にスーパーマーケットを展開する株式会社渥美フーズ。地域環境に配慮した「ゼロ・ウェイスト」のスーパーやレストランが話題を呼んでいる。2022年からは循環型農業にも着手。代表の渡会一仁さんに話を伺った 。

循環型農業のきっかけとなったのは、渥美フーズが2020年から取り組み始めたゼロ・ウェイストスーパーだ。「ビオ・あつみ エピスリー豊橋店を設計しているときに、お客さんからもらった1冊の本で目からウロコが落ちました」と話す渡会さん。「その本とはアメリカの女性が書いた“ゼロ・ウェイスト・ホーム”で、ゴミを出さないシンプルな暮らしのことが書かれています。ちょうど食品ロスや海洋プラスチックが社会問題になっていたこともあり、私たちもできることをできるだけやろうと店のコンセプトをガラリと変えました」。
当初ウォークインセラーを考えていた場所は、調味料やシリアルなどを量り売りするコーナーへと変更。客が容器を持参し、自分で好きな量を詰めるシステムだ。また惣菜や精肉なども対面販売で持参容器に対応。食品ロスやゴミの削減に取り組んでいる。




しかしスーパーという業種上、どうしても残渣(ざんさ)は出る。「ちょうどそのときに、養豚家の方から、売れ残りの惣菜や焼き損じのパンを豚のエサにしたいのでもらえないか、と相談がありました。私共も、辞められた農家さんの畑を借りて果樹園を始めたところだったので、店の残渣で堆肥を作ろうと考えました」と渡会さん。知り合いから空いている牛舎を借りて堆肥置き場にし始めた。「まずは野菜などの余分な水分を飛ばして場所を移動させて、2週間かけて撹拌し、2カ月かけて作ります」。こうして順調に進んでいた堆肥づくりだが、あるときウジ虫が大量発生してしまった。「フェイスブックで相談したところ、ニワトリを飼えば食べてくれるという回答をもらって、早速ニワトリを6羽飼い始めました」。
店で出る野菜くずや、仕入先からもらう豆腐や揚げなどの残りをエサにニワトリを平飼いしたところ、健康的に太って良質な卵を生むように。「堆肥を作るより、ニワトリを育てておいしい卵を販売し、ニワトリの鶏糞などで堆肥を作って果樹を育てるほうがいいと思いました」と話す渡会さん。今では1700羽ものニワトリを平飼いし、毎日600個もの卵を収穫し、「めぐるたまご」として店で販売している。




果樹園では、梅や桃、いちじく、オリーブなど地域の気候風土に合った果樹を育てている。「うちは幸い、加工場も売り場もあるので、形の悪いものはケーキやタルトにできるので無駄がありません」。渡会さんは耕作放棄地が広がり続けることを「もったいない」と感じ、1年間で14ヘクタールもの農地を購入した。「今後、1万本のオレンジの木を植えて、渥美ブランドのジュースを作る予定です」。
最近は牛も3頭飼い始め、今後はさらに4頭増やす予定だ。
「最初は1人で世話をしていましたが、トラクターもないので、今は5人のスタッフでニワトリ、果樹、牛の面倒も見ています」と話す渡会さん。「私のモットーは“低投入、内部循環、自然共生”。なるべくお金やガソリン、労働力を使わず、会社や地域にあるものを循環させ、生き物や自然と共生しながら農業を行うこと。これは有機農業の三原則でもあります。買うのは、ヒヨコと牛、苗だけですね(笑)」。
農薬や殺虫剤を使わない果樹は、虫や動物に食べられることもある。「全体の6割が収穫できればいい。4割は虫や鳥が食べても構わないです。そう思えば農業も気楽ですよ」と渡会さんは笑顔だ。




こうした循環型農業の取り組みについて「やってみて本当によかったと思っている」と話す渡会さん。2025年3月にはSDGs達成にむけて行動する団体を奨励する「SDGs岩佐賞」を受賞した。今後は各地のスーパーマーケットにこの方法を伝授していきたいと渡会さんはいう。「ローカルスーパーだからこそできることを、もっと広めていきたいと思っています」。

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