天才建築家ガウディの素顔に迫る!没後100年、サグラダ・ファミリア完成への軌跡と「人間・ガウディ」の教え【監修者に聞いた】

東京ウォーカー(全国版)

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2026年にサグラダ・ファミリア主塔「イエスの塔」完成、没後100年という歴史的な節目を迎えた天才建築家アントニ・ガウディ。スペイン・バルセロナで今なお建設が続く世界遺産「サグラダ・ファミリア」は、世界中の人々を魅了し続けている。2026年2月26日に刊行された『まんが人物伝 アントニ・ガウディ 世界遺産を生んだ建築家』では、その壮大な聖堂の原点とガウディの波乱に満ちた生涯が描かれている。

本作の監修を務めたのは、長年にわたりガウディ研究の第一人者として活躍する鳥居徳敏さんだ。ガウディが遺した情熱をどのように次世代へつなごうとしているのか。サグラダ・ファミリアの最新動向から、漫画制作におけるこだわり、そして現代の子どもたちに伝えたいメッセージまで、鳥居さんに詳しく話を聞いた。


――サグラダ・ファミリアの最新動向と現地の熱量について教えてください。

【鳥居さん】本年、ガウディ没後100年の2026年、建築家たちは無理と言いながらも大司教の会議で全体の完成を目指していました。しかし、不幸にして2019年の新型コロナウイルスの流行で完成目標は遅れ、中央のイエスの塔を完成することに落ち着きます。現在、年間400万人を超える観光客が訪れ、その入場料で潤う今は、工事を遅らせる理由は見つかりません。中央塔を完成させるという使命を果たすため、あらゆる手段を講じた結果、ついに2026年6月にイエスの塔が完成し、世界的なニュースになりました。また、この機に乗じ、数々のイベントが組まれ、出版活動も活発になっています。

――2026年6月10日でガウディは没後100年を迎えました。研究の第一人者として、この歴史的な節目の年をどのように受け止めていらっしゃいますか。

【鳥居さん】今までにガウディ生誕100年の1952年、サグラダ・ファミリア着工100年の1982年、次にガウディ生誕150年の2002年、そして今回のガウディ他界100年のイベントと、4回に関与することができました。次は、ガウディ生誕200年の2052年になるでしょうが、さすがに私が存命することはないでしょう。この意味で2026年のイベントは私にとって最後になるだろうと、研究者としては感慨深く思っています。

――2月26日刊行の『まんが人物伝 アントニ・ガウディ』を監修されるにあたり、漫画のストーリーや描写において特にこだわった点や気にかけた点があれば教えてください。

【鳥居さん】第1に、資料に基づくストーリ―になること、第2に、現地スペインの風景や伝統から外れない絵になること、第3に、現代の感覚からではなく、ガウディの時代から描写すること。これらは私の研究指針の根本ですし、自分は何も知らないという心構えこそ、忘れてはならない姿勢だと思っています。


――本作では「サグラダ・ファミリアの原点」をたどっていますが、ガウディの生涯の中で、読者に最も知ってほしいエピソードは何でしょうか。

【鳥居さん】おそらく生死をさまよった断食でしょう。ガウディ41歳、1894年の春のことです。なぜ断食に入ったのか、なぜ死を覚悟するようになったのかは謎で何も伝わっていません。しかし、この断食から聖堂を完成させることが自らの天命であると悟り、生きる目的が自らを神に捧げることと理解したようです。それ以降の作品には、宗教とは無関係な建築であっても、常に十字架が設けられるようになります。

――天才建築家と称されるガウディですが、本作を通して子どもたちに伝えたい彼の「素顔」や「人間らしさ」はどのようなところでしょうか。

【鳥居さん】ガウディも人。人は動物の中でもっとも未熟に生まれる生き物です。ですから、誰もがゼロからの出発です。特に少年ガウディは病弱で、歩くことすら困難なときもありました。恥ずかしがり屋で人前に立つことができず、文章を書くことは大嫌い。こんな子どもが晩年には天才とか聖人とかと呼ばれるのです。誰も未来を予想できないのです。しかし、一歩一歩を誠実に生きることで未来は作られることをガウディが教えてくれます。これがガウディの最も人間らしいところでしょう。

――「サグラダ・ファミリアの絶対に見逃せないポイント」やディープな見どころを教えてください。


【鳥居さん】サグラダ・ファミリアは文字通りガウディそのものです。ガウディが成長したように、この聖堂も成長しています。最初は学習し、次に応用しながらガウディ独自の手法をひとつずつ生み出し、それら生み出した手法を組合わせながらさらに発展させることで独自の世界、つまりユニークな建築に実を結ばせているのです。ですので、ガウディが作った順に見るようにすれば、ガウディも普通の人間であること、日々努力し変遷していること、そして、徐々に新しい発見をしていることなどが見えてくるはずです。

――没後100年を迎え、日本でもガウディへの注目がますます高まっていますが、本作をきっかけにガウディの建築や芸術の世界に触れる際、どのような視点で楽しむのがおすすめでしょうか。

【鳥居さん】とにかくガウディ建築は独創的です。ユニークです。それを天才だからとかたづけてしまっては余りにももったいない。感動するだけでも価値があります。しかし、元来人は学ぶこと、成長することが運命づけられている生き物です。独創的で、ユニークであるということは、ほかでは見られない、体験できないということです。つまり、他では学ぶことができない世界であることを意味します。人の最大の楽しみが、自らを成長させることだとするなら、豊かなガウディ世界から何かを貪欲に学ぶこと、この学ぼうとする姿勢というか視点こそ忘れてはならないことでしょう。

――最後に、サグラダ・ファミリアの完成を心待ちにしている読者や、これから本作を手に取る子どもたちへ向けたメッセージをお願いします。


【鳥居さん】サグラダ・ファミリアはガウディの作品です。ガウディの聖堂なのです。ガウディなくして今日まで建設が継続することはなかったことでしょう。ガウディの計画案があり、1/10の石膏模型が存在したからこそ、後世の人々はそれを実現したい、完成させたいと願ったのです。しかし、最後に残されている大正面「栄光のファサード」については、ガウディも最終案に至っておらず、おおまかなヴォリューム模型で検討している段階でこの世を去っています。この模型を唯一のベースとし、1915年の記述や1917年出版の聖堂縦断面図を参考にしながら現在の計画案が作成されています。もちろん現在の建築家たちによるものですが、ガウディなくしては存在しない計画案です。このように後世の人々が、サグラダ・ファミリアの建設をなぜ中断させなかったのか、なぜ完成させたいと願っているのかの一端を、この漫画を通して理解していただけたらと思っています。

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