第53回 昭和初期から続く岐阜・八百津の名物食堂「三勝屋」
東海ウォーカー

1933(昭和8)年の創業から80年以上の歴史を誇り、岐阜県八百津町の名物食堂として知られている「三勝屋(さんかつや)」。名物の「パーコー」をはじめとする豊富なメニューと親子3代で切り盛りするアットホームな雰囲気が、多くの人の心をとらえて離さない。
味で勝つ、値段で勝つ、量で勝つ

古くから林業が盛んで、木曽川を利用した舟運の物流拠点として栄えた八百津町。その中心商店街である本町通りに、昔から地元の人たちに愛されてきた大衆食堂がある。その名も「三勝屋」だ。

「店名の由来は『味で勝つ、値段で勝つ、量で勝つ』。この3つで三勝屋だと創業者の祖父から伝え聞いています」と教えてくれたのは、3代目の店主である林邦彦さん。現在は邦彦さんと息子の篤弘(あつひろ)さんが厨房を担当し、母の香智代(かちよ)さんが接客を受け持つ。忙しい時は引退した邦彦さんの父や、近くに住む兄が手伝いに入ることも。まさに絵に描いたような家族経営である。

同店オリジナルの人気メニュー「パーコー」

うれしいことに、「三勝屋」はメニューの数が豊富。店内の壁にはメニューの札がズラリと貼られており、その数は約60種類に及ぶ。ちなみに、黒い木の札に書かれているのは昔からの定番メニュー。黄色い紙に書かれているものが、邦彦さんが自分の代になってから考案したメニューである。そんな中でも、一番人気を誇るのが「パーコー」(630円)だ。

「中華料理のパーコーは豚の骨付きあばら肉を使いますが、うちの場合は豚のロース肉。衣がきつね色になるまで揚げてから、生ネギをたっぷりとかけてお出ししています」と邦彦さん。12年ほど前、テレビで紹介されたことがきっかけで人気に火がついたという。ちなみに餃子のタレで食べるのも邦彦さんのアイデア。お好みでラー油や練りニンニクを足してもいい。約200gのロース肉を使っているのでボリュームも満点だ。

そして、もう1つの人気メニューが「中華そば」(480円)である。ツユはカツオのダシをベースにした醤油味で、化学調味料は一切使わない。「醤油は、地元で明治時代から続いている老舗の味噌蔵から取り寄せているんです」と邦彦さん。創業当時と同じ醤油にこだわり続けることで、昔からの変わらない味を守っている。

ちなみに「三勝屋」には、肉の種類によって2つのカツ丼がある。1つはロース肉の「カツ丼(上)」(880円)。そしてもう1つが、脂身の多いバラ肉を使った「カツ丼(並)」(680円)だ。実は、この並の方が隠れた人気メニュー。一口噛むと、口の中に脂身の旨味がジュワッと広がる。どこか昭和の時代を感じさせる、決して上品ではないけれどクセになるおいしさだ。
いつまでも変わらないことが目標

「三勝屋」を語る際にどうしても外せないのが、接客を担当する香智代さんの存在だ。常連のあいだでの愛称は「おばちゃん」。気さくでおしゃべり好きな性格が多くの人に愛されており、香智代さん目当てに通ってくる客も少なくないという。

本町通りを中心とする界隈には、「三勝屋」以外にも老舗が多数存在するという。「醤油を買っている味噌蔵以外にも、上質な肉を届けてくれる精肉店や地酒の蔵元などが集まっているんです」と邦彦さん。「うちが経営を続けていられるのも、周りにいい店が集まっているおかげ」と感謝の言葉を口にする。

「仲のいい常連さんからは『今のままで変わらないで』とお願いされることが多いんです」と笑顔で話すのは、いずれ店を受け継ぐことになる4代目の篤弘さん。「これからも、できるだけ変えないことに全力を注いでいきたいです」と今後の目標を語ってくれた。味も雰囲気も、創業した当時の懐かしい面影を色濃く残している「三勝屋」。「変わってほしくない」という常連さんの意見には、まったく同感である。
エディマート
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