【第48回】店自慢のオリジナルメニュー開発が受け継がれる、名古屋市緑区の「とんかつキッチン カナン」
東海ウォーカー

バラエティ豊かなとんかつがそろう店として知られる、名古屋市緑区の「とんかつキッチン カナン」。個性的なラインナップに目を奪われがちだが、それはとんかつの味とコストパフォーマンスに自信がある実力店だからこそチャレンジできる、遊び心の賜物だ。
5年間の弁当店時代を経て、東海市でオープン

初代店主の中島幹さんが1972年(昭和47)年にオープンしたのは、とんかつ店ではなく、弁当店。飲食店を開業する資金を得るため、自宅の車庫を改装して弁当の配達を5年間行なった。その甲斐あって、1977(昭和52)年には、東海市で「とんかつキッチン カナン」をオープン。地元で人気の店となり、数年後には現在の「カナン」を2店舗目として緑区に開業した。

幹さんによると、「カナン」の東海店は、オープン当初のにぎわいが落ち着くと、途端に客足が途絶えるという事態に陥ったとか。「1日に3人ほどしかお客さんが来ない日が続き、何がいけないのかを紙に書き出して、今後の対策を必死で考えました」。その結果、知名度を上げることが必要だと気付き、開業資金を注ぎ込んで宣伝活動に力を入れる。看板を制作したり、チラシを作って近所に配ったりしたところ、「2か月ほどで効果が表れて、お客さんが増えてきた」と、幹さんは昔を懐かしむように話してくれた。

「カナン」のとんかつの特徴として幹さんが挙げたのは、メディアによく取り上げられる変わり種メニューより先に、“肉がやわらかくて喜ばれる”という点だった。規模の小さな個人店にはまず置いていないという筋切り機で肉の筋切りを行なっているため、ふんわりとやわらかく食べやすいとんかつに仕上げることができる。幅20cmくらいはあろうかという大判のとんかつが、ランチタイムには定食で600円という手ごろなのも大きな魅力。味とボリュームに納得できる店だからこそ、40年来支持されているのだ。

朝食のメニューがヒントになった“ワールドシリーズ”の第1作

東海店時代から、変わりとんかつの開発を始めていたという幹さん。新作を生み出しながら、人気のないメニューは取りやめるなど、常に試行錯誤を続けてきた。変わりとんかつの中でも、「アメリカンとんかつ」「イタリアンとんかつ」など、各国料理をイメージした“ワールドシリーズ”は、ほかの店では見かけない個性的なメニューだ。このシリーズの第1作となった「フレンチとんかつ」は、中島家の朝食に発想を得たものだそう。幹さんの妻、朱美さんが作ってくれたフレンチトーストを食べながら、「とんかつを卵に浸して焼いてみたらどうだろう」と思い付いたらしい。

現在では、“ワールドシリーズ”の名前にふさわしく、インディアン、コリアン、ハワイアンなど7つの国や地域を思わせる味がそろう。そのほかの変わりとんかつやサイズ違いも含めると、約50種類以上のとんかつが選べるという、豊富過ぎるラインナップだ。

オリジナルメニュー開発も受け継ぐ2代目
60歳を超えた幹さんが引退と閉店を考え始めたころ、息子の良平さんが店に入り、後を継ぐことになった。2代目に就くことを視野に入れ、高校卒業後、一度は飲食業界に入った良平さん。業界になじめないものを感じてこの世界を離れていたが、友人のすすめもあって、後を継ぐことを決意した。ずっと近くで店を見てきたこともあり、調理などの引継ぎはスムーズだったそう。今、店主として頭を悩ませるのは、アルバイトなど人出の確保だと話してくれた。

初代が続けてきた、変わりとんかつメニュー開発にも積極的だ。休日の外食では話題の店に足を運んだり、テレビ番組で流行りのメニューをチェックしたりしながら、店のメニューとして取り入れるにはどんなアレンジが必要かを考えている。最近では、宮崎とんかつ、浜松とんかつを考案し、日本各地の名物料理を取り入れた“ご当地シリーズ”を始動させた。父が開発した“ワールドシリーズ”に続く、新シリーズの誕生。初代と2代目が共に燃やし続ける、変わりとんかつ作りへの情熱は、これからもお客さんを飽きさせることがないだろう。【東海ウォーカー】
エディマート
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