今昔の美しいアイヌ民具が見られる「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」

2018年6月1日 15:00更新

北海道ウォーカー 市村雅代

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木彫や織物などアイヌ工芸の作家が活躍する平取町二風谷エリア。「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」では、この地域出身でアイヌ民具の収集とアイヌ語の録音に人生の多くを費やした萱野茂氏のコレクションをベースに、現代作家の作品も展示しています。敷地内にはアイヌの伝統的な家屋やアイヌの生活に欠かせない樹木も植えられ、総合的にアイヌの暮らしを知ることができます。

にぶたに湖にほど近い場所に建つ一風変わった造りの建物。大きな木の根元を模したものでその洞に当たる部分が「平取町立二風谷アイヌ文化博物館」です。

木の根元に宝物(アイヌの民具)がある、というイメージだそう

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展示室は、日常の生活で使われていたものが展示されている「アイヌ」ゾーンと祈りや信仰、伝説、物語などの精神文化に触れるための「カムイ」ゾーン、農業や狩猟、運搬、葬送に関する資料を展示した「モシリ」ゾーン、アイヌの技巧と造形美を紹介した「モレウ」ゾーンにゆるやかに分かれています。

入ってすぐは「アイヌ」ゾーン。最初に目に入るのは、戦前に作られたイタ(お盆)です。ラムラムノカ(ウロコの形)とモレウノカ(うずまきの形)は二風谷でよく彫られるデザインですが…ウロコ文様がとにかく細かい! 

現代の職人の教科書的存在でもある

二風谷イタと二風谷アットウシ(樹皮を使用した織物)は2013年に北海道で初めて伝統的工芸品に指定。イタは幕末から和人の間で人気が高まり、贈与や交換のために需要が高まりました。

アットウシは、糸を伸ばして織る作業をしますが、織機自体はとてもコンパクト(写真の中央の部分)。

樹皮から手の込んだ作業を経て糸を作るアットウシ

樹皮をはいで、煮て、洗って、層になっている内皮を薄くはがして、それを指で細く割いて、撚る…と、実際に織る作業に入る前に、気の遠くなるような糸づくりの作業があります。

そのアットウシや木綿で作られた着物には見事なアイヌ文様が施されています。

白い布の作る文様が特徴の着物、カパラミプ

かつて、アイヌの人は毛皮で寒さをしのいでいました。クマやシカ、イヌ、海獣などの皮を利用することが多かったようです。毛皮を直接肌の上に着て、その上にアットウシや木綿で作られた着物を着用していたという記録もあります。

シカの毛皮とかんじきなど冬の装備

「カムイ」ゾーンには儀式の際に人間がカムイ(神)に祈りを届けるために使用する、イクパスイがずらり。美しい! 

カムイと人間の「会話」をつなぐ携帯電話のような存在だったイクパスイ

イクパスイは儀式の際、また個人的にカムイに祈りを捧げる際にも使用します。お酒に浸し、イナウという神具や火にふりかけて祈りを捧げました。どれひとつとして同じ模様ななく、裏面には家紋であるシロシが刻まれているものもあります。

展示物には近年まで使用されていたものもあります。「モシリ」ゾーンにある3艘の丸木舟のうち中央のものは、約20年前まで二風谷での儀式で実際に使われていました。

ひと際存在感のある丸木舟

このコーナーでは、アイヌの人々が食べ物を得るために一年を通じてどのような作業をしていたのかを知ることもできます。春から夏にかけては主に漁や採集、秋から冬は狩りと干物などの保存食づくり、と気候に合わせて行動し、食べ物に困らないよう工夫していました。

デザイン面をフィーチャーしている「モレウ」ゾーンには、和人文化の影響を感じさせるような興味深い展示もあります。マキリ(短刀)は実用品であり個性を演出する装飾品でもありましたが、中には和人の家紋のようなものが彫られたものも。

実用品ではあるが、その美しさにも注目

町内外で発見されたアイヌ民具が博物館に持ち込まれることもあります。2017年、町民宅を取り壊した時に出てきたイカヨプ(矢筒)もそうしたもののひとつです。

町内の古い住宅には昔の民具がそのまま残されていることも

展示室の入口には現在町内で活躍する木彫家の作品が展示されています。もちろん展示室に入る前にも目に留まりますが、すべての展示を見た後だと改めて先人の技術を受け継いだ結果の作品群であることを感じます。

引き継がれてきた二風谷イタの技術

この博物館に来たら、アイヌの伝統的なチセ(家)が点在する屋外へもぜひ。

チセの周囲に生える木も「展示物」のひとつ

チセのまわりに生える約100種の木々は観賞のためだけのものではありません。木の下にある説明書きをぜひ読んでみてください。例えば、北海道でよく見かけるトドマツのアイヌ名は「フプ」。説明によるとアイヌの暮らしでは接着剤として利用されていたとか。確かにヤニがべたべたしますよね。ほか猟のための仮小屋の材料としてや魔よけにも使われていたとか。こうした「使える」木に囲まれたチセを見ているとアイヌの人の暮らしと自然の密接な関係を実感できます。屋内の美しい民具と屋外の樹木=生きた標本の見学はぜひセットでどうぞ。

※文中のラムラムノカの「ム」、アットウシの「ウシ」、カパラミプの「ラ」「プ」、イカヨプの「プ」、フプの「プ」はアイヌ語表記では小文字となります。

■住所:平取町二風谷55 ■電話:01457・2・2892 ■時間:9:00~16:30 ■料金:高校生以上400円 小・中学生150円 ■休み:4/16~11/15はなし。11/16~12/15、1/16~4/15は月曜、12/16~1/15は休館 

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