【第50回】職人の“焼き”がここにある。名古屋のウナギ専門店「炭焼きの店 うな豊」
東海ウォーカー
名古屋市瑞穂区の瑞穂公園や山崎川に程近い、「炭焼きの店 うな豊」。ふっくらとした焼き上がりに定評があり、名古屋でも指折りのウナギ料理の老舗として知られる。

タレに染み込んだ歴史と職人技
創業は1960(昭和35)年で、現在の店主・服部公司さんが2代目となる。「もともと母方の祖父母が戦前から飲食店をやっていて、その後に父親が新しくウナギ店を始めました。タレは祖父母の飲食店から受け継いだようで、だんだん父好みに変えていったそうです」と服部さん。そのタレは今日まで継ぎ足されている。つまり「うな豊」よりタレのほうが、歴史を重ねているというわけだ。

タレはたまり醤油、みりん、砂糖などで作られているが、「何が入っているかということよりも大切なことがある」と服部さんは語る。「毎日ウナギを付けて焼くことで旨味と脂がタレと混ざり、味に深みが生まれる。たとえ素材も割合も同じタレだとしても、毎日ウナギを付けることでまったく違うものができるのです」。ウナギを焼くという卓越した職人技が、タレの中にも生きている。

ウナギは注文を受けてからが勝負
「うな豊」では、朝の早い時間から仕込みをするということはしない。それは、素焼きをしないからである。素焼きとは、あらかじめタレを付けていないウナギを焼いておくこと。注文後に仕上げのタレ焼きをすれば、時間の短縮ができるというわけだ。服部さんは「素焼きは時間短縮にはなるが、脂が落ちてパサつき、味が落ちるのは間違いないです。そんなことは職人としてやりたくありません。注文を受けてから調理をする、その瞬間での勝負ですから」と、勇ましく話す。

ウナギの産地に対して、タレと焼きにも通ずる思いが服部さんにはある。「産地よりも店が、職人が、どうウナギを焼くかが大事。その店を、その職人の腕を信じてほしいですね」。焼きは炭火。備長炭を使い、遠赤外線の特長でウナギ表面だけではなく、中までじっくりと火が通る。服部さんの職人技と相まって、“サクフワ”の絶妙な食感になる。

一般的には単品料理として皿で供される“白焼き”だが、2代目は重の献立「白焼き重」(2900円)を考案した。白焼きの脂が染み込んだご飯と共に、豪快に食べるべし。口に頬張った瞬間、タレ焼きよりもウナギの脂がジュワっと広がる印象だ。この「白焼き重」、全国的にも珍しく、他府県から求め訪れる客も少なくない。

タレ焼きと白焼きの両方を重にのせた「紅白重」(3000円)という欲張りなメニューも。これは2016年に登場し、早くも人気なのだとか。重や丼に加えて食してほしい一品料理は、「肝焼き」(900円)。プリプリの食感で、中までしっかりと染みたタレと濃厚な肝の味がたまらない。
真剣勝負がお客さんの笑顔を生む

2代目は20歳ごろから厨房に立ち、調理について一切何も言わない父の姿を見て覚えてきた。息子さんにあたる3代目にも、“見て覚える(見せて教える)”という伝え方は変えていないようだ。

「焼きは、季節や気温などによって毎日答えが違うんです。だから、どれだけ技術の引き出しを持っていて、どれだけその環境に対して臨機応変に調理ができるか。それが勝負です」と2代目。つまりは、理屈よりも経験。3代目は厨房に入ってから約10年が経ち、2代目も期待しているそうだ。

服部さんに、長年の営業でうれしかったことを聞いた。「お客さんにニコニコになってもらって、満足な笑顔が見られたら最高。それ見たさにやっているね。一番の励みになるよ」。そのためにも調理では、最高に集中して最高のものを仕上げる、ことを心がけている。「妥協点なんかなく、許容範囲もありません。『ここしか許さないんだ』と、目指す焼き具合をピンポイントに絞っています」。それが、ふっくらとした「うな豊」の焼きである。

ウナギは時期によって肉質が変わるが、「うな豊」の焼きは変わらない。「焼きのクオリティを最高の状態に保つ。それは当たり前。『いまは旬じゃないから仕方ないよね』と客に思われたくない。それには技術を上げるしかないです。そして笑顔になってもらえたら」と服部さん。やはり最後は“笑顔”につながる。その思いは、きっとどの客にも伝わっているだろう。【東海ウォーカー】
エディマート
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