コーヒーで旅する日本/関西編|今どきのスタンドらしからぬ趣向で個性を発揮。ミニマルな空間で出会う“おもしろいコーヒー”。「Yoshihara」

東京ウォーカー(全国版)

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全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも、エリアごとに独自の喫茶文化が根付く関西は、個性的なロースターやバリスタが新たなコーヒーカルチャーを生み出している。そんな関西で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

ミニマルな空間は、開放的でありながら凛とした佇まいを見せる


関西編の第99回は、京都市中京区の「Yoshihara」。店主の良原さんは、本連載で紹介した日本製コーヒー器具専門店・ Kurasu のヘッドロースターを経て、2年前に独立。古い町家を活かしたミニマルな空間と、趣向を凝らしたコーヒーの提案で、従来と一線を画したスタンドのスタイルを表現している。限りなくシンプルな店作りで先入観を排し、あえて“らしくない”コーヒーショップのイメージを形にした良原さんが目指す、日常のくつろぎの場とは。

店主の良原さんと奥様の春菜さん


Profile|良原皓介(よしはらこうすけ)
1991年(平成3年)、京都府生まれ。大学卒業後、会社員を経て、京都の小川珈琲に入社。バリスタとして経験を積み、2018年に「Kurasu」に入社。ヘッドロースターとしてコーヒーの品質管理を担当するなど約5年を経て、2023年に独立。奥様の春菜さんと共に、京都市上京区に「Yoshihara」をオープン。

目立たぬ店構えに秘めた細やかな意匠の工夫

元の建物の原型をほぼ残した店構え

一年を通して国内外の観光客が絶えない、世界遺産・二条城。その裏手にあたる、北側にある「Yoshihara」。入口付近のにぎわいと打って変わって閑静な住宅街で、一見、民家と思しき店構えは、遠目からはコーヒーショップとはわからないだろう。「ここは繁華街からは離れますが、ギリギリ街なかというか、自転車があれば来られる距離感。エリア、建物の種類はこだわりはなかったんですが、けっこう探し回りました」とは店主の良原さん。古い町家を改装した店内は年季を経た建材の風合いが残され、通りからフラットにつながる空間は、内のようであり、外のようでもあり、不思議な開放感に満ちている。

発色にこだわった弁柄色の床は、開業希望者が店作りの参考にと見に来たこともあるとか


見た目は質朴ながら細部には趣向が凝らされ、なかでも手をかけたのが床の色。「柱の弁柄色に調和する色に仕上げるのが一番難しかった。最初は、床を赤にすること自体、本当にいいのかなと思って、少し抵抗もあったんですが、お客さんに好評を得たことで、ようやく納得できました。特に海外の方はディティールに注目してくれることが多い印象があります」

改装にあたって、古い柱や梁、土壁など異なる素材が混ざり合うため、極力、店内をシンプルにすることに腐心したという良原さん。新たに設えたのはキッチンと床くらいで、ほぼ建物の原型を残し、さらにエスプレッソマシンはビルトイン式を導入するなど、コーヒーショップには付き物の各種の機材もほとんど目立たない。「近年、コーヒー店が増えている中で、どうしても使う道具や置く機械が似てくると感じて。あえてそれらの存在を抑えることで、“らしくない”雰囲気が店の個性になればと考えたんです」と良原さん。これまでになかったユニークな空間は、早くも多くの客を惹きつけている。

店内には木造町家ならではの素材の質感が随所に残されている


また飲みたいと思わず惹かれる一杯を

ドリップでの抽出には、ドイツのグレイカノのドリッパーを使用

遡れば、京都の小川珈琲でバリスタとしてコーヒーの世界に進み、本連載にも登場したKurasuに移ってからロースターとして腕を磨き、地元京都で独立した良原さん。「Kurasu主催の競技会で優勝したのが縁で、オーナーの大槻さんと一緒にイチからロースターを作り上げる感覚で、焙煎の仕事を任せてもらい、継続的に取り組めたのは大きな転機になりました」と振り返る。ここでロースターとして過ごした5年の間に、最も注力したのは、常に安定した焙煎を行うためのメソッドの構築だった。

豆の販売は時季替わりで3~4種を提案


「焙煎する時に、毎回同じ条件の環境というのはありえないこと。そんな中でも、同じ焼き方ができることが理想なので、いかにブレをなくすかが大事」と、焙煎する前の段階で、どういう準備をして取り組むかにポイントを置き、実践を積み重ねた。そのアプローチは、実はバリスタの仕事が土台になっている。抽出時の湯温、粉の量、注ぎ方など、一杯のコーヒーを抽出するために、条件を整えることはバリスタなら当たり前のこと。焙煎においても、一定の条件を作る作業は、いつも同じ味わいを抽出するバリスタの仕事に通じるものがあった。「焙煎も、抽出のプロセスのなかのいち変数と捉えて、バリスタがおいしいと思って、淹れられる豆をイメージしています。自分が淹れる時に味わいに納得して、自信をもってお客さんにすすめたいので」と、当時から自身のスタンスをロースターでなく、バリスタ・ブリューワーとする姿勢は変わらない。

現在、店で提供する豆はシェアローストで焙煎


とはいえ、自らが店主となったことで、味作りにも変化があるようだ。「大きく言えば、味わいにコクがあるかないか。飲みやすさや飲み応えといった部分を意識するようになりました。新しいお店で、多くが初めて来られるお客さんですが、その後もリピートしてもらえることが大事。そのためにどうするかを考えています」と良原さん。その言葉は、飲んでみれば瞭然。キレのある華やかさというよりは、とろりとした飲み口や穏やかな酸味、ふっくらと広がる風味の厚みが後を引く。染み入るような余韻が、目指す味わいの変化を表現している。

コーヒーの華やかな香りにミルクの甘味が際立つ、カプチーノ650円


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