コーヒーで旅する日本/関西編|新しすぎず、突き詰めすぎず、偏らず。「珈琲山居」が醸し出す、穏やかな包容力に惹かれる理由
東京ウォーカー(全国版)
本好きから支持を得て浸透した店の個性

居山さんの店作りにおいて、欠かせないのが本とレコード。真空管アンプから流れる温かい音質は、店内に流れる穏やかな時間に似つかわしい。また、フロアの中央にある本棚には、コーヒーに関する書籍のほか、居山さん自身が読んだおすすめの本が時々に入れ替わる。「本がとっかかりになって会話が盛り上がることもあります。本だけでなく、各地で発行されているリトルプレス、ZINEも好きで、最近店に置く種類も増えました」。いつしか、読書を目当てに訪れるお客も一定数を占め、昨年からは古書の販売イベントも開催している。
「たまに客席の全員が本を読んでいて、誰もしゃべってないときがあります。私語禁止ではないんですが(笑)。コロナ禍が明けてから、本と関わりが深い店として認知された感覚があります。口コミで広がっているのが、いい意味で狭い京都ならでは」と居山さん。喫茶店、カフェの選択肢が多い街にあって、この店の個性はしっかりとお客にも浸透しているようだ。

長いコロナ禍を乗り越え、開店から6年目を迎えた居山さん。ようやく少しずつ、店でのイベントも開けるようになった。一方で、最近は子育てが始まり、かつては提供していたモーニングをなくし、ほぼコーヒーオンリーの営業に切り替えた。「まずは淡々とやることが第一。コロナもあったから余計にそう思います」と、あらためて感慨を漏らす。自身の環境も変わるなかで、店を始めるよりも続けることのほうがやはり難しい。それでも、居山さんにはある確信があるようだ。「店を持ってから好きなことに携わっていると、不思議と共鳴する人が来てくださるな、と感じることがあります。最初は手探りでしたが、今になって、経営の戦略めいたものより、自分の興味・関心に注力することを大事にしたい、とひしひしと感じる。変にそこを曲げると、店の空気も淀むから。明解に、自分が楽しんでいることが結局はいいのではと思います」。今日もこの店にお客が訪れるのは、居山さんの心持ちが隅々まで行きわたっているから。京都の個人店の仲間入り。

居山さんレコメンドのコーヒーショップは「み空」
次回、紹介するのは、京都市左京区の「み空」。
「最初に間借りで始められたときに、お客さんから聞いて訪ねたのがご縁の始まり。店名がフォークシンガー・金延幸子さんの曲のタイトルだから、音楽好きなのかなと思ったらその通りで。お互い喫茶店と音楽が好きという共通点があって、落ち着いた空間にいい音、ゆっくりくつろげる店作りにシンパシーを感じます。半地下にありながら天井が高く、独特の開放感ある空間も魅力の一軒です」(居山さん)
【珈琲山居のコーヒーデータ】
●焙煎機/手回し焙煎機 1キロ
●抽出/ハンドドリップ(ハリオ)、ネル
●焙煎度合い/中煎り~深煎り
●テイクアウト/あり(500円~)
●豆の販売/ブレンド1種、シングルオリジン5種、100グラム720円~
取材・文/田中慶一
撮影/直江泰治
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