「同じミスを繰り返すのはバカだけ」小さなミスでも公開処刑…華やかなアパレル業界で起きている“教育”という名の圧力【作者に聞く】
東京ウォーカー(全国版)
「同じミスを繰り返すのはバカだけ」「そこに立ってなさい」。一見華やかに見えるアパレル業界の裏側で、静かに、しかし確実に心を削っていく言葉がある。実話をもとに“女社会”の空気を描き続けてきたゆき蔵さん
(@yuki_zo_08)
の漫画「女社会の知られざる闇。」は、そんな現場の息苦しさを真正面からすくい取った作品だ。今回はその中から、たった一度のレジ対応ミスが、理不尽な公開処刑へと変わっていくエピソードを紹介する。
失敗は理不尽に晒される!? 異動先を覆っていた奇妙な緊張感
非正規スタッフとして働いていたゆき蔵は、努力の末に正社員試験に合格し、別支店への異動が決まった。新天地となった百貨店では、鬼ヶ島店長と呼ばれる女性店長がフロアを仕切っていた。配属されて間もなく、ゆき蔵は店内に漂う奇妙な緊張感に気づく。ミスが許されないのはどの職場でも同じだが、この店では「失敗した本人が晒される」空気が当たり前のように存在していた。
たった一枚の駐車券が店長の怒りの引き金になった
ある日、同僚のキコが接客中に駐車券を渡しそびれてしまう。気づいた瞬間、本人も周囲もすぐにフォローに動こうとした。フロアを探し、店内放送をかければ間に合う可能性は十分にあった。しかし、その動きを鬼ヶ島店長が止めた——。「あなた、これで2回目よね」「同じミスを繰り返すのはバカだけ」と冷たく突き放したのだ。
さらに店長は、キコに駐車場入口で客が戻るまで立ち続けるよう命じた。フォローしようとするゆき蔵に向けられた視線は、「あなたも同じ立場になる?」という無言の圧だった。
「正しさ」よりも「従順さ」が優先された現場
確かにミスは起きた。しかし、その後の対応は本当に「教育」だったのか。誰かを見せしめにすることで、店全体を支配するやり方は、いつしかスタッフ全員の思考を止めていく。自分が次に立たされるかもしれないという恐怖が、声を上げる選択肢を奪っていくのだ。華やかな売り場の裏側で積み重なっていくのは、売上よりも沈黙だった。
実話だからこそ浮かび上がる理不尽な“業界の歪み”
この作品は、ゆき蔵さんが約10年にわたりアパレル業界で働いた経験をもとに描かれている。身バレ防止のためのフェイクはあるものの、根底にある感情や空気感は実体験そのものだという。接客業経験者であれば、思わず「あるある」と苦笑してしまう場面も多い一方で、笑えない現実が確かに存在することを突きつけてくる。
理不尽が日常に溶け込んでしまった現場で、人はどうやって自分を守ればいいのか。その問いを、作品は静かに投げかけている。
取材協力:ゆき蔵(@yuki_zo_08)
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