工場の排熱を利用し、3年後の商品化をめざしてコーヒー栽培に取り組む石塚硝子株式会社
東京ウォーカー(全国版)
1819年の創業以来、ガラス製品をはじめとする国内有数の総合容器メーカーとして知られる石塚硝子株式会社が、ガラス製造の際の排熱を利用してコーヒーの栽培を始めた。その取り組みについて、新事業・機能材料カンパニー イノベーション推進部 新事業創出グループリーダーの両角秀勝さんに話を伺った。
同社がこの取り組みを始めるきっかけとなったのは、2022年に発足した「次世代ビジネス創出プロジェクト」だ。20〜30人の社員による新規事業創出のための通年のプログラムでさまざまな企画提案が行われ、30案ほどの中から残ったうちのひとつが「工場の排熱を利用した持続可能なコーヒー栽培実証実験」だ。
「当社はガラスを溶かす溶融炉が365日休まず稼働し、300度の排熱が発生しています。これをどうするかは以前からの課題でした」と話す両角さん。「これまでは熱交換器を利用して湯を作り、ガラスの洗浄や社員用の風呂に利用していましたが、環境に配慮した給湯器を使うようになって熱交換器を24時間稼働させることがなくなり、昨今は排熱の有効利用ができていない状況でした。コーヒー豆栽培のプロジェクトはタイミング的に合ったと思います」。
日本では、気温の関係により沖縄県以外でコーヒーの木を露地植えで育てることは難しいため、同社ではポット栽培を採用。約300平方メートルのビニールハウスを作り、約70本のコーヒーを栽培している。熱帯地方で育つコーヒーは寒さに弱いため、熱交換器で排熱を利用して水を温め、ビニールハウスにパイプをめぐらせて室温が20度を下回ると自動的に放熱するシステムを構築した。ところが、今年の夏の暑さは想定外だと両角さんは話す。
「もともとコーヒーは熱帯地方の高山で育つ植物なので、最低気温10度、最高気温25度が最適な生育環境。現在、ハウスの中は45度なので高温障害の心配もあります。ハウス内にミストを取り付けると4.5度下がるということなので、導入を検討しています。いずれにしても、持続可能な栽培方法を考えていかなくてはなりません」。
栽培するコーヒーはブラジル・ムンドノボ、カトゥーラ、カトゥアイ、レッドブルボン、イエローブルボン、グァテマラ・モカ、ロブスタ種、ティピカ、ゲイシャ、パカマラの10種類だ。「豆がおいしく、収量が確保できて、きちんと育てられるのかを考えて選びました」と両角さん。植物ゆえに、害虫対策も重要だという。「見つけたらなるべく早く駆除するように心がけています」。また今年初めての冬を迎えるにあたって、排熱でしっかりと育つのか注視していくことも課題だとも話す。
2027〜28年には、1本の木から3キロのコーヒーチェリーが取れるように栽培するのが目標だ。「生豆にすると500グラム、そこから焙煎すると400グラム。1本の木から40杯分のコーヒーしかできない計算です。それでも20キロの収量をめざし、岩倉市初のクラフトコーヒーとして名物になれたら、地域貢献にもつながると思います」と両角さんは笑顔だ。「社内からも応援の声が届いているので、10年後の事業化をめざして頑張っていきます」。
同社では、こうしたコーヒー栽培以外にもサステナブルな取り組みを多々行っている。その1つが、卵殻を工業原料に実用していることだ。ガラスの原料の1つ、石灰石の成分が卵殻と同じ炭酸カルシウムであることから、愛知県小牧市の三州食品株式会社から卵殻を買い取ることに。未利用の廃棄卵殻問題の解決をはじめ、石灰石から卵殻へ1トン置換することで600キロのCO2の削減にもつながるこうした取り組みは、世界的にも例がなく、注目されている。
そのほかにも使用済み太陽光パネルガラスの再利用など、次世代ビジネスを通して同社はこれからも持続可能な社会へ貢献し続けていく。
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