コーヒーで旅する日本/四国編|産地での交流で芽生えた真摯な思い。“人”を通じて伝えるコーヒーの尽きない魅力。「コーヒービーンズショップ アロバー」

東京ウォーカー(全国版)

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“誰も泣く人がいない”コーヒーのサイクルを目指して

「コーヒーに触れる入口を広げるために、少しでもフックを増やす工夫をしています。ときには、ソフトクリーム目当てに来た方が豆を買って帰られることもありますよ」と梶さん

近年は、香川でもいち早く完全熱風式の焙煎機を導入するなど、味作りにさらに磨きをかける梶さん。焙煎人の肩書もすっかり板に付いたが、「コーヒーよりも“人”にのめり込んだのが、ここまで続けられた大きな理由」だという。「コーヒーの紹介というより、作り手の紹介をしているようなもので、品質も大事やけど、どんな思いで作っているかを前面に伝えるのがアロバーらしさだと思っています」。近年は、ニカラグアの農園主であり牧師でもあるルイスさんが、現地で教会を建てたり、子どもの教育の場を作ったりするプロジェクトに賛同。自らが産地で得てきたことの恩返しとして支援を続けている。それでも、「本業で豆を仕入れる量がまだまだ少ないので、ボリュームを上げていかないと。それができないうちは違う国からの仕入れは考えられない」という。

コーヒー生産者とお客の橋渡しを、自らの役割としてきた梶さんにとって、2016年に掲げたコンセプト・スマイルトライアングルは、「アロバー」の新たな指針を示すものだ。「今までは産地の人に喜んでもらうことばかりを考えていましたが、ここで働くスタッフの笑顔も大事だなと気づいて。店の理念として忘れないように、あらためてテーマに掲げたものです。幼少期から自分も楽しんで相手を笑顔にするのが好きでしたが、ここでは、“みんなを笑顔に”の前に、“誰も泣く人がいない”コーヒーにしたい」との強い意志が込められている。

エスプレッソに氷を入れ、スチームで泡立てる新感覚のコーヒー・エアロカーノ550円。クリーミーな泡は口当たりが軽く、コーヒーの風味もまろやかに


さらに、「アロバー」の次なるステージとして思い描いていた、松縄店の移転リニューアルが2024年に実現。新たな提案を次々に形にしている。「今までいきなり豆を買うことを求めていましたが、どんな形でも取っ掛かりが大事だと思うようになりました。今まではドリップバッグの製造も気が進まなかったんですが、作ってみたらそれをきっかけに豆を買いに来られる方も出てきた。ここでは、コーヒーへの入口を広げています」と梶さん。ドリップバッグのみならず、オリジナルのコーヒー牛乳プリンやカフェオレベースといったアイテム、長年試作を続けてきたエスプレッソソフトクリームなどがテイクアウトメニューに加わった。最近では家庭での焙煎用に生豆の販売も始め、お客との接点を大きく広げている。

ただ、広々としたフロアでありながら、カフェスペースだけは作らなかった。その心は、「一度、本店でカフェをしたことがあるが、豆の説明をする暇がなくなってやめたことがある。あくまで柱は豆の販売。だから新店舗も席を作らない」とビーンズショップとしての軸足はブレていない。もう一つの理由が、コロナ禍で中断してしまったスクールの再開のため。「以前は簡単な教室でしたが、もっと幅広くかつ内容を深めて、情報発信に力を入れたい。香川ではスペシャルティコーヒー専門店として、先頭を走っていると自負していますが、“誰も泣く人がいない”というコンセプトを含めて、周りにまねされるような存在でありたい。それがひとつの正解なんだと納得してもらうためにも、トップを走り続ける存在でありたい」と梶さん。そのためにスタッフの充実、スキルアップも欠かせない。「ウチは母の時代から、女性のライフスタイルに合わせて仕事を作っていたことから、今もスタッフはすべて女性。その中で焙煎をしたい、産地に行きたいという人が出てきた。いつかはスタッフ全員で産地に行きたいですね。行けば絶対、意識が変わりますから」。その言葉は、梶さん自身が証明している。

コロナ禍を機に家庭で焙煎する人も増えたことから、松縄店では新たに生豆や焙煎用手網も販売


梶さんレコメンドのコーヒーショップは「珈琲倶楽部」

次回、紹介するのは、香川県丸亀市の「珈琲倶楽部」。
「店主の大西さんは、香川の自家焙煎コーヒーの礎を築いてきた一人で、20代のころからお世話になってきました。自店では古きよきネルドリップコーヒーを守りつつ、最近ではスペシャルティコーヒーにも関心を持って、若手の同業者にも理解がある方。香川のコーヒーシーンで、新旧の世代をつなぐ貴重な存在です」(梶さん)

【アロバーのコーヒーデータ】
●焙煎機/ローリング スマートロースター15キロ(完全熱風式)
●抽出/フレンチプレス、エスプレッソマシン(シネッソ)
●焙煎度合い/浅~深煎り
●テイクアウト/あり(550円~)
●豆の販売/ブレンド3種、シングルオリジン約10種、100グラム1400円~

取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治

※記事内に価格表示がある場合、特に注記等がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。

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