京都の知られざる花街・島原で、新選組や勤王の志士たちが通ったお座敷を見学
東京ウォーカー(全国版)
新選組と勤王の志士が出入りした座敷
続いて、台所と住居のある1階を見学する。角屋では1階にも客を通す座敷があった。そのひとつが臥龍松の庭が見える松の間。角屋は新選組が出入りしていたことで知られており、新選組初代筆頭局長だった芹沢鴨は、松の間で遊宴を楽しんだあとに帰宅し、暗殺されたという。

さらに、新選組だけでなく、敵対関係にある勤王の志士も角屋に通っていた。軍資金調達のためにスポンサーとなる豪商を招いて話し合いを行っていたそうだ。台所に西郷隆盛が行水に使ったという桶が今も置かれている。第二次世界大戦末期、鉄道の近くが空襲の標的になりやすいことから、JR嵯峨野線の真横にあった角屋は取り壊しの対象となった。調査に来た役人が西郷隆盛の桶を見て、角屋の歴史的価値に気づき、取り壊しを再検討することとなった。そうこうしているうちに終戦を迎え、取り壊しを免れた。
1階から玄関口に回ると、柱の一部に新選組がつけたという刀傷が残っている。討ち入りがあったわけではなく、威嚇のために切りつけたらしい。同様の刀傷が2階の一室にもあるが、通常、客が揚屋に入る場合、玄関に刀を預けておくのが礼儀だったが、新選組は見回りを理由に刀を部屋まで持ち込んでいた。いかにも好戦的なイメージで知られる新選組らしいエピソードだ。だが、新選組とのつながりが、角屋の魅力のひとつとなっており、実際にも私と同じツアーの参加者のなかにも新選組ファンが見受けられた。
角屋15代目当主の中川清生さんに話を聞く
見学のあと、15代目当主として角屋もてなしの文化美術館の館長を務める中川清生さんに話を聞くことができた。角屋を一般公開している理由は、島原の伝統文化を伝えるというのが目的だが、理解してもらうことで「遊郭」のイメージを払しょくしたいという狙いがあるそうだ。
遊郭というのは歓楽のための場で、芸舞妓が歌や舞を披露する遊宴の場である花街とは異なる。ただ遊郭と花街はよく混同され、島原もまた日本三大遊郭のひとつとして知られるようになった。だが、その実態は揚屋を主とした花街であり、決して歓楽を目的とした遊郭ではなかった。ゆえに、島原に通う人々は文化的教養が備わった知識人たちであり、そうでないと遊宴が十分に楽しめなかったのは、2階で飾られている書や絵画、隅々までこだわった装飾品からも明らかだ。角屋がまだ営業していたころを覚えている中川さんは、当時の島原は文化サロンのような雰囲気があったと語ってくれた。

このように一般公開を続けている角屋だが、ふすまの張り替えや耐震補強など、状態を維持することに頭を悩ましているらしい。多数の芸術作品と工芸品が鑑賞できるだけでなく、江戸時代から幕末を経て現代にいたるまでの歴史が深く刻まれたこの場所が、今後も存続することを願うばかりだ。
施設情報
角屋もてなしの文化美術館
住所:京都市下京区西新屋敷揚屋町32
アクセス:JR嵯峨野線梅小路京都西駅から徒歩約10分
駐車場:なし
営業時間:1階1日6回(10時30分、11時30分、12時40分、13時30分、14時30分、15時30分) ※各回30分、最大参加人数20人。
2階座敷特別公開1日4回(10時15分、13時15分、14時15分、15時15分) ※各回30分、最大参加人数15人。
開催期間:前期2025年3月15日~7月18日 ※月曜休館、祝日の場合は翌平日休館
後期2025年9月14日~12月14日(日)の金曜、土曜、日曜、祝日のみ開館。ただし、10月30日(木)、11月の各木曜日は開館。 ※祝日以外の月曜~木曜休館。10月30日(木)、11月の各木曜日は開館
料金:1階のみは大人1000円、中高生800円、小学生500円 ※2階座敷の特別公開は別途料金大人800円、中高生600円、小学生以下は見学不可。
取材・文=レックス 二宮大輔
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