コーヒーで旅する日本/四国編|コーヒーは大人の世界の入口。子どもの頃に抱いた憧れが、いまだ尽きない情熱の原点。「珈琲倶楽部」
東京ウォーカー(全国版)
コーヒーを入口に世代を超えた交流が生まれる場に

コーヒーに関するあらゆるものがそろい、いかにも専門店、コーヒーマニアの店に思えるが、喫茶店時代の大らかさはそのまま。堅苦しい雰囲気とは無縁なのは、ひとえに大西さんの鷹揚で快活なキャラクターの賜物だ。いわば、自宅で友達にサイフォンを披露していた高校時代とノリは同じ、みんなでコーヒーを楽しみたいという思いが満ちている。
大西さんの行動力は開店後も止まることなく、香川各地のイベントにも数々出展。その人柄を慕って、弟子入りする人も多く、香川のコーヒーシーンでの存在感を増してきた。「札所の金倉寺で珈琲茶会というのもしたことがあって、本当のお茶席でコーヒーを淹れたらおもしろがられて、淹れ方を教えつつ、珍しいコーヒーなんかを提供していました。うちは他の店がやらないことをしてきたし、他にもネタはなんぼでもあります(笑)。店でもお客さんに合わせて何でもする。コーヒーを窓口にして、いろいろな方向に派生していってますね」

その言葉通り、普段からお客との会話の中で知りたいことを聞いて、マンツーマンのコーヒー教室を開催。また、夜カフェや夜メシと称したレストラン、ライブや登山など数々の“部活動”があり、毎週、何らかの活動が展開されている。コーヒー店の枠を超えた、地元のコミュニティを広げる試みは、実は大西さんの危機感の表れでもある。「若い頃は考えもしなかったですが、先輩が年を取ったのを見て、自分はどうするかを考えるようになった。喫茶業界が衰退していくのは寂しいので、コーヒーを入口にいろいろな人が交流できたらいいなと、いろいろ試行錯誤しています。教室や部活動に来る方と、豆を買いに来る方はまったく別で考えていて。喫茶店が減ってきている中で、幸い今は人気が高まっているし、若い人の感性も取り入れたい」

以前はコーヒー店主同士の交流会も開いていたが、コロナ禍で中断。それでも、新たに増えつつある若手ロースターと老舗のつながりを取り持ち、香川のコーヒーシーンを盛り上げたいという思いは年々強くなっている。「最近立ち上がった、カガワコーヒーテーブルの参加店と老舗が交流できる手立てを考えていて、そのうえで、最終的にイベントをして、全国を回れないかと構想しています。香川はうどんだけじゃないと。近年は若い世代もネルや手廻し焙煎機とかに関心持っているし、年を取ってきて。先人の経験を伝えていかないと、という焦りもある」。世代をつなぐキーマンとして動き続けている。
初めてコーヒーを淹れてから50年近く、いまだ意気衰えない大西さん。最後に、この仕事の妙味はどこにあるのか聞いてみた。「一番おもしろいのは、一杯600円ほどのコーヒーの前では、誰もが平等であること。いろいろなお客さんが来るけど、近所の常連さんも、有名人も一緒に同じコーヒーを飲んでいる。それがコーヒー屋としての醍醐味。やっぱり喫茶店は大人の入口だなと、あらためて思います」。大西さんにとって、コーヒーほどすてきな商売はないようだ。

大西さんレコメンドのコーヒーショップは「カフェ・モトーレ」
次回、紹介するのは、香川県善通寺市の「カフェ・モトーレ」。
「本格的なイタリアン・バールのスタイルを貫く、香川では数少ない一軒。店主の岡部さんは、開業前に珈琲倶楽部を手伝ってもらったり、イタリアのバリスタ資格・IIACを取得するため、一緒にイタリアまで行ったりと、交流が深い同業仲間の一人です。東京の名店、バール・デルソーレで修業を積み、近年は日本バリスタ協会の競技会で2連覇している実力の持ち主。正統派エスプレッソを、ぜひ味わってみてください」(大西さん)
【珈琲倶楽部のコーヒーデータ】
●焙煎機/ラッキー 8キロ(半熱風式)
●抽出/ハンドドリップ(松屋式)、エスプレッソマシン(CONTI)
●焙煎度合い/浅~深煎り
●テイクアウト/あり(400円~)
●豆の販売/ブレンド5種、シングルオリジン約10種、100グラム800円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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