西島秀俊とグイ・ルンメイが夫婦役を演じた『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』の見どころを紹介。崩壊していく家族を描いた極限のヒューマンサスペンス!
東京ウォーカー(全国版)
2025年9月12日より全国公開された『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』。西島秀俊さんと台湾を代表する俳優グイ・ルンメイさんが夫婦役を演じ、『宮本から君へ』の真利子哲也監督がメガホンを取った。公開前に試写で観た本作の感想を紹介(以下、ネタバレを含みます)。
【ストーリー】
ニューヨークの片隅で暮らす日本人の夫・賢治(西島秀俊)は、廃墟の研究家だが大学でのポジションが危うい状況。そして台湾系アメリカ人の妻・ジェーン(グイ・ルンメイ)は、老いた父のかわりに地域密着型ストアを切り盛りしているが、本当はライフワークの人形演劇に専念したいと思いながら日々過ごしていた。
まだ幼い息子カイの育児に賢治は協力的だが、ジェーンは慌ただしく過ぎてゆく日々の中で、不満を募らせていた。
ある日、ジェーンのストアに強盗グループが押し入り、金品を奪って逃げるという事件が起きる。幸いジェーンとカイは無傷だったが、心のダメージは大きかった。ジェーンは感情を爆発させるが、そんな彼女を賢治は受け止めきれない。
そんな中、カイが突然行方不明になってしまい…。
日本と台湾を代表する俳優二人が芝居で激しく感情をぶつけ合う姿は必見
メガホンをとったのは、『ディストラクション・ベイビーズ』(2016年)や『宮本から君へ』(2019年)などを手掛けた真利子哲也監督。今回、『宮本から君へ』以来6年ぶりの長編映画として『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』を制作した。
主人公・賢治を演じるのは、映画『ドライブ・マイ・カー』(2021年)や『スオミの話をしよう』(2024年)、A24のドラマ『サニー』(2024年)などに出演し、今後も国内外の出演作の公開が控える西島秀俊さん。セリフの90%以上は英語という難役だったが、賢治の複雑な心情を見事に体現していた。
妻のジェーンを演じるのは、第64回ベルリン国際映画祭で最優秀作品賞(金熊賞)を受賞した『薄氷の殺人』(2014年)や、第72回カンヌ国際映画祭コンペティション部門正式出品された『鵞鳥湖の夜』(2019年)で世界からの注目を集めた台湾出身の俳優グイ・ルンメイさん。本作では、育児や介護に追われながら生きる女性の苦悩と葛藤を、人形劇の人形を使って表現するという役柄に挑戦。ジェーンが大きな人形を操る姿は美しくもあり、狂気的でもあったため、観終わったあともしばらく大きな人形の姿が頭から離れなかった。
ニューヨークの片隅で暮らす夫婦の賢治とジェーンは、お互いに言えない悩みや葛藤を抱えながら日々生きている。愛情はあっても言語の壁があってうまく感情を伝えられない二人。すれ違っていく賢治とジェーンの姿は見ていてとてもつらかった。
冒頭の賢治は子育てを手伝う優しい夫に見えるが、言葉の端々やちょっとした行動に“おや?これはダメ夫かもしれないぞ…”と思わせるような嫌な部分が少しずつ露わになっていく。西島さんが演じていたからなのか、そこまで嫌いにはならなかったが、別の俳優が演じていたら賢治に1ミリも感情移入できなかったかもしれない。
一方、ストアの店番と育児、親の介護に追われて人形劇師の仕事がなかなかできずにいるジェーンには大いに共感できた。“もっと賢治に文句を言って困らせてやればいいのに!”と思うほど気持ちをグッと堪えてしまう彼女にはイライラしたが、息子の誘拐事件をきっかけに、賢治に思いをぶつけたシーンは観ているこちらもスッキリ。つかみどころがなく、何を考えているのか時折わからないジェーンをつい応援したくなってしまったのは、ルンメイさんが彼女の心の機微を繊細に演じていたからだろう。
全編ニューヨークロケを敢行、廃墟やマンハッタンの路上から漂う不穏さに引き込まれる
夫婦が醸し出す不穏な空気は、やがて息子の誘拐事件へとつながっていく。真利子哲也監督の作品といえば容赦ないバイオレンスシーンがあることで有名だが、本作はアクションシーンはあるものの、そこまで暴力的ではなかったことに驚いた。そのかわり、ダークな闇へと引きずり込まれそうな瞬間が何度かあった。
それは廃墟やマンハッタンの路上から漂う不穏な空気がそう思わせたのかもしれない。本作は全編ニューヨークでロケが行われているが、いわゆる観光名所などは一切出てこない。それは賢治たちの生活圏内で起こる物語だからだ。
ただ、廃墟やマンハッタンの路上のほかに賢治たちが暮らす家やジェーンが店番をするストア、小さな公園などニューヨークで生活する人たちが見る日常風景から、人形劇団のスタジオや賢治が講義を行う学校といった特殊な場所などさまざまなロケーションを楽しむことができる。大きなスクリーンで見ると、まるで自分がニューヨークの街を訪れたような感覚になれるのが映画のいいところだ。
日×台×米合作で送る極限のヒューマンサスペンスを描いた本作。ぜひ劇場の大きなスクリーンでご覧いただきたい。
文=奥村百恵
(C) Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.
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