コーヒーで旅する日本/関西編|今どきのスタンドらしからぬ趣向で個性を発揮。ミニマルな空間で出会う“おもしろいコーヒー”。「Yoshihara」
東京ウォーカー(全国版)
“おもしろいコーヒー”に込めた真意

さらに、この一杯を、より印象的にするひと工夫がメニューの表記。記されているのは、“本日のコーヒー”と“おもしろいコーヒー”の2種のみ。産地や品種など、具体的な情報は明らかにしていない。「当初は、本日のコーヒーだけでしたが、どうしたら豆の個性により興味を持ってもらえるかと考えた末に、“おもしろい”のネーミングを思いついたんです。中身は隠しているわけではなく、聞かれたらお答えします。ただ、選ぶ際の先入観をなくすことで、情報に左右されず、いろんなコーヒーを試してもらえるのではと思ったんです」

あまりに漠然とした表現だが、それゆえに思わず興味をそそられてしまう。ありそうでなかった心憎い提案だ。時季替りで提供する豆は、良原さんが飲んでおもしろいと感じた、高品質のマイクロロットを吟味。「例えば、ブラジルはある程度、風味の想像がつきやすい豆ですが、飲んでみたら、まったくらしくないとか。意外性のあるものを提案しています。その分、常におもしろい豆を見つけないと、というプレッシャーもありますが(笑)」と、自身もこの趣向を楽しんでいるように見える。店構えと同様、すっきりと飾らないメニューに、何気なく潜ませた遊び心もまた、この店の魅力につながっている。

2年前の開店以来、すっかり界隈に定着し、常連客も増えつつある「Yoshihara」。良原さんにとっても、店を構えたことで、日々新たな気づきがあるという。「開店前に持っていた自店のイメージが実際に形になったことで、お客さんにどう伝わるのかを探っている感覚もあります。将来的には焙煎所も持ちたいし、街なかでやってみたい気持ちもあって。開店してみてこそ、自分が本当にやりたいことが見えてくることもあるのかなと感じています」
とはいえ、まずはゆっくり、静かに過ごしてもらえる場所として存在感を広めつつ、コーヒーのメニューの充実に力を入れる。「特に、おもしろいコーヒーとして出せる豆の幅を増やしていきたい。そういう豆を仕入れられるのが自分の強みの一つなので、“あそこに行けば、おもしろいコーヒーが飲める”という店のイメージを作れたら」。日常の中に、ちょっとだけ非日常のコーヒーを。普段使いでそんな一杯が飲めるなら、日々の暮らしも楽しくなるに違いない。

良原さんレコメンドのコーヒーショップは「珈琲ヤマグチ」
次回、紹介するのは、京都市右京区の「珈琲ヤマグチ」。
「店主の山口さんは東京から京都に移られて、お客さんとしてここに訪ねてきてくれてからのご縁。あとで、お店をされていることを知りました。手回しの機械で焙煎されていて、喫茶店に近い雰囲気で、一人で静かに過ごせる空気感は、コーヒースタンドには出せないもの。ただ、スタイルは違えど店作りに共通するものがあると感じていて。コーヒーという枠を超えて、飲食店としてのセンス、店の存在自体に刺激を受けます」(良原さん)
【Yoshiharaのコーヒーデータ】
●焙煎機/ローリング スマートロースター7キロ(完全熱風式)※シェアロースト
●抽出/ハンドドリップ(グレイカノ)、エスプレッソマシン(マヴァーム)
●焙煎度合い/浅煎り~中浅煎り
●テイクアウト/ あり(600円~)
●豆の販売/シングルオリジン2~3種、100グラム1140円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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